「五等分の花嫁」シリーズ構成が語る、春場ねぎの描くキャラクターの奥行き!最新作「戦隊大失格」の注目ポイントは?
「戦闘員Dに注目しながらアニメを楽しんでいただきたい」
主人公の戦闘員Dは、戦隊側の人間である桜間日々輝との出会いをきっかけに、大戦隊に潜入することになる。その後も戦闘員の能力である“擬態”を使い、人間たちに溶け込もうとしながらも、人間を見下したような視点を崩さない。
「さとう監督としっかりと話し合い、Dが『大戦隊をぶっ潰す』というモチベーションで来ている以上、あまりベタベタしてはいけないということになりました。原作では人間にほだされかけるような描写もありますが、もっとドライに、自分のために人間たちを利用して時には無情に切り捨ててしまうように描いています」と、大知は原作からの大きな変更点に言及する。
「Dと日々輝は対照的な関係。大戦隊を潰したいDに、大戦隊を正そうとする日々輝。まるでダブル主人公のようでもあるし、二人がたまたま出会って利害が一致しただけの関係なので、Dは日々輝のことを全然知らないまま擬態し、訓練生たちのリアクションからその人間性を知っていくのがおもしろいと感じました。日々輝の立ち位置を利用しながら目的を達成するDのクレバーさ、裏を返せば擬態するしか能のないキャラクターが唯一戦える方法でもあります。こういうひねった構成は、春場作品ならではのおもしろさだと思います」。
さらに大知は、“群像劇に近い”本作を脚本化していくうえでキャラクターの関係性に特に気を配ったと説明。「キャラクターが増えてくれば関係性も混乱しやすい。特にストーリーが進むにつれて一気にキャラクターが増えることになります。この人はいまどの立場にいるのか、誰が味方で誰が敵なのか。正確に把握するのはもちろん、観ている人が忘れそうなタイミングでもう一度説明したりもしています」。
そして「特定のキャラに入れ込むことはあまりないのですが…」と前置きをした上で、「翡翠かのんは魅力的なキャラクターだと思います。最初はただ粗暴なだけなのですが、原作を読み進めるといろんな面が伏線として描かれている。あとXXもいいですね。迷いが見えて、複雑で興味深いキャラクターだと思います」と、作り手の立場からキャラクターへの深い愛情もにじませていた。
来たる2024年からTBS系全国28局ネットにて放送開始となるアニメ「戦隊大失格」。これから作品に出会う人に向けて大知は「やはり戦闘員Dが主人公であること。これこそが、物語をおもしろくするいちばんのポイントです。弱くて頭がいいわけでもないけど、自分の持っているたった一つの能力を100%活かして絶対に勝てないような相手に立ち向かっていく。弱いからこそ様々な作戦を張り巡らせようとする知能戦が描かれます」とアピール。
「『五等分の花嫁』もそうでしたが、春場先生はただお話を進めているのではなく、あらゆる面で伏線を張っていると思います。最終的にそれらの伏線が綺麗に回収された時、気持ちよさを感じさせてくれる要素がDにあるんじゃないでしょうか。ぜひDに注目しながらアニメを楽しんでいただきたいですね」。
文/久保田 和馬