『関ヶ原』の岡田准一が語る、時代劇の主演を務める重責

インタビュー

『関ヶ原』の岡田准一が語る、時代劇の主演を務める重責

岡田准一が『日本のいちばん長い日』(15)の原田眞人監督と初タッグを組み、新たな石田三成像を見せた時代劇『関ヶ原』(8月26日公開)。原作は司馬遼太郎の同名歴史小説で、初の完全映画化作品となる。天下分け目の戦いとなる関ヶ原の合戦を、真っ向から描く本作について、主演を務める岡田准一を直撃。岡田は時代劇に出演することの意義を改めて噛み締めたそうだ。

わずか6時間で勝敗が決まったとされる関ヶ原の戦い。そのスケールの大きさから、なかなか映像化が実現しにくいとされていたが、岡田自身もそのことを重々承知の上でオファーを受けた。「TBSで一度ドラマ化されていますが(1981年放映作品)、それ以来、『関ヶ原』を題材とした作品は作られていないんです。ちゃんと描くには予算もかかるし、相当大変な聖域みたいな感じで、描かないで終える時代劇も多い。みんな手を出せない企画でもあったので、本当に実現するのかな?とも思っていました」。

実際、その過程の胸中は穏やかではなかったよう。「正直、途中段階では実現しないかもしれないとも思っていました。また、映画化が実現したとしても、それを形にするのがいかに難しいかということも、時代劇を経験していればわかりますし」。

そんな中、岡田がずっと熱望してきたのが原田監督とのタッグだった。「僕自身、原田監督とお仕事をさせていただきたかったですし、原田監督の『関ヶ原』を観てみたかったんです」。

無事に撮影は始動し、自らの正義を貫いた清廉潔白な三成像に、不器用な人間くささまでをも滲ませた岡田。颯爽と馬を駆る三成の勇姿に惚れ惚れする。この現場で岡田は、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で共演した馬と再会した。

「バンカーという馬で、霧や雨の中など、視界が見えなくなる場所に入っていくこと以外は、僕の言うことを100%聞いてくれます」とうれしそうに語る岡田。

「ただ、役馬として優秀な馬なので、爆破シーンなどにも動じないんです。だからわざと手綱を引っ張ったり、動かしたりして、びっくりしているふうに見せなくてはいけなかった。僕は、バンカーとは100%相性がいいというか、乗った時のバランスもいいらしくて、すごく大好きな馬です」。

第38回日本アカデミー賞では『永遠の0』(13)で最優秀主演男優賞を、『蜩ノ記』(14)で最優秀助演男優賞とW受賞した岡田。今や日本映画界を牽引する逸材となったが、時代劇で主演を務める重責をどう受け止めているのか。

「僕は10代の頃から、先輩方に『時代劇ができるようになったほうがいい』と言っていただいてきて、『関ヶ原』の後、『散り椿』(2018年公開)という作品の公開が続きますが、こちらも時代劇としてしっかりしたものが撮れたと思っています。馬に乗ることも含め、今だからこそこれまで勉強してきたことが活かせているんだと思います」。

実際、岡田が出演する時代劇はいずれもしっくりきていて、“品質保証つき”の安心感を覚える。「やっぱり今の時代、違和感を感じるようなものは受け入れられないんじゃないかと思うんです。そういう意味で、そういった違和感をどう消せるかということが、人に観てもらえる作品の基準になってきているはず。時代劇であれば馬に乗れたり、体が動かせたりすることが必要でしょうし、実際に僕はそういう作品のオファーをよくいただきます。自分も時代劇ができるようになりたいと思っていたので、ありがたいです」。

岡田がそう感謝する一方で「もちろん現代劇もやりたいですよ」といたずらっぽく笑う。「ただ、以前に先輩から『若いうちはいろんな役に挑戦ができるけど、年を重ねるとイメージがついて決まった役柄が多くなる。そのとき自分で自分に飽きてはダメだからね』と言われてきまして。まさに今、軍人、侍、社長といった役をよくいただきます。もちろんいろんな役もやりたいですが、『関ヶ原』の主演をできたのはそういう役を積み重ねてきたからであり、本当に今回出演できて良かったと思っています」。

最後に「自分がやってきたことは間違いなかった」と締めくくった岡田准一。意気揚々としたその表情を見て、実に頼もしく感じた。【取材・文/山崎伸子】

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