杏、母の日のサプライズ花束に「泣けてきます」8年ぶり主演映画『かくしごと』舞台挨拶で中須翔真をハグ!
杏が8年ぶりに主演を務める映画『かくしごと』(6月7日公開)の完成披露舞台挨拶が5月7日、ニッショーホールにて開催され、杏、中須翔真、佐津川愛美、安藤政信、奥田瑛二、関根光才監督が登壇。「ネタバレになるから言えないことが多い!」としながらも、映画の見どころをアピールした。
北國浩二の小説「嘘」を映画化した本作で描かれるのは、主人公の絵本作家、千紗子が故郷に戻り認知症の父親を介護する日々を送るなか、虐待の跡がある記憶を失った少年、拓未と出会い、彼の母親と偽って生活を送る物語。本作は、千紗子が拓未を想う深く激しい母性、実の両親による拓未への虐待や、認知症の父の介護といった社会問題もストーリーに織り込まれているヒューマンミステリーとなっている。
撮影を振り返り、拓未役の中須には台本が渡されていなかったことに触れ「彼の演技を受けることで、(芝居を)引きだされていくような貴重な体験をしました」と語った杏。いまだからできる役と思ったのは「年月を重ねていくなかで涙もろくなって。子どもが巻き込まれる事件などには、得も言われぬ感情が湧いてくるようになりました。本を読んでも涙が出てきました」と説明。「撮影は2年前。2年ぶりに会って大きくなったなと思いました。画面のなかでは“こんなに無垢な存在がいるんだ”というのを楽しんでほしいです」と中須の成長に目を細めつつ、彼の芝居に注目してほしいと呼びかけた。
共演シーンの多かった杏と奥田の印象を訊かれた中須は「杏さんには差し入れをたくさんしていただきました」とニッコリ。関西在住のため撮影中はホテル暮らしで、都内に住む共演者のように自宅に帰ることができなかったという。「撮影は山奥で、コンビニやスーパーがなくて。食料に困っていたのですごく助かりました(笑)」と明かすと、会場から労いの拍手が送られちょっぴり照れ笑い。
奥田には芝居を教わったと報告した中須は、映画のおすすめポイントを求められると、「なにを言おうかな。言えることは少ないけれど、悲しいと言うことよりは…」とネタバレにならないよう、慎重に言葉を選ぶ。そんな中須に奥田からの助け舟が。「言いたいことは山ほどある。だけど、今日の舞台挨拶で(役者陣が)あまりうまく話せないのは、決して話が下手ってことじゃない。この映画はいろいろと説明がしにくいんです」との奥田のフォローを受け、中須は「映画の内容は言えない。それが僕の『かくしごと』です!」とタイトルに絡めたコメント。中須のこの返しに、杏、奥田、安藤も目を丸くし、思わず拍手を送る場面もあった。
「役としては決していい役ではない」と自身が演じたキャラクターに触れた安藤は、年齢を重ね視野が広がり、台本のなかにいろいろな関係性が見られるようになったと話す。「この台本のなかには、(これまでの)経験や感情がすべて詰まっているような気がした。最後まで読むのに何度涙が出たのかわからない。台本を読んでいる時の感情が、いまこうしてしゃべっていても湧きだしてきます」と脚本を大絶賛。続けて「脚本もすばらしいけれど、主人公もすばらしい。自分も演じたい役だと思いました」と熱弁。安藤のこの言葉に関根監督は、「安藤さんが衣装合わせの時、『自分、この役演じたいです』とおっしゃって。(安藤さんの)超一流のギャグかと思っていたのですが、お話してみるとどうやら本気だったようで。今回は、真逆の役をお願いしてすみませんでした」とお詫び。安藤は杏の役を心からうらやましいと明かすと同時に、杏の芝居を賞賛。杏は恐縮しながら「ありがとうございます」と深々とお辞儀していた。
「一言で言うと、打ちのめされるような感覚になる映画」と話した杏。鑑賞後は「自分だったら…」とそれぞれの立場で考える作品と解説。人間の倫理観は時代とか国によって真逆になることもあるとし、「いまの自分の常識が必ずしも正しいかわからない。もし、あなただったら、なにをしますか?なにができますか?とエンタテインメントを通してグサっと胸を刺してくるような作品です。と同時に、ミステリーとして続きが気になる作品でもあります」と締めくくり、作品の見どころをしっかりアピールした。
イベントではもうすぐ母の日ということで、中須が杏へカーネーションの花束をサプライズで贈呈。「僕のお母さんになってくれてありがとう」との中須のメッセージに「泣けてきます。(この瞬間を)噛み締めたい!」と喜びを爆発させた杏。「ありがとう」のお礼と共にギュッと中須を抱きしめると、会場はあたたかな拍手に包まれた。
取材・文/タナカシノブ