独占取材！亀梨和也、シッチェス映画祭への帰還を求められ笑顔…海外マスコミ陣に展望を明かす

2019年の第17回「このミステリーがすごい！」大賞受賞作を実写映画化した『怪物の木こり』(12月1日公開)がスペインで開催された第56回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭(10月5日〜15日開催)に出品され、10月13日(現地時間)に行われた記者会見に三池崇史監督と主演の亀梨和也が出席。亀梨が「シッチェスの皆さんが好きなものを存分に詰め込んだ作品で戻って来られたら、光栄です」と語り、マスコミ陣が集まった会場を盛り上げた。

亀梨が、目的のためには殺人すらいとわない冷血非情なサイコパスを演じた本作。怪物の仮面を被り、人間の脳を奪い去る連続猟奇殺人事件が発生し、次のターゲットとして狙われた弁護士の二宮彰(亀梨)が、怪物との対決に挑みながら驚愕の真相に辿り着く様を描く。同映画祭で本作は、世界中から選りすぐりのスリラー、サスペンス、アクションなどの作品がセレクトされるオービタ部門と、アジアの新作のショーケースであるフォーカス・アジアの2部門で出品。オービタ部門ではクロージング作品として上映された。

『十三人の刺客』(10)では観客賞を受賞し、毎年のように作品が上映されるなど同映画祭とは縁の深い三池監督。MCは「三池監督はシッチェスに何度も来られているので、アットホームな雰囲気です」と会場を見渡し、さらに「亀梨さんは、シッチェス映画祭に初めて来られました。今回が最後ではないことを望んでいます」と期待されるなど、会見は冒頭から歓迎ムードいっぱい。亀梨は「Bon dia(こんにちは)」と笑顔で切りだし、「Mucho gusto. Me llamo Kazuya Kamenashi(はじめまして。私は亀梨和也です)」と自己紹介。記者を沸かせた。

本作で、三池監督作品初出演にして主演を務めた亀梨。記者から「初めての三池監督とのお仕事はいかがでしたか？」と質問が飛ぶと、亀梨は「最初にお話をいただいた時は、メディアなどで監督のお写真を見ていたので、震えていました」と苦笑い。

「厳しい方なのかな？という印象を持っていました。血がたくさん出てくる作品でもあるので、壮絶な現場になるのかなと思いきや、とても穏やかで。笑顔がすてきな監督。作風とはまったく違って、非常に楽しく過ごさせていただきました」と充実の時間を過ごしたと話す。完成作について「人間ドラマもしっかりと描かれていて、大好きな映画の1本になった」と愛情をあふれさせながら、「次回またご一緒させていただける機会があるのであれば、もっと激しい、シッチェスの皆さんが好きなものを存分に詰め込んだ作品で戻って来られたら光栄です」と切望。「そのためにもしっかりと準備をしたいと思います。『ハアー！』って」と両手を顔近くに添えながら、怪物やゾンビを思わせるポーズを披露。これには会場も大笑いだった。

三池監督は「サイコパスという、映画のなかでもたびたび描かれてきたキャラクターが主人公。しかし本作では、彼がいままで描かれてこなかったような変化を見せる。人間の物語であるという点に興味を持ち、そこをできるだけ表現したかった」と本作に惹かれた理由をいままでにないサイコパスを描く点だと話したが、記者からは亀梨に向けて「サイコパスの役作り」についても質問が上がった。「いろいろなアプローチの仕方があるなと思った」と振り返った亀梨は、「自分のイメージでは“ザ・サイコパス”といった感じで、見てすぐにわかるようなものをイメージしていたのですが、撮影前にいろいろと監督とお話をさせていただき、とにかく引き算(が大事)。あまりなにかを“やらない”ということでキャラクターを作っていこうとお話しさせていただきました。派手にサイコパスということを意識しないアプローチをしました」と回答。とはいえ二宮が変化をしていくキャラクターであることから、「目の使い方、首の動かし方、目線の送り方には、僕なりに細かくこだわって演じました」と繊細な役作りに挑んだと明かした。

撮影中に心が躍ったような出来事について回想することになると、三池監督は「映画冒頭にカースタントがあって、車が横転するシーンがあるんですが、予定よりも車が多くまわってしまって。日本のスタントマンはベテランの人が多いので心配しましたが、全然大丈夫でした」と頼もしいスタントマンに感謝しきり。亀梨は「怪物とアクションなどで絡む機会が多かったんですが、『カット！』とかかった瞬間に怪物のお茶目な姿を見られました。なので、映画のなかの怪物を観ても『あんなことがあったな』『こんなことがあったな』というエピソードを思い出したりもします。すごく謙虚な怪物でした」と楽しそうな笑顔で怪物との裏話も披露していた。

ひとつひとつの質問にサービス精神を交えながら誠実に応える三池監督と亀梨の姿に、記者からは最後まで次々と手が上がっていたこの日の会見。「日本映画はいまどのような時期にあると感じていますか？」という日本映画界全体への印象を尋ねられた三池監督は「資金の集め方、配信が始まったことなど、映画界の流れが変わってきている。それと共に次の時代を走っていくであろう若い人たちが出てきている」と吐露。さらに「バイオレンス色を抑えていく傾向にありますか？」との問いかけには、「バジェットが多くなってくると、なるべく多くの人たちに観てもらわなければいけないということで、必然的に脚本の段階からバイオレンス度が弱まることがあります」と率直に打ち明けつつ、「もうそれも飽きたなと(笑)。自分も60歳を過ぎて、いつまでも撮っていられるわけではない。そろそろ原点に返って本領を発揮するかと、いまは考えています」と意欲満面。三池監督の熱い意気込みや、亀梨の同映画祭への帰還宣言など未来への希望あふれるコメントに満ちた会見となり、その場の温度もグッとあがるようなひと時となった。

シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭は、スペイン・バルセロナ近郊の海辺のリゾート地シッチェスで毎年10月に開催される国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の国際映画祭。ベルギーのブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭、ポルトガルのポルト国際映画祭と並ぶ世界三大ファンタスティック映画祭の一つで、例年300本近い作品が上映される。

取材・文/成田おり枝