石原さとみ「自分を壊してほしい」と吉田恵輔監督に直談判し挑んだ主演作『ミッシング』の完成に感無量
吉田恵輔監督がオリジナル脚本で挑んだ映画『ミッシング』(5月17日公開)の完成披露試写会が4月16日、新宿ピカデリーにて開催。石原さとみ、中村倫也、青木崇高、森優作、小野花梨、細川岳、吉田監督が登壇した。
石原が、出産にともなう休業から1年9か月ぶりにカメラにの前に復帰し、主演を務めた本作で描かれるのは、とある街で起きた少女の失踪事件。娘が見つからないまま3か月が過ぎ、その帰りを待ち続けるも、少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母親、沙織里を石原が演じる。
大きな拍手で迎えられた石原は、冒頭の挨拶で「今日はお集まりいただき」と声が震えてしまい、自ら「早い!」とツッコミ。その後、気を取り直し「いろんな方からこの試写を観てくださって、いろんな言葉を掛けていただけて、本当に幸せだなと感じます」「私の夢が叶った作品です。こうしていち早く皆さまにお届けできることが心の底からうれしいんですけど、怖い部分もあります」と目を潤ませながら語った。
本作の製作に至る経緯を聞かれた石原は「7年前に『いまのままじゃいけない、変わりたい』と『自分を壊してほしい』と、そういう衝動にかられまして。私を変えてくれる人は誰?といろんな作品を観ながら、吉田恵輔監督の作品に出会って、『この人だったら私のことを変えてくれる』『絶対に学びがある』と直感で(感じ)、そこから吉田恵輔さんを知りませんか?といろんな人をたどって、プライベートでお会いさせていただいて、『出させてほしい』と直談判しに行きました」と告白。
さらに「そして一度は断られたんですが、『連絡先だけでも交換させてください』とお願いして。3年間まったく音沙汰なかったんですが、3年後に『脚本を書きました』と連絡をいただいて、本当に飛び跳ねるようにうれしかった」と明かした。続けて、「(私の)妊娠、出産を待ってくださって、撮影を去年のいまごろしまして。いま、こうしてお届けできることが本当に感慨深い」と作品に込めた思いの深さを口にした。
石原の頼みを一度は断ったという吉田監督は、その理由を尋ねられると「『出たいです』と言われたんですけど、『すいません苦手です』と(笑)。石原さんは華がすごいんですよ。俺の映画ってもっと地味。下町とか郊外とかそういうところが舞台の映画が多いので、石原さんはなんか港区臭が強すぎて(笑)」と作風に合わないと感じていたことをぶっちゃけた。
その上で「でも新しい本で、石原さんをこっちの世界に引きずり込めないかなというある種のギャンブルというか。一緒に努力して、みんなが知っている石原さとみさんじゃないものを作るという自信はありました」と本作の出来栄えに胸を張った。
役作りの話題では、石原がボディソープで髪を洗ったというエピソードを披露。「監督と一緒に美容院に行きまして、美容師さんに『一番髪の毛を傷ませる方法はどうしたらいいですか』と。それで髪の毛を染めたまだらな状態をボディソープで洗うとどんどん傷んでいくとアドバイスをいただいて、そこから毎日洗っていったら、すごく痛みました。おすすめです(笑)」と笑いながら伝えた。
そのほかにも「いままでの自分を消す方法だったり、“沙織里像”を作っていく方法で、髪の毛だったり肌荒れだったり、身体の緩さだったり、爪の汚さだったり、いろんな部分で“自分のことがなりふり構わない状態”というものを作り上げました」と役作りの様々な工夫を紹介。
撮影後も役から抜けだすことが難しかったそうで「切り替えられなかったかも。なので終わった瞬間にすぐにショートカットにしました」と髪型を変えた理由も打ち明けた。
一方、石原とは19年ぶりの共演だったという中村は、石原について「同い年で同じ誕生日で同じ血液型なんです」と明かして驚かせる。今作での共演は感慨深かったそうで、「気付いたんです。『石原さとみの背中を追いかけていたんだな、俺』って」とも話し、「僕がこの仕事を始めた時に、もうさとみちゃんは仕事をされていて、同世代のトップを走っていた感じがあったんです。そこからしばらく共演もなく、いつかなにかでご一緒したいなと思っていたんですけど、ここまで掛かっていて…」と同世代ならでは感情があったことを吐露。
「僕が19年前にさとみちゃんと一緒だったドラマは、一緒に甲子園を目指していたんですけど、ムネくん(青木)も出ていて。だからこの並び(青木、石原、中村)を見た時に、“運命”を感じましたね。あ、ごめんなさい、“Destiny”を感じました」と石原が出演中のドラマのタイトルも絡めながら喜びを噛み締めていた。
※吉田恵輔監督の「吉」は「つちよし」が正式表記
取材・文/山田健史