ツルハシを顔面に!『血のバレンタイン』は心臓のプレゼント付き【豆魚雷の「遊星からの物欲X」】
洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」のスタッフが、ホラーキャラクター&グッズへのアツい愛を叫ぶ連載「遊星からの物欲X」。第2回は80年代スラッシャーのカルト作『血のバレンタイン』(81)をピックアップ!ガスマスクにツルハシを持った、特異な風貌の殺人鬼“ハリー・ウォーデン”の魅力を語ってもらった。
ガスマスクで顔を隠した、黒ずくめの出で立ちがスタイリッシュ!
みなさんこんにちは、豆魚雷のサムゲタン市川です。1980年代にスラッシャーと呼ばれるジャンルのホラー映画が世界的に流行した時期がありました。スラッシャー=切り裂き魔という名前の通り、刃物を振り回すタイプの殺人鬼が大暴れするような作品群です。なかでも代表的なヒットとなった『ハロウィン』(78)、『13日の金曜日』(80)の登場に沸いた黄金期の真っ只中に公開されたのが、カナダ産の隠れた名作『血のバレンタイン』です。
バレンタイン・デーに炭鉱町で起きた生き埋め事故。しかし唯一の生存者だったハリー・ウォーデンは心身に異常をきたし、「バレンタインを祝うな」という警告と共に殺人事件を引き起こす。それから20年が経ち、人々の記憶からハリーの事件が薄れつつあるなか、バレンタイン・パーティが復活するのに合わせて奇怪な事件が続発する。
本作の推せるポイントは、まずなんと言っても殺人鬼のビジュアルでしょう。つなぎやグローブを身に纏い、ガスマスクで顔を隠した黒ずくめの出で立ちは、正体不明の不気味さを前面に押しだしつつもスタイリッシュさを感じずにはいられません。また、主な凶器として手持ちのツルハシを用いるほか、その場にある道具を活かしながら、心臓入りキャンディボックスなどバリエーション豊かな見せ場を生みだしてくれるサービス精神にも頭が下がります。
若いキャストのほとんどは無名で経験の浅い俳優ばかりでしたが、みなすばらしい演技をしていることも見逃せません。80年代の北米は経済不況に揉まれていたこともあり、主人公らに与えられた炭鉱町の若い労働者階級という設定はかなり現実的なものでした。また、類型的(つまりアメリカ的)なキャラクター像から離そうという拘りが見られ、“太っちょ”なキャラがリーダーシップあふれるポジションに位置しているのもおもしろいところ。
坑道を舞台にした、やけにリアルなロケーションも魅力的です。それもそのはず、坑道のシーンは実際に地下900mの炭鉱で撮影が行われたそうですが、これがまぁ大変。エレベーターの昇降に約15分かかるため、スタッフ全員が移動するのに1時間もの時間を要したのです。しかも数年前まで採掘作業が行われていたためメタンガスが排出されており、爆発を防ぐべく使用された照明器具は一番明るい電球でさえ一般家庭のものよりも小さかったそう。実際坑道のシーンは全体的に暗いわけですが、結果的に画面に高い説得力が生まれていると思います。
国内初Blu-rayには、残酷描写を復活させた「93分アンカット版」を収録
今回なぜ『血のバレンタイン』と取り上げたのかというと、公開から43年の歳月が経った今年の6月21日、2枚組の超・特別版という異様に豪華な仕様で国内初Blu-rayが発売されたからです。初収録となった「93分アンカット版」ではさまざまな残酷描写が復活を遂げており、スラッシャーファンなら感涙ものです。
ほかにも「ゴールデン洋画劇場」版の日本語吹替音声や、音声解説、35周年キャスト同窓会など、10数種類の特典がこれでもかと盛り込まれているので、鑑賞用だけでも数枚買っておいて損はないといえるでしょう。なお、バージョン違いが生まれた事情については、Blu-rayの特製16Pブックレットに収録された山崎圭司さんの解説に詳しく記されていますので、気になる方は是非チェックしてみてください。
1995年創業の「キャラクターショップ」。株式会社Ampusが運営する実店舗(高円寺店)、およびショッピングサイトで洋画やアメコミ、ゲームを中心としたフィギュアなどを始め、「豆魚雷」でしか買えない限定商品やオリジナル商品を多く取り扱っている。
最新情報は公式サイトhttps://mamegyorai.jp/をご確認ください。