旧知の笑福亭鶴瓶と片岡愛之助が対談。『怪盗グルーのミニオン超変身』で“超宿敵”となった感想は?

インタビュー

旧知の笑福亭鶴瓶と片岡愛之助が対談。『怪盗グルーのミニオン超変身』で“超宿敵”となった感想は?

「監督が求めることを、いかに短い時間で把握して体現するかが勝負」(愛之助)

本作ではグルーにそっくりなグルーJr.が登場する
本作ではグルーにそっくりなグルーJr.が登場する[c] Illumination Entertainment and Universal Studios. All Rights Reserved.

――ところで本作は、「グルーJr.が登場する」というのもキーポイントです。鶴瓶さんご自身が子育てされていた当時のことを、懐かしく思い出されることもありますか?

鶴瓶「いや、うちの場合はグルーと違って、ほとんど嫁に任せてましたからね。帰ってきて、ベビーベッドの中にいる子どもを見るたび、どんどん大きくなってた。それこそあの当時は忙しかったのに加えて、付き合いがものすごく多かった。『行こう』って誘われたら、絶対に断れなかったですよ。そこで、顔を売ったっていうんかな。歌舞伎の世界なんかでもそういうとこあるでしょう?」

愛之助「はい。先輩に誘われたら行かないわけにはいきませんもんね」

鶴瓶「それこそ、のりちゃん(十八代目中村勘三郎の本名)となら、なんぼでもいけたっていうか。それで、だいぶ仲良うなったところもあって」

グルーJr.は息子にデレデレなグルーには好意を見せないが…?
グルーJr.は息子にデレデレなグルーには好意を見せないが…?[c] Illumination Entertainment and Universal Studios. All Rights Reserved.

――となると、本作のグルーのように「ジュニアがなかなか懐かない」みたいなお悩みも?

鶴瓶「いや。うちの子は懐かないっちゅうことはなかった。そこは嫁がちゃんとしてくれてましたからね。『お父さんのおかげやで』ってずっと言ってくれてたんで。そういう面ではありがたかったですね。でも、父親参観なんかの時は、ちゃんと予定空けて行きましたよ」

――それこそ、鶴瓶さんが授業参観にいらしたら学校中が大騒ぎになったのでは?

鶴瓶「いやいや、そのころはまだそこまで有名じゃなかったから、そんなこともなかったですけど。『こんな仕事をしてるから父親参観にも来ぇへん』っていうのは嫌じゃないですか」

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【写真を見る】「怪盗グルー」笑福亭鶴瓶と片岡愛之助が対談。古典芸能と声優業、表現方法の違いとは?撮影/野崎航正

――改めて、吹替えをするにあたって、特に意識されていらっしゃることはありますか?

鶴瓶「今回みたいに、アクションシーンの掛け合いも全部一人で吹替えるっていうのは大変やけど、『現場に行って合わす』という意味で言うたら、普段やってることとそれほど違わない。実際には、今日初めてマキシムとグルーがこうしてしゃべってるわけやからね」

愛之助「たしかに、そうですね(笑)。『役に魂を吹き込む』という意味では、歌舞伎の役でも、現代劇でも、今回のように声の仕事であっても、全部同じですよね。ただ唯一違うのは、アニメの吹替えは、声だけで喜怒哀楽をすべて表現しないといけないということ。自分の表情が使えないから、もっとオーバーにやったほうがいいのかなって、迷いが出てしまうんです」

鶴瓶「しゃべる時に別にグルーの顔してるわけじゃないからね。オレ、あの顔好きじゃないねん!(笑)」

愛之助「えっ!?そうなんですか?」

鶴瓶「あんま言うたらアカンけども。だってアイツの鼻おかしいし。なんやねん!あれ(笑)」

愛之助「アハハハ(笑)」

グルーの鼻、よく見るとちょっと変…?
グルーの鼻、よく見るとちょっと変…?[c] Illumination Entertainment and Universal Studios. All Rights Reserved.

――お二人とも古典芸能に携わられていますが、映像作品の違いを挙げるとしたら?

愛之助「普段、僕らがやっている古典歌舞伎には演出家がいません。いわゆる主役を張る役者が、演出家も兼ねるんですよ。舞台稽古も一回しかやらないので、『ここはもうちょっと明るくして』とか、『この場面はもうちょっと前に出て』みたいに、とにかく全体を見渡して。あらゆるチェックをしてから最後の最後にようやく自分の芝居を確認することになる。でも、映像や吹替版の場合は、監督がいらっしゃるわけじゃないですか。つまり、監督が求めていることを、いかに短い時間で把握して体現するかっていうことが勝負になるわけですよね」

鶴瓶「それはオレも同じよ。落語や生の舞台とは違って、映像は監督のもんやからね。監督がどんな表現をしたいのか。『この監督は今回どういう映画を撮りたいのか』っていうことを、まずは把握しとかんと」

愛之助「なんと。鶴瓶さんのようなベテランの方でも、そんな風に思われているんですか!」

鶴瓶「いや、だって、自分のアタマで考えるよりそっちのほうがラクやんか(笑)。結局、最後は監督が自分で編集しはるわけやから」

愛之助「はい。今回の吹替版も含めて、映像はすべて監督のものなんですよね」

新たに吹き込まれた魂を感じるのも、吹替版の楽しみ
新たに吹き込まれた魂を感じるのも、吹替版の楽しみ[c] Illumination Entertainment and Universal Studios. All Rights Reserved.


――同じ「魂を吹き込む」仕事にしても、歌舞伎や落語とは関わり方や立ち位置が異なる、と。

愛之助「そうです。だから、吹替えで役作りをするにしても僕が演じたマキシムなんかは、今回初登場のキャラじゃないですか。マキシムっていうのはどのぐらいの勢いで、どれぐらいのトーンでしゃべる人なのかっていうのを、最初に監督と相談しながらあれこれ調整して。そのうえで『これで行きましょう!』って固まったら、そこでズバッと行けばいい話なので。やっぱり一番大事なのは、監督との最初のディスカッションですよね。そこに尽きますね」

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