クールで胡散クサくて変人!?“青い目の僧侶”ヘンリ・ミトワを知っているか?
京都屈指の観光地として国内外から大勢の観光客が訪れる世界遺産・天龍寺。ここにかつて日系アメリカ人の禅僧がいたのをご存知だろうか?禅僧の名前はヘンリ・ミトワ(1918〜2012)。ドイツ系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、異色の経歴をたどり日本で禅僧となった彼の生涯に迫るドキュメンタリー映画『禅と骨』が9月2日(土)より劇場公開される。
本作は『ヨコハマメリー』(06)を手掛けた中村高寛監督が、8年の歳月を費やして完成させた2作目の長編ドキュメンタリー。波乱に富んだミトワの生涯をドキュメンタリー映像と彼の半生を再現したドラマ、さらにアニメを駆使して浮き彫りにする。ドラマパートでは青年時代のヘンリをウエンツ瑛士が熱演。さらにヘンリの母役の余貴美子をはじめ、佐野史郎、緒川たまき、永瀬正敏らが脇を固めている。
記録映像とドラマ、アニメで紡ぎ出すのは、青い目の禅僧ミトワの激動の人生。横浜で生まれた彼は1940年に単身渡米。第二次世界大戦中は敵性外国人として日系人強制収容所で過ごした。終戦後はロサンゼルスで幸せな家庭を築いていたが、仏教と出会ったことで1961年に日本へ帰国。禅僧として日本文化を愛でながら悠々自適な晩年を送るはずだった。
ところが80歳を目前にした96年。ミトワは突然、童謡「赤い靴」のルーツを辿った書籍「赤い靴はいてた女の子」(著:菊地寛)をモチーフに「映画を作りたい」と一念発起。この大きな夢が家族や周囲の人々を巻き込んで、誰もが想像もしない事態に発展していく…。
映画は禅僧という言葉だけでは捉えきれないミトワの実像を、生前の本人と関係者へのインタビューや、音楽面でも表現。どこか胡散くさそうで、でも自由気ままな生き方はカッコいい…という見る人によって印象が変わる彼の複雑な人物像を映し出している。
戦前から戦後の時代の流れに翻弄されつつも、型にはまらぬ生き方で多くの人から愛されたヘンリ・ミトワ。その魅力の秘密を、ぜひ確かめてみてほしい。【トライワークス】