杉咲花、主演映画『市子』撮影時に恋人役・若葉竜也の役者魂に感心!「さすがと思ったけれど…」
映画『市子』(12月8日公開)の完成披露舞台挨拶が11月6日、テアトル新宿にて行われ、主演の杉咲花、共演の若葉竜也、森永悠希、中村ゆり、戸田彬弘監督が登壇した。
監督を務める戸田が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品を原作に映画化した本作では、過酷な宿命を背負った女性、川辺市子の壮絶な人生が描かれる。第28回釜山国際映画祭コンペティション ジソク部門、第36回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門に正式出品された本作で、杉咲が主人公の市子を演じ、彼女と3年間一緒に暮らしていた恋人の長谷川義則を若葉が演じ、森永は市子の高校時代の同級生に、中村は市子の母に扮している。
市子役で「味わったことない経験をさせてもらったなと思います」と話した杉咲は、「演じ手として、こう表現しなければという欲がはがれ落ち、起きていることに反応し、心がぐわんぐわん揺さぶられるというのは初めての体験でした」と撮影を振り返り、引力のある作品になったと胸を張った。
市子は、恋人からプロポーズを受けた翌日に突然失踪。恋人の長谷川は市子の謎を追っていく。若葉は「杉咲さんには(朝ドラの)『おちょやん』でもプロポーズしたのですが、いっつもうまくいかないと思いました」と首を傾げながら苦笑い。自身の役については「観客と同じ目線で市子を追い、垣間見ていく。鮮度がなくなった芝居ではダメだと思いました。そうすることで対岸の火事になるという危機感があったので、全神経を使ってその場所に佇みました」と演じる際に意識していたことに触れた。
原作となった舞台を観たという中村は「映画になると聞いて、絶対いい映画にしたい!」と思ったそうで「なんだったらキャスティングもしたいくらい思い入れが強い作品でした。素晴らしいキャストの方が集まって、いい映画になったという幸福感があります」と充実感を漂わせていた。
出来上がった作品を観て杉咲は「市子に関わった人たちが市子を語るシーンには(撮影で)立ち会っていないので、こんな風に人々のなかに市子が影を残している。それぞれの市子がいることにハッとしました」と気づきを語る。若葉は「切なすぎて笑ってしまうシーンもあるくらい感情が掻き乱されます」とし、同じシーンでも泣いている人もいれば、おかしさすら感じてしまう人もいるかもと指摘。「表裏一体というか、こんなに悲しくておもしろいことがあるのかと思いました」と感想を伝えた。
森永は「もっと違う選択が、もっといい方法があったんじゃないかな、という歯痒い思いをして観ました」と話し、中村は役者を始めた頃に出会ったプロデューサーの言葉を挙げ「日の当たらない人に光を当てた映画を作りたい、とおっしゃっていて。少しでもそういう映画に携わっていけたらという思いがありましたが、そういう映画に携われたと思えてうれしかったです」と、本作との出会いを喜んだ。
撮影時の思い出を聞かれた戸田監督が「撮影が休みの日にカフェに行っていた若葉さんと宇野(祥平)さんに呼び出されました」と微笑むと若葉は「なにもやることがなかったので、宇野さんと2人でカフェに行って6時間くらい話をして(笑)。話すことがなくなったので、脚本を取り出してお互いの思っている矛盾点を話し、提案をしていって。だったら監督に話そうってことで、思いを伝えました」とニヤニヤ。合流した戸田監督と脚本を変える話をし、ロケ地が近いから行ってみようとロケハンをし、変更した内容をスタッフに伝え、軽トラを用意するという出来事もあったという。そんなやりとりを「一緒に考えてくれている感じがしてすごくうれしかったです」と戸田監督が若葉に感謝を伝える場面もあった。
撮影が行われたのは昨年の8月。戸田監督によると「地獄のような暑さ」だったそう。「本当に暑くて。スタイリストさんを通して若葉さんが『実際にかく汗を大事にしたい、そういうものが映像で匂い立ってくるものだから』とおっしゃっていると聞いて、さすがだなと思っていたんです。自分も見習いたいなって。でも、ある日パッと観たら、思いっきり氷のうをあてていて(笑)。めっちゃ涼んでるじゃん!って思いました」と暴露。若葉はすかさず「体調を崩しそうなくらいの暑さで…天秤にかけた結果、健康に撮影することを選びました」と言い訳をしながらも、「(劇中の)汗は本物です!」と念押しし、笑いを誘っていた。
森永は「会うたびに言っていることだけど」と前置きし、改めて杉咲の関西弁を大絶賛。「役で使う関西弁は(役者なら)うまくなるものだけど、日常生活の言葉があそこまで関西弁になる人はいない。会うたびにそればっかり言ってました」と褒めても褒めたりないといった様子。杉咲は「朝ドラで1年くらいかけて方言指導の方に教えてもらったおかげです。ネイティブの方にそう言っていただけると本当にうれしいです!」と満面の笑みを浮かべた。
取材・文/タナカシノブ