アメリカ俳優組合の史上最長ストライキがついに終結へ…「組合にとって大きな勝利」

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アメリカ俳優組合の史上最長ストライキがついに終結へ…「組合にとって大きな勝利」

アメリカ俳優組合(SAG-AFTRA)の交渉担当者は現地時間8日、映画テレビ製作者協会(AMPTP)との暫定合意を承認。これにより現地時間7月14日にスタートしたハリウッド史上最長の俳優による映画・テレビ会社へのストライキは、現地時間9日の0時1分(日本時間9日17時1分)をもって終結を迎えることとなり、近日中にもハリウッドが生まれ変わる見通しだ。

合意内容の詳細は近日中に発表される見通し
合意内容の詳細は近日中に発表される見通し写真:SPLASH/アフロ

AI技術の利用における肖像権の保護とガイドラインの制定、ならびにストリーミング作品での二次使用料等の待遇改善などを主な争点として行われていた今回のストライキ。SAG-AFTRAの公式Xの投稿によれば、AIからの保護についての新たな協定や、ストリーミング作品での報酬の増額、最低賃金の大幅な引き上げなどが盛り込まれ、10億ドル以上の価値を有する合意内容となったという。

さらに「Variety」の報道によれば、SAG-AFTRAの交渉委員会のケビン・E・ウエストは同委員会内での承認は全会一致で可決されたと明かしており「完璧ではない」としながらも「並外れた成果である」とコメント。また同委員会のベン・ホワイトハイルも「組合にとって大きな勝利。私たちは歴史をつくりました」と語っている。今後、現地時間10日(金)に行われるSAG-AFTRAの全国理事会で可決となれば正式な幕引きとなり、合意内容の詳細は追って発表される予定。

【写真を見る】ストライキで来日を取りやめたマーゴット・ロビーなど、大物俳優たちもストライキに参加
【写真を見る】ストライキで来日を取りやめたマーゴット・ロビーなど、大物俳優たちもストライキに参加写真:SPLASH/アフロ

ハリウッドでは今年5月、アメリカ脚本家組合(WGA)がSAG-AFTRAの要求とほぼ同内容でストライキに突入。7月にSAG-AFTRAもそれに追随するかたちとなったことで、1960年以来となる俳優・脚本家のダブルストライキという事態に発展。AMPTPに加盟する大手スタジオが製作する映画作品やテレビ番組の撮影は軒並みストップとなり、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星 PART2』(2024年3月20日公開)をはじめ多くの大作の制作が遅延し、公開スケジュールの変更を余儀なくされている。


また、SAG-AFTRAに所属する約16万人の俳優たちはすでに撮影を終えた作品であっても宣伝活動などのあらゆる仕事に従事することを中止したため、賞レースシーズンの幕開けとなったヴェネチア国際映画祭やトロント国際映画祭でもハリウッド俳優たちの登壇は実現せず。日本でも『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(公開中)や『バービー』(23)のジャパンプレミア上映へのキャストの来日が取り止めとなるなど影響は拡大。

「ミッション:インポッシブル」の次作など、大作映画の公開延期が相次いでいる
「ミッション:インポッシブル」の次作など、大作映画の公開延期が相次いでいる[c]2023 PARAMOUNT PICTURES.

そして先月、SAG-AFTRAに先立ってWGAがAMPTPと合意し一足先にストライキが終結。今回のSAG-AFTRAの合意が実現することによってハリウッドは本格的に映画・テレビ番組の製作を再開することができるが、しばらくの間は大作映画の製作・公開に影響が及ぶことは避けられず、ロサンゼルスの地域経済にもたらす損失は少なくとも数十億ドル規模とも考えられている。まずは正式な合意の知らせを待つと共に、今後のハリウッド映画界の動きに注目していきたい。

文/久保田 和馬

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