“肩書き”必須の婚活女子に『ダンプねえちゃん』が大警告!?

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“肩書き”必須の婚活女子に『ダンプねえちゃん』が大警告!?

この秋に“クヒオ大佐”結婚詐欺事件が映画化されたが、「アメリカ空軍のパイロットでカメハメハ大王の末裔」などとジョーダンみたいな肩書きを名乗ったと聞くと、やはり女子は肩書きに弱い? そんな女子の本能にインディーズ映画界の気鋭作家・藤原章監督が警鐘を鳴らすのが、現在公開中の『ダンプねえちゃんとホルモン大王』だ。

舞台はしけた港町。“ダンプねえちゃん”(豪快な名前)が住むその港町に、「世界ケンカ大会チャンピオン」という肩書きの“ホルモン大王”(こちらも豪快な名前)がやって来た。他人の目なんかどこ吹く風の豪快なダンプねえちゃんでも、ワイルドな肩書きにコロッと参ってしまうから、肩書き効果はオソロシイ。

ダンプねえちゃんは、ホルモン大王が語る「来日したスティングのSP(警護官)から格闘技の世界へ転身」なんていう噴飯ものの経歴や、「健康に良いから」と大王が差し出す(麻薬を連想させる)怪しいキャンディーすら疑いもしないダンプねえちゃん。そして、大王との将来を真剣に考え始めるというから、まさに恋は盲目状態。肩書き効果は恐ろしいったらありゃしない。

そもそも肩書きに魅了されるのは、相手のステイタスに自分の夢を託す心理。それが行き過ぎると、相手の行動を良い方にしか解釈しない脳内情報操作や、“他人の忠告は無視”といった暴走スパイラルを生む。そんな恋する女の危うさを、藤原監督は独特の人間観察でユーモラスに見せる。誰もが陥りがちな愚かな行動を、批判ではなく寄り添う視点で描いていくのが本作の魅力だ。

そして、この映画最大の見どころは、信じた男に裏切られ“復讐”という行動に出ようとするダンプねえちゃんが、周囲の力を借りて夢と現実のギャップをどう埋めていくか。過酷な特訓に挑むダンプねえちゃんの姿は、2度目の幼児期を経て大人になるかのよう。観客は愛情を持ってその成長を応援したくなるのだ。

藤原監督は「“あいつ大丈夫かなぁ”と周りの人々から気にかけてもらえるのは幸せなこと。観客のみなさんには最後に幸福感を感じてもらいたかった」と語る。その言葉どおり、大阪で開催されたインディーズ映画祭「シネドライブ2009」では、181作品の中からグランプリ受賞、たくさんの観客の共感を得た。藤原監督流、“肩書きから見た夢”の落とし前のつけ方を、劇場で確かめよう!【取材・文/デューイ松田】

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