松岡茉優、自分は「クソまじめ」と分析!窪田正孝とW主演作『愛にイナズマ』で「映画は最高の相棒になる」と実感
松岡茉優と窪田正孝がダブル主演を務める石井裕也監督最新作『愛にイナズマ』の公開記念イベントが10月28日に新宿ピカデリーで開催され、松岡と窪田をはじめ、池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市、石井監督が登壇した。
社会の理不尽さに打ちのめされた恋人同士の花子(松岡)と正夫(窪⽥)が、10年ぶりに再会したどうしようもない家族の力を借りて反撃の狼煙を上げる姿を描く本作。上映後の会場から、大きな拍手を浴びて登場したメンバー。石井監督は「コロナ禍を経験しましたので、映画館にお客さんが来てくれるということが当たり前ではないということを痛感しました。こうやってたくさんの方が来てくれて、本当にうれしく思っています」と喜びを噛み締めていた。
石井監督が「特別なエネルギーが生まれた」と撮影を振り返ると、松岡は「私はまじめというよりは、クソまじめなタイプで、つまらないところもあるんです。だけど初めて試写を観た時に、なんか楽しかったなと。20年やっていて、初めて思った作品でもあって。撮影中はずっと楽しかった」とにっこり。とりわけ「やったな、私!」と思ったシーンがあると続け、「私が水を吹くシーンがあって。それは台本にはなくて、監督が吹いてほしいとおっしゃった。それも霧吹きではなくて、マーライオンで行ってほしいと言っていただいた」と練習して臨んだ場面で手応えを感じたと話す。
松岡が「どうでしたか、私の水吹きは」と話を向けると、石井監督は「すごかったですね。一発で決めました」と称え、窪田も「めちゃきれいだった。美しかった。いいアーチを描いていた」と絶賛。松岡は「美しい、水吹きデビューができたなと思っています」と満足そうな笑顔を見せていた。
またこの日は、演じたキャラクターである花子が着ていた服を身につけてきたという松岡。花子は映画監督デビューを控えながらも、失意のどん底に突き落とされてしまう女性だが、「花ちゃんがずっとプロデューサーたちと闘っている時に戦闘服のようして着ていた、彼女にとってもお気に入りの服」と紹介しながら、「私は上映後の舞台挨拶が、他の仕事のなかでも一番好きで。撮った映画を観てもらって、(観客の)皆さんのこのお顔を見られるって、一番うれしいこと。それを花ちゃんに見てほしくて、今日は連れきました」と役柄と一緒に登壇している気持ちだと語っていた。
SNS上でもすでに熱い感想が上がっている本作だが、窪田も「この仕事をしているとどうしても一方通行というか、レスポンスを受け取る機会が意外とない。こうやって皆さんにお会いできる機会も、舞台挨拶くらいしかないなと思う。この同じ空間を共有できることがうれしい」としみじみ。「レスポンスがあるのは純粋にうれしいです。いいものでも悪いものでも。スルーが一番さみしい」と観客の反応が力になるという。
本作の見どころについて、「この俳優の方々としか言いようがない」と役者陣に敬意を表した石井監督は、彼らが本作で受けたインタビューの記事をすべて読んだという。役者陣も「ええ…!」と驚くなか、石井監督は「それぞれの人たちが、人間として、俳優として作品に愛情を持って向かっているということが、すごくわかった。もともとわかっていたつもりなんですが、さらにそれを深く理解して泣きそうになった。そういう方々と一緒に映画を作れたことが本当に幸せ。スタッフも一流の方々ばかり。そういう人たちが想いを込めたうえで、遊び切って、楽しみ切った作品。その辺の躍動感は、そんじょそこらの作品では見られらないものになっているんじゃないかなと思う」と胸を張っていた。
最後の挨拶で窪田は、「人に対する愛情や、好きになれたり、幸せになれたりする瞬間は、人それぞれ違うと思うけれど、映画を観て一瞬でもいいなと思えることを共有できるのがすごく幸せ」と吐露。松岡も「魂で会話をできる人って、そんな人生でたくさん出会えるものでもない。ちょっと寂しくなったりもするけれど、この作品を観てくださった方のコメントを読んでいて『映画があるじゃないか』と思った。自分に合う人がいなくても、映画が一番自分にバッチリ合っていれば、それが最高の相棒になって、人生のパートナーになるんだなと思った」と映画への愛情をあふれさせていた。
取材・文/成田おり枝