『映画 マイホームヒーロー』佐々木蔵之介&宮世琉弥を直撃!「善悪の在り方について問われる作品」
「哲雄、実はスーパーマンやろ!と言いたくなる」(佐々木)
――佐々木さん、宮世さんが「マイホームヒーロー」という作品に惹かれる理由を教えてください。
佐々木「原作がもう、とてつもなくおもしろい!僕が演じた哲雄は普通のサラリーマンですけど、実はスーパーマンやろ!そこまでできるのか!と言いたくなる。序盤からいきなり、死体を解体して浴槽に作った簡易鍋でグツグツと煮ながら、まるでお料理でもするかのように処理していましたが、こういった客観的にはホラーに見えるシーンもどこか笑えてしまう、非常に多面的なキャラクターですよね。殺人犯なのにヒーローというギャップがあり、血だらけになりながらも頭をフルスロットルで回転させて二手三手先を読んでいるところに引き込まれ、とにかくエンタメとして秀逸でした。映像化にあたってもそういったところは見せようとしていて、もちろん制限もあるので削った要素もあるのですが、スタッフ、キャストたちはみんな一生懸命でした」
宮世「僕も原作がとにかくおもしろかったです!素人の哲雄がプロである犯罪組織を相手に戦っていて、そのなかで自身も殺人を犯している曖昧な感じがすごく好きなんです。“哲雄節”というんですかね?それが僕にはすごく刺さって、夢中になって漫画を読んでいました。原作にあるこの“節”はドラマや映画でも完全に表現されていると思います」
――ちなみに、佐々木さんから“哲雄節”を感じたところはありますか?
宮世「家族のために行動する時に、パッとスイッチが入って手段を選ばなくなるギャップが、本当に哲雄そのものでした。いろいろな考えを巡らせながら、家族に危機が迫った瞬間、パッと一つの選択に決まる感じ。すごく“節”でしたね!」
――最後に、“大切な人を守るために罪を犯す”という倫理観を揺さぶるテーマが、ドラマ版から一貫して描かれています。役を演じたり、作品を観たりするなかでどのようなことを感じましたか?
佐々木「正義と悪の在り方について問われているんだなと思います。哲雄は娘を守るために人を殺めてしまった。そこから彼なりの決着を付けようと模索するなかで憎悪の連鎖に巻き込まれていく。絶対的な正義があるわけではなく、やっぱりどこかで断ち切らないといけない。簡単に答えが見つかるテーマではないですよね」
宮世「大沢がしようとしていることは悪だと思うのですが、その悪の気持ちもわかってしまって…。正義か悪かで揺れる部分がこの作品のポイントで、僕自身もすごく揺れましたし、理解もできるので難しいですね。でも、正解なんてないんだと思います。観た人それぞれで受ける印象も変わってくるはずなので、そういったところも楽しんでほしいです!」
取材・文/平尾嘉浩