深夜の廃墟レストランでマスコットが動きだす!『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』がブラムハウス作品のオープニング記録を更新
ハロウィン直前の週末となった先週末(10月27日から29日)の北米興収ランキングは、ブラムハウスの新作ホラー『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(2024年2月9日日本公開)が制する結果に。2014年にリリースされた同名ビデオゲームシリーズを実写化した本作は、深夜にマスコットたちが動きだす廃墟化したピザレストランを舞台に、夜間警備員が味わう恐怖の夜が描かれる物語だ。
3675館で封切られ、初日から3日間の興収は8000万1720ドル。これまでのブラムハウス作品のオープニング興収の最高成績は『ハロウィン』(18)の7622万ドルだったので、それを上回る新記録を樹立したことになる。また、ホラー映画のオープニング週末成績としては「IT/イット」シリーズ2作に次ぐ歴代第3位であり、ハロウィン週末公開作品のオープニング記録も更新。これならばブラムハウス史上最大のヒット作(現在は『ゲット・アウト』の1億7600万ドル)となる可能性も十分。
原作ゲームの映画化権は、元々2015年にワーナー・ブラザースが獲得したものの、制作体制の見直しなどによって2017年にブラムハウスに渡った経緯がある。その後は「ホーム・アローン」シリーズなどで知られるクリス・コロンバスが監督に就任し2020年の公開が目指されたが、ゲーム原作者のスコット・カーソンが納得するストーリーが生まれず、結局コロンバスもプロジェクトから離脱することになった。紆余曲折あった作品の評価は伸び悩む傾向にあるが、8年越しに実現に至った同作はどうだろうか。
批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの評判は芳しくなく、現在北米で安定した興行をつづけている『エクソシスト 信じる者』(12月1日日本公開)に続いてブラムハウス作品らしからぬ低評価になっている。それでも観客からの好意的評価の割合は88%と高めであり、なによりもこれだけ立派な興行成績となれば御の字。すでに続編化も噂されており、ブラムハウスの新たな稼ぎ頭となることが期待できよう。
さてここからは、限定公開ながら大健闘を見せた2作品をピックアップ。まずは16位にランクインしたアレクサンダー・ペイン監督の6年ぶりの新作『The Holdovers』。1970年代の全寮制学校のクリスマス休暇を描いたコメディ作品である同作は、6館での公開で1館あたりのアベレージ興収は3万5258ドル。『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13)とほぼ同水準の興行パフォーマンスを見せ、ペイン監督作品では最高レベルの高評価を獲得。賞レースでの活躍にますます期待が高まる。
そして4館での公開ながら1館あたりのアベレージ興収3万3034ドルで18位に初登場したのは、ソフィア・コッポラ監督の新作『Priscilla』。エルヴィス・プレスリーの妻プリシラ・プレスリーの自叙伝を映画化した同作は、「エイリアン」シリーズの最新作で主演を務めるケイリー・スピーニーがプリシラ役に、「キスから始まるものがたり」シリーズのジェイコブ・エルロディがエルヴィス役を演じる。
昨年バズ・ラーマン監督の『エルヴィス』(22)があったばかりなので比較は避けられないところだが、評価は上々。ソフィアの作品は『マリー・アントワネット』(06)を最後にかれこれ17年もアカデミー賞に絡んでおらず(主要部門では『ロスト・イン・トランスレーション』以降20年ない)、今度こそ期待してもいいのではないだろうか。
文/久保田 和馬