ギリシャ悲劇のように重厚なドラマが宿る『マッドマックス:フュリオサ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、最強の戦士フュリオサの原点を描く「マッドマックス」サーガ最新作、とある告白を巡る2人の男の気まずい一夜を描いたワンナイトサバイバル、70歳を迎えたジャッキー・チェンが主演を務める家族の物語の、主演の演技が光る3本。
重量級のカーチェイスと肉弾戦が絡むアクションも完備…『マッドマックス:フュリオサ』(公開中)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)で主人公マックス(トム・ハーディ)をしのぐほどの人気を博した女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)。その過去に迫る本作は、ギリシャ悲劇のように重厚なドラマが宿っている。
近未来のディストピアでバイカー集団に誘拐され、目の前で母親を殺された少女フュリオサ。横暴な独裁者に囲われ、女性であることを隠して男として生き、砂漠でサバイバルを強いられるなど、彼女の半生は壮絶だが、すべては強い復讐心に支えられていた。片腕を失った理由や、短髪にした契機などの知られざるエピソードは、前作のファンには嬉しい。もちろん重量級のカーチェイスと肉弾戦が絡むアクションも完備。主演のアニャ・テイラー=ジョイの熱演ともども、必見だ!(映画ライター・有馬楽)
迫力も恐怖もハンパない…『告白 コンフェッション』(公開中)
雪山登山中に猛吹雪で遭難。浅井はそんな極限状況下で脚にケガを負い、死を覚悟した大学山岳部の時代からの親友ジヨンから16年前の殺人を告白される。ところが、その直後に山小屋が目の前に現れ、2人は救助隊が来るまでの気まずい一夜を一緒に過ごすことになって…。「カイジ」の福本伸行(原作)と「沈黙の艦隊」のかわぐちかいじ(作画)による伝説の同名コミックを『カラオケ行こ!』(24)などの山下敦弘監督が映画化した本作は、そんな2人が、ヤバ過ぎるにも程があるシチュエーションで繰り広げる究極のサバイバル・ムービーだ。
前半は“ジヨンは告白したことを後悔している“と思い、「絶対、誰にも言わないから」と言う浅井と沈黙を貫き、時折、ヘンな物音を立てるジヨンとの頭脳戦が凍りつくような緊張感のなかで展開。それが後半で一気に血で血を洗う殺戮劇に転じていくのだが、そんな地獄絵を浅井役の生田斗真とジヨンに扮したヤン・イクチュン(『あゝ荒野 前編/後編』)が体当たりで生々しく演じているから迫力も恐怖もハンパない。観る者は浅井の目線と思考であっという間に当事者となり、ジヨンの心の動きと次なる攻撃を予測しながら思いがけないトラップに唖然とするクライマックスまで一瞬も息が抜けないまま突き進むことになるノンストップの74分。鑑賞後にようやく、全身に気持ち悪い汗をかいていることに気づくはずだ。(映画ライター・イソガイマサト)
70歳を迎えたアクションスターが魅せる新境地…『ライド・オン』(公開中)
アジアを代表するアクションスター、ジャッキー・チェンの生誕70歳、主演50周年記念作。今作でジャッキーが演じるのは、映画の仕事に入れ込み過ぎて家族と離れ離れになり、友人から譲り受けた愛馬チートゥと一緒に暮らす、かつての名スタントマン。チートゥの所有権を巡る問題がきっかけに、主人公は疎遠になっていた娘と再会する物語が描かれる。ケガで第一線を退いた男が愛馬とともに再びスタントに挑もうとする再起の姿と、離れていた娘との心の距離を縮めるドラマが交錯する家族の物語を、ジャッキーが熱演。スタントにチャレンジするシーンや乱闘シーンなどで往年のアクションを披露しつつ、家族に対して深い葛藤を持つ男の心情を見せる演技の両立は、これまでのジャッキー映画の集大成として納得の仕上がりとなっている。
さらに、主人公がかつてチャレンジした伝説的スタントとしてジャッキー映画の名シーンが映しだされ、ジャッキー・チェンの半生を振り返るような構成にもなっているのも嬉しい。アクションあり、笑いあり、感動ありの作品となっており、これまでジャッキー映画に触れてきたことがない人でも、ジャッキー・チェンの魅力を堪能できる1本となっている。(映画ライター・石井誠)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼