不朽の名曲の誕生秘話を描く『ボレロ 永遠の旋律』日本版ビジュアル&予告編が公開
パリ・オペラ座で初演以来100年近く、時代と国境を超えて愛される不朽の名曲「ボレロ」の誕生秘話を描いた『ボレロ 永遠の旋律』が8月9日(金)より公開。このたび、日本版のビジュアルならびに予告編が公開された。
舞台は1928年、狂乱の時代のパリ。深刻なスランプに苦しむモーリス・ラヴェルは、ダンサーのイダ・ルビンシュタインからバレエの音楽を依頼されたが、一音もかけずにいた。失った閃きを追い求めるかのように、過ぎ去った人生のページをめくる。戦争の痛み、叶わない美しい愛、最愛の母との別れ。引き裂かれた魂に深く潜り、すべてを注ぎ込んで傑作「ボレロ」を作り上げる。
「ボレロ」はスネアドラムのリズムに導かれ、わずか2種類の旋律が楽器を替えて繰り返される、斬新かつシンプルな構成が聴衆の五感を虜にし、17分間の作品を貫くクレッシェンドが、カタルシスに満ちた壮大なフィナーレへと誘う音楽史上において最も成功したベスト&ロングセラー曲だ。だが、これを生み出した作曲家ラヴェル本人はもっとも憎んでいた曲だった。本作は、天才作曲家の魂を奪った魔の名曲が誕生するまでとともに、痛みに満ちたその人生が描きだされる。
予告編は、鍵盤に向かっていたラヴェルによって「ボレロ」の魅惑的な旋律がいままさに生みだされようとしていた時、その初めての観客となる家政婦が「その曲好きです。胸が熱くなる」と感想を語り、彼が安堵の笑みを浮かべる運命的な場面から幕を開ける。ダンサーのイダから自身のバレエのための作曲の依頼を受けたラヴェルは、試行錯誤の日々を経てこの曲をついに誕生させ、初演の大成功によって激変する彼の日常の一端が切り取られていく。しかし、ラヴェルは「こんな悪魔のような芸術にするな!」と激怒し、自身のすべてを注ぎ込んで作った曲によってその人生が侵食されていくことを暗示するセリフやシーンの数々が切り取られている。予告編では楽曲が全面的に使用され、本作がいざなう音楽的高揚感も予感させる映像に仕上がっている。
ビジュアルでは、タクトを大きく振り上げるラヴェルの恍惚の様子を大きく捉え、背景には超満員で沸き上がるオペラ座の様子が写しだされ、“その音は、魂を奪う”と「ボレロ」そのもののみならず映画が描き出すラヴェルの人生をも示唆するキャッチコピーが添えられた。
監督を務めるアンヌ・フォンテーヌは『ドライ・クリーニング』(98)でヴェネチア国際映画祭の金オゼッラ賞に輝き、『ココ・アヴァン・シャネル』(09)や『夜明けの祈り』(17)でセザール賞にノミネートされたフランスを代表する実力派として知られる。主人公ラヴェルを演じるラファエル・ペルソナは、主演作『黒いスーツを着た男』(12)でアラン・ドロンの再来とフランスメディアに絶賛され旋風を巻き起こした人物。心身ともに繊細なラヴェルがその才能と人生を振り絞って音楽を生み出す姿を、青い炎のごとく表現した。
ラヴェルの生涯にわたってのミューズにして魅惑的なミシアには『ベル・エポックでもう一度』(21)でセザール賞主演女優賞にノミネートされたドリヤ・ティリエが並ぶ。そしてイダは自身もダンサーとしても活躍し『バルバラ~セーヌの黒いバラ~』(18)でセザール賞主演女優賞を受賞したジャンヌ・バリバールが演じる。また、ミシアの弟でラヴェルを温かく支え続けるシパに、『ダリダ~あまい囁き~』(18)のヴァンサン・ペレーズが扮している。
また、本作は音楽にも要注目だ。ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による「ボレロ」に加え、「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「道化師の朝の歌」などの名曲を、ヨーロッパを代表するピアニストの一人であるアレクサンドル・タローが披露。ラヴェルのいまなお輝く多彩な音楽が観る者を魅了するだけでなく、タローは出演もはたした。さらに、もとパリ・オペラ座のエトワール、フランソワ・アリュが、生命力が爆発するような跳躍で踊るエンディングの「ボレロ」も見どころだ。
誰もが知る名曲の誕生秘話とダイナミズムをぜひとも映画館で体験して欲しい。
文/サンクレイオ翼