WETA日本人スタッフが語る『猿の惑星/キングダム』の深み。衝撃のラストにも言及「捉え方は人によって変わる」
普及の名作「猿の惑星」を新たなストーリーとして展開する完全新作『猿の惑星/キングダム』が公開中だ。共存を目指す“猿&人間”VS独裁を望む“猿”というかつてない構図で描かれる物語はもちろん、話題となっているのは度肝を抜く結末。「おもしろかった…奥深い、考えさせられた」「ラストの展開、めっちゃワクワクした…」「ラストなかなか意味深だったな」などと映画ファンからも感想が寄せられている。このたび、猿のキャラクターたちをリアルに作り上げるリード・フェイシャル・アニメーターとして映画に参加したWETAの日本人スタッフ、ヤブヒロユキから、そんな本作のラストについても言及したコメントが到着した。
実写映画化される「ゼルダの伝説」の監督にも抜擢され、世界から注目が集まっているウェス・ボールと、「アバター」シリーズを手掛けた最高峰のVFXスタジオWETAがタッグを組んだ本作。猿の独裁を目論むプロキシマス・シーザー(ケヴィン・デュランド)によって大切な家族と故郷を奪われてしまった若き猿のノア(オーウェン・ティーグ)が、仲間を助けに行く旅の途中で、逆転した人間と猿の関係性を一瞬にして覆すほど重大な秘密を握る人間ノヴァ(フレイヤ・アーラン)と出会う。そして、野生動物の一種としか思っていなかった人間の“本当の姿”や、かつて人間と猿が共存していた時代があったことを知り、再び共存を目指し独裁者に立ち向かっていく。
本作で、俳優による表情の演技をCGで猿に落とし込んだヤブ。担当したのは、メインキャラクター2人(ノア、プロキシマス・シーザー)のエモーショナルなクローズアップ・ショットを含むフェイシャル・アニメーションだ。衝撃のラストで観る者を圧倒させる本作についてヤブは、「観る人それぞれの想いのなかで、結末の捉え方も人によって変わる作品です」と述べている。「どのキャラクターに共感するかで見え方が変わってくるのです。つまり、観客の想いが“共存”でいいじゃないかと思えたなら猿と人間の和解をイメージするでしょうし、もし自分はこんな世界で絶対に排除されたくないと思えたなら、猿が絶対的な悪に見えてくるでしょう」と語り、見方によって迎えるラストも多様に感じられる作品になっていると言う。
本シリーズが長年にわたり愛され続けている理由につながっているのが、猿と人間の間に描かれる深い物語であり、本作でもその要素は健在。人間と猿の共存か猿の独裁かをかけた衝突と同時に、種を超えた信頼や駆け引きなどの物語が描かれている。
ノヴァを演じたアーランも「人間のノヴァと猿のノアが関係を築いていくことが、この物語の核だと思います。とはいえ、白黒はっきりしているというわけではありません。人間と猿はそうかけ離れていないと知った彼らは、その2つの種の架け橋になろうとしますが、この映画はそれだけではなく、常に多くの問いかけをしてくるんです」と捉えた。
人間だけでなく、人間との共存の可能性を感じる猿、“猿の未来のため”という正義のもと独裁に動く猿と、それぞれの視点で物語が進んでいくからこそ、いろいろな受け取り方ができる物語となった本作。衝撃のラストを、ぜひ劇場で体感してほしい。
文/山崎伸子