閑散期の平穏な北米興収ランキングに動きを与えるのはアカデミー賞!主要候補作の平日興収をチェック
先週末(1月19日から21日)の北米興収ランキングは、閑散期らしく上位の顔ぶれや順位に大きな変動は見られず。かろうじて前週4位だった『Anyone But You』と同5位だった『FLY!/フライ!』(3月15日日本公開)の順位が入れ替わったことぐらいだろう。前週に1位スタートを飾った『Mean Girls』は、前週比40.7%という大幅な興収の下落に見舞われたが無事に2週連続1位をキープ。これで累計興収は5000万ドルを超えている。
今回主要なトピックとして取り上げたいのは、週末の成績よりもその後の平日の状況。現地時間1月23日の早朝に発表された第96回アカデミー賞のノミネーションを受け、候補作にどのような動きが見られたのかということだ。
まず作品賞候補作のなかで、先週末のランキングで最上位にいたのは10位の『哀れなるものたち』(日本公開中)。ちょうど先週末から上映館を1400館まで増加しており、その効果もあって公開7週目で待望のトップテン入り。累計興収は2000万ドルを突破している。そしてアカデミー賞では1部門にノミネートされたことを受けてか、火曜日のデイリー興収では8位、水曜日と木曜日のデイリーでは5位まで順位を押し上げている。
同じく5部門で候補にあがっている『American Fiction』も前週末から850館に拡大。その週末ランキングでは12位だったものの、火曜日のデイリー興収では公開40日目にして初のトップテン入り。水曜日には7位にまで浮上してきている。さらに監督賞や国際長編映画賞にも候補入りを果たした『関心領域』(5月24日日本公開)は、上映館が100館にも満たない規模ながら週末ランキングは21位。ノミネート発表直後に大きな変化は見られなかったが、木曜日のデイリーでは前週の週末とほぼ同等の興収を叩きだすことに成功した。
そしてやはり注目は、最多13部門にノミネートされているクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』(3月29日日本公開)。昨年7月に公開されたので、もう半年のロングランを記録している同作は、10月ごろから上映館が減り始め、年末年始には興収もかなり落ち着いていた。しかしゴールデン・グローブ賞の発表前後から上映館を拡大し、現在では254館まで増加。さすがに他の作品と比べれば目ざましい変化はないが、受賞結果次第ではまだまだロングランが続くことだろう。
日本勢2作品はどうか。週末ランキングの時点では15位だった長編アニメーション賞候補の『君たちはどう生きるか』(日本公開中)と、同18位だった視覚効果賞候補の『ゴジラ-1.0』(日本公開中)は、いずれもノミネート発表当日のデイリー興収で前日比123〜124%の上乗せに成功。これは北米で火曜日に割引サービスを行う劇場が多いことも理由にあるだろうが、翌水曜日にも同じ水準の興収を維持している。
平日の時点ではまだ大きな変化が見られないのは致し方ないが、この後もしばらく新作ビッグタイトルの公開が少ない閑散期が続く北米映画界。ノミネート発表後最初に迎えるこの週末(1月26日から28日)で、これらの候補作にどのような動きが見られるのか引き続き注目しておきたい。
文/久保田 和馬