黒沢清監督や柴咲コウの過去作をもっと観たくなる『蛇の道』など週末観るならこの3本!

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黒沢清監督や柴咲コウの過去作をもっと観たくなる『蛇の道』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、黒沢清監督が自身の作品をセルフリメイクしたリベンジ・サスペンス、孤独な少女と子どもにしか見えない不思議な存在の物語、“Hurray!“初の劇場アニメーションの、バラエティに富んだ3本。

鮮やか過ぎる衝撃のクライマックスまで突き進む…『蛇の道』(公開中)

【写真を見る】柴咲コウを主演に迎え、フランスを舞台に移しセルフリメイクした(『蛇の道』)
【写真を見る】柴咲コウを主演に迎え、フランスを舞台に移しセルフリメイクした(『蛇の道』)[c] 2024 CINÉFRANCE STUDIOS ‒ KADOKAWA CORPORATION ‒ TARANTULA

パリで働く日本人の心療内科医、小夜子は、8歳の愛娘を何者かに殺された患者=アルベールの犯人探しに協力。事件に絡んだと思しき元財団の関係者を大きな袋に入れて拉致すると、倉庫のような薄暗い隠れ家に監禁するが…。そんな怒涛の展開から始まる『蛇の道』は、『岸辺の旅』(15)、『スパイの妻 劇場版』(20)などの黒沢清監督が1998年の同名の自作をフランスを舞台にセルフリメイクしたリベンジ・サスペンス。

監督自ら「この秀逸で面白い復讐劇を一部のファンの鑑賞だけに終わらせるのは勿体ない」と公言している本作は、確かに冒頭のシーンから目が離せない。すべての舵を取っているのは誰なのか?小夜子はなぜアルベールの復讐に協力するのか?そして、いちばん悪い奴はいったい…?その行方が全編パリの薄暗い光のなかで緊張感たっぷりに描かれ、鮮やか過ぎる衝撃のクライマックスまで突き進む。小夜子を柴咲コウが演じ、小夜子の患者役と夫役で西島秀俊、青木崇高が共演しているのも話題だが、柴咲や黒沢清監督のことを知らない若い映画ファンも多いに違いない。でも、そういう人たちにこそ観て欲しい。観れば、映画の本当の面白さを知って、黒沢監督や柴咲の過去作をもっと観たくなるはずだから。(映画ライター・イソガイマサト)

愛に包まれ深い感動に浸らされてしまう…『ブルー きみは大丈夫』(公開中)

子どもだけが見える“空想の友だち”と少女の交流を描く『ブルー きみは大丈夫』
子どもだけが見える“空想の友だち”と少女の交流を描く『ブルー きみは大丈夫』[c]2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

まさか、こんな遊び心にあふれた心温まる可愛い映画を、「クワイエット・プレイス」のジョン・クラシンスキーが撮るとは!かつての親友に忘れられ、存在消滅の危機に瀕した多数の“イマジナリー・フレンド(またの名をエアフレンド)”のため、少女が奔走する冒険ファンタジー。とはいえこの少女、実は子どもにとってこれ以上ない孤独と恐怖に圧し潰されそうな状況にあるというのがミソ。両親にまつわる不安や心配がヒリヒリと底に流れているからこそ、“イマジナリー・フレンド“とのキャッキャ楽しい時間が染みてくる。

しかも驚嘆すべきは子ども映画と侮っていると、疲れた大人こそが日々の頑張りが報われたような、癒されたような、愛に包まれ深い感動に浸らされてしまうこと。トトロみたいな大きくてモフモフのブルーをはじめ、多数登場のイマジナリー・フレンドの豊か過ぎる個性にもワクワク。“なぜ紫色なのにブルー?“という軽い疑問に始まり、途中で「あれ?」と浮かぶ疑問が、色んな伏線になっている構造も上手い。少女役ケイリー・フレミング、隣に住む男ライアン・レイノルズ、少女の祖母フィオナ・ショウ、少女の父に監督自身など、役者もみなステキ!(映画ライター・折田千鶴子)


きっとまた一歩を踏み出せる…『数分間のエールを』(公開中)

モノづくりの楽しさや苦しみを描きだす『数分間のエールを』
モノづくりの楽しさや苦しみを描きだす『数分間のエールを』[c]「数分間のエールを」製作委員会

ヨルシカのMVなどを手がける映像制作チーム“Hurray!”による初の劇場アニメーション。フリー3DCGソフト「Blender」で制作されたことで、アングルや質感など、かえって海外スタジオ制作のようなスタイリッシュさを生んでいる。そこに花江夏樹、内田雄馬、伊藤茉莉也ら実力派が熱のこもった声を当て、キャラクターたちを生き生きと動かしている。

ものづくりの楽しさを知り、MV(ミュージックビデオ)制作に没頭する高校生の主人公と、自分の絵の才能に疑問を感じ挫折を味わう親友。そんな二人の前に、シンガーソングライターになる夢を諦めた英語教員が現れる。主人公はムカつくほどの甘ちゃんだが、きっと最初は誰でもそうだった。主人公に現実を突きつける親友と先生だって、きっとそうだったはず。きれいごとか現実か。胸の奥でくすぶる燃えかすを刺激する、花田十輝の脚本の“エモさ”はさすが。世代や立場、経験によって感じ方はさまざまだろうが、なんだか胸の奥がアツくなった人は、きっとまた一歩を踏み出せるだろう。THE BLUE HEARTSの「人にやさしく」の映像版みたいな。(ライター・榑林史章)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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