『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』が初登場No. 1!“劇場でテレビアニメを観る”戦略の功績と課題
2月2日から2月4日までの全国映画動員ランキングが発表。4月から放送されるテレビアニメ「鬼滅の刃」の第4期「柱稽古編」を前に、第3期「刀鍛冶の里編」の第11話と「柱稽古編」の第1話を劇場上映する『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』(公開中)が堂々初登場No. 1を飾った。
2024年も「鬼滅旋風」!3日間で動員44万人を突破
『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』の初日から3日間の成績は、観客動員44万3700人、興行収入は6億4700万円と文句なしの好成績。とはいえ昨年の同時期に公開されて最終興収41億6000万円を記録した『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』(23)のオープニング成績と比較すると、動員・興収共に55%ほど。数字を追っていくうえで、この急激な下落だけはどうしても気になってしまうところだ。
いまや説明不要の国民的作品となった「鬼滅の刃」。週刊少年ジャンプで連載がスタートしたのは2016年のことで、2019年にテレビアニメの第1期「竈門炭治郎 立志編」がスタート。その放送開始前には第1期の1話から5話の特別編集版となる『鬼滅の刃 兄妹の絆』(19)が劇場公開されミニシアターランキングで2週連続の首位を獲得。つまり社会現象的な人気を獲得する前から“劇場で観るテレビアニメ”としての戦略を成功させていたといえよう。
2020年10月に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)は、コロナ禍で落ち込み気味だった映画業界を救った作品といっても過言ではない。日本国内の歴代興収ランキングを19年ぶりに塗り替え、最終興収404億3000万円という驚異的な記録を叩きだすと、翌年の春には北米でも公開され、公開2週目に週末興収ランキングでトップに立つ快挙を成し遂げた。
その「無限列車編」がテレビ用に再編集されて放送されたのも、いま思えば“劇場で観るテレビアニメ”としての戦略のひとつだろう。その後、第2期の「遊郭編」が放送されてさらにブームを加速させると、そこから1年間のブランクをものともせずに前述の『上弦集結〜』が大ヒット。そして第3期「刀鍛冶の里編」の放送から8ヶ月の間隔を空けて、今回の『絆の奇跡〜』という流れだ。
今作と同じようにテレビアニメのエピソードを劇場で上映するという試み。それ自体は、今年1月に公開された『名探偵コナンvs.怪盗キッド』(公開中)をはじめとした近年の「名探偵コナン」シリーズの特別編集版などとも通じるものがあるのだが、そのような劇場版の新作に向けた過去エピソードの総集編ーーいわばシンプルに“おさらい”の意味が強い作品とはまるで性質が違うのが「鬼滅の刃」の特徴だ。おさらいだけでなく、その先に繋がる新たな体験との両立を、1本の劇場用作品のなかで実現しなくてはならない難しさがある。
つまるところ、先立って第4期の1話を劇場で鑑賞できる特別感が味わえても、観客は必然的にその続きをまたしばらく待つことになる。昨年の例を考えると約2ヶ月ほど。人気コンテンツを劇場体験として提供したい作り手側の戦略と、作品を最大限に楽しみたいファン側のモチベーションのせめぎ合いの結果が、今回の初動成績にあらわれたように思えてならない。「柱稽古編」の先には、ほぼ確実に「無限城編」が控えているはずだ。怒涛のクライマックスに磐石の状態で向かうためにも、作り手側にはより画期的な戦略が求められることだろう。