スタジオジブリ作品の北米興収新記録へ!『君たちはどう生きるか』がNo. 1発進で、一気にオスカーなど賞レースの主役に浮上
前回の当記事でも触れた通り、12月8日に北米公開を迎えた宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』(日本公開中)。先週末(12月8日から10日)の北米興収ランキングは、なんと同作が初登場で1位を獲得。日本映画が北米興収ランキングの首位に立つのは、2022年8月の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』(22)以来。その前年に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)が日本映画21年ぶりの北米No. 1を飾ってから、これで3年連続の快挙達成となる。
2205館で公開された『君たちはどう生きるか』の週末3日間の興収は1301万ドル。これまでの北米におけるスタジオジブリ作品の最高成績は『借りぐらしのアリエッティ』(10)のオープニング興収644万ドル、最終興収1920万ドル。宮崎監督作品に限定すると『崖の上のポニョ』(09)のオープニング興収358万ドル、最終興収1509万ドルがベスト。『君たちはどう生きるか』が、それらを抜き去ることはほぼ確定となっている。
現地の批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は96%で、これはアカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した『千と千尋の神隠し』(01)とほぼ同等の評価。それを裏付けるように、先ごろ発表された第81回ゴールデン・グローブ賞ではアニメーション映画賞と作曲賞にノミネートされており、作曲家の久石譲はこれが初めてのノミネート。また重要な前哨戦のひとつであるブロードキャスト映画批評家協会賞でもアニメーション映画賞の候補にあがっている。
第96回アカデミー賞のアニメーション映画賞にはすでに世界各国から33本がエントリーしており、ざっと見る限り『君たちはどう生きるのか』のライバルとなりそうなのは、ディズニー/ピクサーの『マイ・エレメント』(23)やアードマンの『チキンラン:ナゲット大作戦』(12月15日よりNetflixにて配信)、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(23)あたり。ちなみに日本からはほかにも『すずめの戸締り』(22)や『BLUE GIANT』(22)、『かがみの孤城』(22)、『THE FIRST SLAM DUNK』(22)が名を連ねている。
アカデミー賞に強いことでも知られるGKids配給作品としてはかなり大きな規模での公開となっていることからも、その気合いの入り方がこれまでとは違っていることは一目瞭然。こうした華麗なスタートの背景には、やはり長く続いた俳優組合と脚本家組合のストライキの影響が出始めていることや、ディズニーの渾身作『ウィッシュ』(12月15日日本公開)の伸び悩みなどが考えられるが、それでも日本のアニメーション映画史において重要なインパクト。必然的に賞レースの主役候補に名乗りをあげることとなった。
ちなみに3位には北米公開2週目の『ゴジラ-1.0』(日本公開中)がランクインしており、トップ3のうち2作品が日本映画という北米興収ランキングではなかなか見られない偉業も重要なトピックだ。『ゴジラ-1.0』の北米累計興収は12日の火曜日の時点で2764万ドル。まもなく北米での興収だけで、日本を含めた海外興収を上回ることとなり、あらためてハリウッドでの熱狂ぶりが窺える。
また同作は、先述のブロードキャスト映画批評家協会賞で外国語映画賞にノミネートされた。第96回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表はヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』(12月22日日本公開)だが、もし『ゴジラ-1.0』が選出されていたら…とついつい考えてしまう。
そんなアカデミー賞に深く関わりそうな作品として、『女王陛下のお気に入り』(18)のヨルゴス・ランティモス監督がサーチライト・ピクチャーズとタッグを組んだ『哀れなるもの』が9館での限定公開ながら17位にランクイン。こちらの1館あたりのアベレージ興収は7万3470ドル。批評家&観客からの評判もすこぶる高く、ゴールデン・グローブ賞では6部門7ノミネート。すでにはじまっている各地の批評家協会賞でも善戦を繰り広げており、これは確実にアカデミー賞の主要部門に絡んでくることだろう。
文/久保田 和馬