「物語の半分ほどが実話」と柿崎ゆうじ監督が語る『コウイン~光陰~』の公開記念舞台挨拶
3か国の国際映画祭で5部門を受賞した、日本発要人警護アクション映画『コウイン~光陰~』(公開中)の公開記念舞台挨拶が4月13日に新宿武蔵野館で開催。竹島由夏、出合正幸、榎木薗郁也、中里信之介、柿崎ゆうじ監督が劇中衣装で登壇した。
本作は、柿崎監督の実体験をもとに、民間警備会社の生き様を描いた『第二警備隊』(18)の続編として製作されたオリジナルストーリー。本作は柿崎監督が代表を務める警備会社ビーテックインターナショナルで実際に請け負ったケースを物語に組み込んでいるということもあり、柿崎監督が「物語の半分ほどは実話を含んでいるので、話せるところと話せないところがある」と緊張感が漂うコメントをすると、すかさず主演の出合が「監督、それ以上ダメ!という話があったら止めてくださいね!」と合いの手を入れ、場内は笑いに包まれた。
出合を含む俳優陣は、ピシッとしたスーツに警備会社エステックの記章をつけた劇中衣装で登壇。本作の見どころについて聞かれた出合は「警棒、ベルト、無線機、防弾チョッキなどの装備類は実際にビーテックインターナショナルで使われている装具を使っています。アクションシーンでは本物の警棒を投げているので、撮影中の緊張感は凄まじかった」と細部にわたるリアリティに言及。役作りのために「装備類に慣れたくて防弾チョッキを着て耳にインカムをつけたりして買い物に行ったりしていました」と日常的に隊長マインドで過ごしていたそうだ。
撮影は8月に山梨県のキャンプ場で敢行。竹島は「標高が1,100メートル程あったので、下の気温は40度でも上は涼しくてダウンを着るくらいのなかで撮影をしました。天候も変わりやすくて雨も多く、何度も撮影が中断しました。足下もぬかるんで滑りやすく、中里くんは実際に転んでいました」と山中ならではの苦労を振り返った。
ハードなアクションシーンについて柿崎監督は「通常は地面にマットを敷くが、あえて敷かず、破れてもいいようにスタッフには衣装を3つ用意してほしいとお願いした。地面には砂利があったりしたけれど…死にはしないだろうと」とリアル志向で撮影を敢行したことで、数々の名アクションが生まれたようだ。
榎木薗は自身の役柄に触れて「勇ましい隊員に支えられる三枚目キャラ。あまりアクションはしていないけれど、ある意味で観客の皆さんの視点に近い役柄」と紹介。柿崎監督から「とある場面で身を挺して人を逃がそうとするのは相当な自己犠牲」と言われた榎木薗は「僕自身、今回の役を通して成長しました」と実感を込めて語った。
一方、本作が映画デビューとなる中里は「若手隊員という設定だったので、自分も一生懸命に取り組んで自分の精一杯を出そうと思いました。そうすれば例え芝居ができなくても良いものが出ると信じて。砂利の上での前転とかアクションシーンもなにも怖くありませんでした。本気で殴られても大丈夫だと思っていました」と気合十分に向き合った様子。これには柿崎監督も「アドレナリンが出ているから痛みなんて感じないよね」と榎木薗の熱演を労った。
主演の出合と、共演者の1人である山崎真実とは特撮ドラマ「轟轟戦隊ボウケンジャー」以来の再共演となった。18年越しの顔合わせについて出合は「いつか共演したいねと言っていた割には、いざ共演が決まるとすごく緊張しました。これまで友達として接してきたのに急に仕事仲間として同じ現場に立つと…すごいドキドキ。そのドキドキが伝わったらまずいと思って本人に『ごめん、緊張している!』と伝えたら『…気持ち悪い』と言われました。『なんで!?』と思った」と苦笑い。
劇中ではそんな山崎と出合が淡い想いを紡いでいるが、柿崎監督は「実際に警備をしているとクライアントから恋愛感情を持たれることもある。しかし隊員側から恋愛感情を持つことはありえない。そんな感情を持ってそこに流されたら警護なんてできない。気持ちの面でも一線を引いているし、そもそも危険を伴う仕事なのでそんな感情にはなり得ない」ときっぱり言い切る。これに出合は「吊り橋効果的なものなのかな?クライアントさんは守られていくうちに隊員を好きになってしまうのかな?」と興味津々だった。
最後の挨拶で出合は「本日以降も舞台挨拶があるのでお待ちしております!」と今後のイベントについてアピール。続いて柿崎監督は「全国各地に作品を届けるためにこれからも頑張っていきたい」とヒットを祈願し、イベントを締めくくった。
文/山崎伸子