この結末は希望か絶望か。ソン・ジュンギの新境地&ホン・サビン、キム・ヒョンソの存在が光る『このろくでもない世界で』の見どころ - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
この結末は希望か絶望か。ソン・ジュンギの新境地&ホン・サビン、キム・ヒョンソの存在が光る『このろくでもない世界で』の見どころ

イベント

この結末は希望か絶望か。ソン・ジュンギの新境地&ホン・サビン、キム・ヒョンソの存在が光る『このろくでもない世界で』の見どころ

それぞれの解釈を出し合い、意味を探りたくなる映画

 家族、愛、様々な関係と感情が渦巻く物語
家族、愛、様々な関係と感情が渦巻く物語[c] 2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

後半のトークでは、複層的な本作のストーリーに踏み込んだ。様々な愛のかたち、人間関係が絡み合う物語のため、観客からの感想や分析も、いろいろなものが出てきそうだと語った2人。ソン・ジュンギ演じる地元犯罪組織のリーダーのチゴン、チョン・ジェグァン演じるチゴンの手下のスンム、チゴンから「俺はお前のヒョン(兄貴)だ。ここを家だと思え。お前の居場所だ」と言われて加わるヨンギュの関係性が魅力だが、ソン・ジュンギのインタビューでは、ある意味“三角関係”と呼べる、というコメントも出ていたと明かした。

チョン・ジェグァン演じるスンムはヨンギュとチゴンの関係をよく思っていない
チョン・ジェグァン演じるスンムはヨンギュとチゴンの関係をよく思っていない[c] 2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

渥美は、チゴンがまるで家族と過ごす家づくりをするようにDIYをしていることなどに触れ、チゴンはヨンギュと家族の絆を結びたかったのではと予想した。しかし、暴力的で酒乱の父を憎み、お酒を一滴も口にしなかったチゴンが、ヨンギュとの殴り合いの後にお酒を口にしてしまう。そんなチゴンの哀しみや心情を独自に分析すると、観客が大きく頷いていたのが印象的だった。

 ソン・ジュンギが新たな魅力を発揮!
ソン・ジュンギが新たな魅力を発揮![c] 2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

さらに、チゴンが家族を作りたいという想いと同時に、死に場所を探していたとも指摘。そこから本作の英題『HOPELESS』であることに触れ、「韓国のタイトルは『ファラン』(和欄、オランダ)で、ヨンギュが憧れている場所の名前。これは“HOPE”を意味します。監督のインタビューでは絶望と希望が背中合わせとなり、2人は鏡として話していた。そして鏡を突き破った、と語っていました」と明かした渥美。さらに、チゴンが作ったケースの中身の意味についても渥美流解釈を添えると、観客の多くが「なるほど!」と声に出す場面も。あくまで自身の見解とした渥美は「(渥美流解釈に対し)いやいや、違う。そういう意見もあると思います。でもそういう意見こそ聞きたいです。いろいろな見方ができる映画です」と何度も観て分析し、意味を探りたくなる映画だとしていた。

もがけばもがくほど深みにはまる“ろくでもない世界”で、傷だらけの魂が響き合った彼らが行き着く運命、それは希望なのか、絶望なのか。ソン・ジュンギの新境地、ホン・サビンやキム・ヒョンソのフレッシュな魅力は、映画館の大きなスクリーンで浴びるのがおすすめだ。

取材・文/タナカシノブ


関連作品