ヴィム・ヴェンダース監督が語る、役所広司との出会い。『PERFECT DAYS』ロングインタビュー映像を独占入手!
ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描きだす『PERFECT DAYS』(12月22日公開)。このたび本作から、制作直後に実施されたヴェンダース監督の貴重なロングインタビュー映像の一部をお届け。
静かに淡々とした日々を生きるトイレ清掃員の平山(役所広司)に起こる思いがけない出来事と、そこから生じる小さな揺らぎを丁寧に描いた本作。第76回カンヌ国際映画祭では役所が日本人俳優として19年ぶりに最優秀男優賞を受賞。また世界各地の国際映画祭で次々と上映され賞賛を浴び、第95回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表にも選出されている。
ロングインタビューは、ベルリンにあるヴェンダース監督のオフィス「ROAD MOVIES」で収録されたもの。本作はどのように生まれたのか、シナリオ作りの時にどのようなイメージをしていたかなど、一緒に制作していたスタッフチームにも役所をはじめとしたキャスト陣にも伝えなかった思いを、ヴェンダース監督は当初の予定時間を大幅に超えて1時間半近くにわたって語り、それを共同脚本の高崎卓馬がテーマごとにまとめて6本の映像に分割したという。
今回入手した映像は、そのうちの一つ「平山という男は、どこから来たのか」というテーマでまとめられたもの。「初めて役所広司を知ったのは『Shall we ダンス?』でした」と、役所との出会いから語り始めるヴェンダース監督。「彼はゆっくりと姿を現しました。THE TOKYO TOILETのすばらしい場所を観て回ったあとに。タクマさん(高崎)と一緒に、とある男の物語を語ることを思いついたんです。このトイレを清潔に保つ仕事をしていて、この場所に身を捧げている男の物語を」と、役所が演じる平山の成り立ちに言及していく。
高崎から言われた「彼はどこか僧侶のようだ」という言葉に端を発し、ヴェンダース監督のお気に入りの僧侶だというレナード・コーエンの存在を頭の片隅に置きながら構築されていったという平山のイメージ。それに加え、ヴェンダース監督は「どう考えても、彼は昔からトイレ掃除をしている男ではなかった。違う暮らしを生きていたと私は思い浮かべました」と明かしながら、頭のなかで紡ぎだした平山のバックボーンを丁寧に語る。
そのうえで「これが私の側の、平山の物語です。それからもちろん、役所広司が平山そのものだったおかげで、もはやほかのことを想像する必要はなくなり、私の側の物語も必要なくなりました。彼が平山で、平山は彼でした。彼は目を通して、仕事、そして光に対しての感謝を語っていました」と、役所の“役になりきる”技量にあたたかな賛辞を送っていた。
この映像を含めた全6本のロング・インタビュー映像は、12月22日の映画公開初日から本作の公式サイトで掲載予定。また公式サイトでは、主人公である平山の「映画にはならなかった日々」の353日を“DAYS OF HIRAYAMA”というオリジナルコンテンツや触れるたびに表情を変える不思議な「スクロール・ブック」も公開される。劇場で静謐な作品世界に触れたら、公式サイトでさらにその奥深くまで味わい尽くしてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬