原作者・夢枕獏、『陰陽師0』奥州市特別試写会で「私のファンが観ても安心できるもの」と称賛!「東天の獅子」続編構想も明かす
完成した本作を佐藤監督と共に鑑賞したという夢枕。「横に映像化した監督がいて、『つまらない映画だったらどうしよう』というプレッシャーがあるんですよ。トイレ行くふりして逃げようかなと思っていました(笑)」と冗談を交えつつ、バランスに優れた映画であったと本作の感想を述べる。「マンガでも映像でも小説でも、呪術のできることとできないことのが歯止めが効かなくなっているなか、きちんとルールがありつつ派手な場面も作って、すごいバランスでいろんなものが散りばめられていました。青春映画としてもよくできていて、ここまではやると思っていたところの、もう一つ上のステージにありましたね」と絶賛。佐藤監督が、「映画が終わったあとに、獏さんが目をそらさなかったので安心しました」と話し、夢枕は「どうやら僕は嘘をつく時に目が泳ぐからわかるらしいです(笑)」と、2人の関係が垣間見えるトークが繰り広げられた。
そんな夢枕が佐藤監督に要望を出したのは、「呪文は口から出すことと、雲中菩薩を出してほしいこと」の1度だけだと明かす。「映画という大きな船に、『みんなで乗ってみんなで行こう』と思っているなかで、原作者が『俺は知らないよ』というのは反則。だから乗組員ではあるけれど口出しはしないと決めている。押し付けになるけど、(佐藤監督は)やりやすかったのでは?」と話すと、佐藤監督は「ありがとうございます」と感謝の気持ちを述べていた。
トークセッションの終盤には、観客からの質問が寄せられた。夢枕の大ファンという男性からは、本作が「非常に納得がいって、おもしろかったです」と感想を述べつつ、夢枕の代表作の一つ「東天の獅子」の続編を読みたいと熱弁。夢枕は、「講道館柔道の歴史を書くのがおもしろくて、第1巻で出なきゃいけない主人公が、やっと4巻目で出てきて、そこで終わってしまったんです。前田光世が世界中を修行して回って、(ジョージ・)ハッケンシュミットとか当時強いと呼ばれていた男たちをみんなぶっ潰していく話を、必ず書きます」と、メッセージを送っていた。
また、「陰陽師」のファンで日本音楽をやっているという女性からは、「博雅が楽器を弾く時の描写がとても綺麗でした。監督や先生には音楽を聴いた時にどんなふうに見えているのか」と質問。佐藤監督は難しい質問だとしつつ、「今回、徽子(女王)が弾いている琴は、日本独特との和琴(わごん)で神に捧げる音であったので、地位の高い人にしか弾けない神聖なものでした。和琴の総音のすべてを本作では使っていて、一音一音に神が出ているような感じを画にも表現しています。博雅も、生まれた時に音楽が鳴って虹色に雲が出たぐらいの音楽の天才で、ある意味モーツァルトのような人です。彼の音は神が宿っている音なんだろうと思って表現しています」と、音楽の演出について解説をしていた。
最後に佐藤監督は、「水沢には映画館がなくなってしまって、遠くにいかなければならない状況ですが、できれば音がいい映画館で、大きなスクリーンと7.1chの音響で、もう一回ご覧になっていただけるとうれしいです。もし気に入っていただけたら、友人を誘って観に行ってほしい」と、劇場で見る本作のよさをアピール。夢枕は、「よくマンガや小説が実写映画化されると、『これはちょっと違う』と思う人がいますが、映像と小説は表現形式が違うから当たり前なんです。それを踏まえても、本作は私の小説のファンが観ても安心できるものとなっています。もし知り合いに『陰陽師』の小説を読んでいる人がいたら、安心して観に行ってとお伝えください」と語り、イベントを締めくくった。
取材・文/編集部
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記