幻想的な映像に彩られた予告編『異人たち』公開日は2024年4月19日に決定
日本を代表する脚本家で作家の山田太一による長編小説「異人たちとの夏」を、『荒野にて』(17)、『さざなみ』(15)などの作品で知られる映画監督で脚本家のアンドリュー・ヘイが再映画化した『異人たち』の予告編が到着。また、本作の公開日が2024年4月19日(金)に決定した。
12月3日に発表された英国インディペンデント映画賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞(ポール・メスカル)、撮影賞、編集賞、音楽監修賞の主要部門を独占する最多7冠に輝くなど、早くも存在感を放っている本作。現地時間12月11日に発表された第81回ゴールデン・グローブ賞においても、主演男優賞(ドラマ部門)にアンドリュー・スコットがノミネートされており、アカデミー賞をはじめ、本年度の賞レースでさらなる注目を集めることになりそうだ。
この映画の主人公は、夜になると人の気配が遠のく、ロンドンのタワーマンションで一人暮らしをする脚本家アダム(スコット)。12歳の頃に死別した両親の思い出を基に脚本を執筆しており、物語と向き合うなかでミステリアスな隣人ハリー(メスカル)と出会う。互いの孤独を感じ取り、しだいに距離が近づいていく2人。さらにある日、アダムが幼少期を過ごした郊外の家を訪ねると、そこには30年前に他界したはずの父と母が当時のままの姿で住んでいた。アダムは少年時代の心の隙間を埋めるかのように、両親の元へ足を運んでは、二度と取り戻せないと思っていた心満たされる一時を過ごしていく。
死別した両親との交流、ミステリアスな隣人との恋の行方を描くこの幻想譚は、愛と孤独、喪失と再生、さらにはセクシュアリティといった根源的なテーマを探求し、観客それぞれの心の奥底にある記憶や郷愁を呼び覚ます。また、琥珀色の光がきらめく35mmフィルムの映像美は、観る者をリアルとファンタジーの狭間へと誘う。このたび解禁された予告編も、幻想的な映像で彩られていて、登場人物たちの佇まいや言葉からは、示唆に富んだ物語を感じさせてくれる。
出演にはスコットとメスカルのほか、『リトル・ダンサー』(00)のジェイミー・ベル、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(22)のクレア・フォイという実力派キャストが顔をそろえている。
1988年には大林宣彦の手によって、風間杜夫、名取裕子、片岡鶴太郎、秋吉久美子の出演で映画化され、大ヒットを記録している「異人たちとの夏」。新たな解釈によって映像化された美しい物語を、映画館で堪能したい。
文/スズキヒロシ