槙生ちゃんがガッキー本人と重なる『違国日記』など週末観るならこの3本!

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槙生ちゃんがガッキー本人と重なる『違国日記』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、ヤマシタトモコの人気同名漫画を実写化したヒューマンドラマ、3人の男女の10年にも及ぶ愛の物語、とある新聞記事を基に描かれる少女の運命の、人々の関係性を描く3本。

少しずつお互いの場所を見つけてゆく姿に理想の家族像を見た…『違国日記』(公開中)

【写真を見る】家族を喪った姪を引き取ることになった人見知りな小説家、高代槙生(『違国日記』)
【写真を見る】家族を喪った姪を引き取ることになった人見知りな小説家、高代槙生(『違国日記』)[c]2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

両親を交通事故で亡くした姪の朝を突然、引き取ることになった槙生。気ままな一人暮らしをしてきた槙生にとって、同居人の存在はストレスであり、刺激でもある。作家らしく、言語化しにくい気持ちや思いも相手に的確に伝わるよう、はっきり言葉にする槙生。普段の生活では口にしないような台詞を自分のものにしている新垣結衣が白眉。

原作コミックの目で読めるから理解できる槙生の美しい言葉群が耳からすんなり入ってくる。人見知りで気持ちが見えにくく、それでいて誰より周りを見ていて、思いやりのある槙生ちゃんがガッキー本人と重なる。スペースを大事にしている槙生の懐に容赦なく無邪気に飛び込んでくる朝役、早瀬憩も自然に愛らしく、槙生と朝、それぞれの事情が飲み込める。人はいつ大人になるのだろう。35歳と15歳、どちらが大人かわからないが、互いに気遣い、時にぶつかり、少しずつお互いの場所を見つけてゆく姿に理想の家族像を見た。(映画ライター・高山亜紀)

テニスはコミュニケーションのスポーツ…『チャレンジャーズ』(公開中)

3人の男女の愛の物語をテニス界を舞台に描く、ルカ・グァダニーノ監督最新作『チャレンジャーズ』
3人の男女の愛の物語をテニス界を舞台に描く、ルカ・グァダニーノ監督最新作『チャレンジャーズ』[c] 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.[c] 2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

テニスはコミュニケーションのスポーツだ。サッカー、野球といった団体競技の場合、コミュニケーションとはチームメイトとの連携を連想させるかもしれないが、テニスにおいてそれは、時にネットを挟んで対峙する対戦相手のことを意味する。打つボール1球1球に意図があり、相手側はまずはそれを受け止め、さらなるメッセージを込めて打ち返す。ラリーを通じて様々な会話がされている。ボルグとマッケンロー、サンプラスとアガシ、フェデラーとナダルといった錚々たるライバル関係が紡いできた名勝負には、そう思わせる力があった。テニスを題材とする『チャレンジャーズ』にもまた、そういった醍醐味が詰まっている。

本作におけるライバルは、アート・ドナルドソン(マイク・フェイスト)とパトリック・ズワイグ(ジョシュ・オコナー)。アートは四大大会を6度も制したスター選手だが(全豪、全仏、ウインブルドンをそれぞれ2回)、ケガによる低迷で唯一優勝していない全米オープンを前に自信を失っている。一方のパトリックは物語開始時点の世界ランキングが200位台であり、自家用車で各地を回りながら下部大会を主戦場にしてきた。そんな2人がチャレンジャー大会(四大大会を頂点とするツアー大会の下部のカテゴリー)の決勝で相まみえる。ゲームスタートから物語は始まり、激しい打ち合いが行われるなかで、ジュニア時代から現在に至る両者の因縁が解き明かされていく。そして、その中心にいるのが、アートのコーチ兼妻であるゼンデイヤ演じるタシ・ダンカン。かつてのスター候補でありながらケガによって選手生命を絶たれた彼女は、「テニスはコミュニケーション」を一番よくわかっている存在だ。アートとパトリックが苛烈なまでに互いを意識する理由とは?巨大なスクリーンで繰り広げられる、本物の試合にも負けないゲームメイクに大興奮必至!(ライター・平尾嘉浩)


河合優実の魂を激しく揺さぶる熱演から目が離せない…『あんのこと』(公開中)

河合優実が運命に翻弄された少女を体当たりで演じる『あんのこと』
河合優実が運命に翻弄された少女を体当たりで演じる『あんのこと』[c] 2023『あんのこと』製作委員会

2020年春。幼い頃より続く母親のDVから逃れ、ようやく生きる意味を見いだしはじめていた若い女性が人知れず命を絶った。本作は、そんな一人の女性の壮絶な人生を伝える新聞記事をベースにつむぐ慟哭のヒューマンドラマだ。主人公である21歳の杏(あん)を若手実力派の河合優実が全身全霊で体現し、清濁併せ持つ刑事の多々羅を佐藤二朗が緻密な人物造形で軽妙に演じている。

十代半ばから母親に売春を強要され、行き場のない思いを覚せい剤で紛らわせて暮らしていた杏。生きているのに死んでいるような毎日を送るなか、初めて手を差し伸べてくれた風変りだが心優しい多々羅の導きによって少しずつ自分の人生を再構築していく。これまで社会の枠に収まりきれない者たちに光を当て、ドラマティカルに描いてきた入江悠監督は、本作においてはその方法論をいったん封印。『PLAN 75』(22)の製作陣とタッグを組んで逆境に抗う少女の心の機微までも余すことなく繊細にフィルムに写し取り、その監督の想いに共鳴して“あんを生き直した”河合の魂を激しく揺さぶる熱演から目が離せない。あんはどんな気持ちで日記を毎日したためたのか。彼女にとっての幸せとは?ラストに怒涛の想いが押し寄せる、今年見るべき珠玉の一作。(ライター・足立美由紀)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

関連作品

  • チャレンジャーズ

    3.9
    712
    『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督による、テニスをテーマにした恋愛ドラマ
    U-NEXT
  • 違国日記

    4.0
    2690
    人見知りな小説家と交通事故で両親を亡くした中学生の姪の奇妙な同居生活を描く