「孤独にならないで」SABU監督とイ・ジフンが共鳴する『アンダー・ユア・ベッド』のメッセージ
初恋の女性が夫の暴力に苦しんでいたことを知り、ストーカーになってまで彼女を守ろうとする男性・ジフンの姿を描いた映画『アンダー・ユア・ベッド』(公開中)。2019年に高良健吾主演で映画化された大石圭の同名小説が、韓国で再び映画化された。メガホンをとったのは『うさぎドロップ』(12)、『砕ける散るところを見せてあげる』(21)など個性的な作風で様々な作品を送り出してきたSABU。主演をドラマ「新米史官ク・ヘリョン」などで知られるイ・ジフンが務めている。本作で初めて顔合わせし、タッグを組んだSABU監督とイ・ジフンに撮影現場での裏話や見どころについて聞いた。
「ある意味チャンスだと思って韓国で撮ることに決めました」(SABU)
――SABU監督は本作で韓国映画界に初めて進出したわけですが、韓国のロケ地でスタッフ、キャストと仕事をするうえで、不安やブレッシャーはなかったのですか?
SABU「正直なことを言えば、最初に脚本をいただいた時は少し戸惑ったんです。内容的にDVシーンや性描写が今の時代とちょっと合っていない気がして。ただ、僕はいつも同じような作品を作り続けるのは嫌で、できるだけ仕事の環境を変えていろんなことに挑んでみたいと思っています。だから、今回のことはある意味チャンスだと思って韓国で撮ることに決めました」
――撮影の時期は冬で、とても寒かったと聞いています。
SABU「そうですね。 しかも気温がマイナス18度まで下がって、足が凍るぐらいでしたよ。京畿道の広州市でロケをして、撮影に使ったのはモデルハウスでした。まだ建設途中で、『撮影までに完成します』と言っていたのに、完成しなくて。玄関のドアなどは美術部に作ってもらったんです(笑)」
イ・ジフン「僕はずっとベッドの下に隠れている役どころだったので助かりました。ベッドの下は暖かくて(笑)」
――ジフンさんは日本人の監督との仕事は初めてでしたが、現場に入る前は不安などありましたか?
イ・ジフン「最初はコミュニケーションをうまく取れるかなという心配はあったんですけど、現場には韓国語、日本語の両方喋れる通訳さんもいたので、言葉の心配はまったく感じませんでした。それよりも、SABU監督がちょっと強面なので、心配だったんです(笑)。でも、いざ撮影に入るとイメージと全然違ってすごく温かい方で、監督はまるで僕を息子のような感じでいろいろと教えて下さいました。現場もすごく和やかに進んでいったんですよ」
――SABU監督はイ・ジフンさんに対して、どう感じていたんですか?
SABU 「ちょうど、ジフン君は映画の撮影と舞台が重なっていて。それで、僕は舞台を見に行ったんです。演じているのが、すごくコミカルな役どころだったので、それを引きずったまま、こちらの現場に来られても困るなあと、少し心配していたんですけど。さすがプロで、ちゃんと切り替えて現場に臨んでくれましたね」
――イ・ジフンさん自身はどうでしたか?それに精神的にも追い込まれる役どころだったと思うのですが、演じるに当たって、どんな気持ちで挑んだのですか?
イ・ジフン「すごく難しい作品で、難しい役でした。実際、このキャラクターをどう演じればいいのか、撮影の中盤まで来てもうまくつかめなくて、すごくプレッシャーも感じていました。でも、監督が『ジフン、 何かをしようとしなくてもいい、その場で自分が感じているものだけを表現すればいい。プレッシャーを感じなくてもいい』とおっしゃってくれたので、そこからは役に集中して演技に入り込んでいたら、いつの間にかに撮影が終わっていました。本当に監督の言葉のおかげで楽になりましたね」