彼はいかにして“大谷翔平”になったのか?功績と素顔に迫る映画『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』をレビュー

コラム

彼はいかにして“大谷翔平”になったのか?功績と素顔に迫る映画『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』をレビュー

野球界において道なき道を進み、いまや世界のスーパースターとなった“二刀流”のメジャーリーガー、大谷翔平選手。折しも、米大リーグで史上初となった、2度目の満票選出によるMVPを獲得したばかりである。そんな大谷選手に密着したドキュメンタリー映画『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』が、ディズニープラスで独占配信中だ。大谷選手自身と、彼を語るうえで欠かせないスター選手や名監督、代理人などの独占インタビューや記録映像から構成される本作を観ると、大谷選手がなぜ、唯一無二の存在として輝き続けられるのか、そのヒントのようなものが見えてくる。

メガホンをとったのは、ロサンゼルスを拠点とする映像監督、時川徹。英語版のナレーションを、米野球殿堂入りした元レッドソックスのペドロ・マルティネスが、日本語版を、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜が担当する。大谷選手について語る出演者は、この2人をはじめ、パドレスのダルビッシュ有選手、元ヤンキースのCC・サバシア選手、日本ハムと侍ジャパン元監督の栗山英樹、元エンゼルス監督のマイク・ソーシアとジョー・マドン、代理人のネズ・バレロらだ。

前代未聞の二刀流選手として、数々のMLB記録を塗り替え、侍ジャパンのWBC優勝にも貢献した大谷選手。人は彼を「ユニコーン」「ベーブ・ルースの再来」と称賛してきたが、なぜここまでの成績を収めることができたのだろうか?それは持って生まれた天賦の才だけではなく、大谷自身が置かれた環境や人との出会いが大きかったことが、映像を観てわかってきた。

※本記事は、本編の核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

「なりたい大人」は「普通の人」と書き記した小学1年生の大谷

いまや全世界のスーパースターとなった二刀流のメジャーリーガー、大谷翔平選手
いまや全世界のスーパースターとなった二刀流のメジャーリーガー、大谷翔平選手[c]Rivertime Entertainment Inc. TM/[c]2023 MLB

まずは、スタート時点から注目していきたい。大谷選手がここまで多くの人に憧れられ、愛されてきたのは、文句なしの成績に加え、謙虚で穏やかな人柄によるところも大きい。どんなにすばらしいタイトルを獲得しても、彼は決して浮き足立つことはなく、いつもフラットに受け止めてきた。熱い情熱をあらわにすることも実にまれであり、まるで極めて高温の青い炎を出すバーナーを内に秘めているようだ。

大谷選手の功績はもちろん、人となりを称えるマルティネスは、「成功を支えたのは、偉大な両親です。大谷選手をここまでの努力家に育てました」と大谷の両親を称える。実際に大谷選手の両親に接してきた栗山監督も、彼らの愛情深さを口にしたうえで「余計なことを言いすぎず、常に彼に判断させる」とその懐の深さについて語っていた。確かに大谷選手が何事においても自分自身がジャッジを下すという決断力は、どうやら幼少期から培われていたものらしい。


ダルビッシュ有選手、侍ジャパン元監督の栗山英樹などスター選手や名監督が出演
ダルビッシュ有選手、侍ジャパン元監督の栗山英樹などスター選手や名監督が出演[c]Rivertime Entertainment Inc. TM/[c]2023 MLB

本作では、大谷選手自身がまだあどけない野球少年だったころについても振り返っている。なかでも小学校1年生の時、「なりたい大人」について「普通の人」と書き残している点が実にユニークだ。その年齢ですでに悟りの境地に達していたのかといえば、そうではないよう。

これについて栗山監督は「小学校1年生の時から謙虚さというか、大げさに言うよりは、行動で示すと。そう教えてきた両親がすごい」と、マルティネスも「彼は間違いなく特別だ」と感心する。しかし、大谷自身は一切、天狗になることもなく「ちょっと大きめの普通の小学生でした」と微笑みながらコメント。まさに大谷の人柄を物語るワンシーンだった。

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