『つんドル』穐山茉由監督×ケイト・スペードジャパン柳澤社長と対談!「安希子とササポンは、これまでにはない新しい関係性」
「映画業界の労働環境が少しでもよくなるきっかけづくりにも貢献したい」(穐山)
――『つんドル』は、実話を基にした大木亜希子さんの原作小説を基に映画化されていますが、安希子の言動のなかには、監督の実感が投影されている部分もあったりするんですか?
穐山「そうですね(笑)。ものすごく細かいところにはなってくるのですが、例えば飲みすぎて帰ってきた安希子が、リビングでそのまま寝落ちして、翌朝目覚めた時のあの気持ち悪さとか…。『この服を着て寝てたら、途中で絶対脱ぎたくなるよな』みたいな感じで。本当にちょっとした部分こそこだわって、なるべくリアルに見えるように演出しました」
――ちなみに、お2人は普段どうやって気分転換をすることが多いですか?
柳澤「好きな人と会って、美味しいものを食べて、ピラティスに行って、ひたすら筋肉のことだけ考えるとか(笑)。よく食べ、よく身体を動かし、よく寝るという基本的なこと。あとは、失敗しても『私は、大丈夫!』って思うことも、すごく大事だと思います」
穐山「私の場合は、もしかすると映画監督という仕事柄もあるのかもしれないですけど、イマジネーションにつながるものを発見した時が、やっぱり一番気分が上がるんですよ」
柳澤「たしかに。妄想って効くよね。推しのアイドルの動画を延々観るとか(笑)」
穐山「妄想はすごいいいですね。映画を観たり、本を読んだりすることもちろんそうなんですが、インスピレーション源になるものを探しに街に出かける時間が、一番前向きになれるし、いろいろ忘れられる気がします。とはいえ、最終的にはそれが仕事につながったら一石二鳥なのかなとも思いますが、たとえつながらなかったとしても癒しにはなるかなと」
――今後、穐山監督にさらに期待されることは?
柳澤「私たちの会社のロールモデルの一人でもある穐山さんに、是非とも日本を代表する映画監督になってほしいです。日本のソフィア・コッポラじゃないですが、『この世代の女の子を撮らせるなら穐山さんしかいない!』という存在になるのを期待しています」
穐山「会社員として社会や組織と接するなかで学んだことを映画の制作現場に持ち帰ると、映画業界の問題点がいろいろ見えてきたりもするんです。時間はかかるかもしれませんが、映画業界の労働環境が少しでもよくなるきっかけづくりにも貢献していけたらと」
柳澤「海外では、労働環境改善のためのストとかもやってるしね」
穐山「そうですね。海外はユニオンもしっかりしているし、労働環境の改善も日本よりは進んでいる。せっかくこの業界に魅力を感じて新たに入ってきてくれるスタッフがいても、『この労働環境では、やりたくても続けられない』と言って辞めてしまう人が多くて、毎回スタッフを探すのが本当に大変なんです。いい作品を作るためには、いい労働環境づくりが絶対必要だと思っているので、出来ることから改善していきたいですね」
取材・文/渡邊玲子