ついに2人の歯車が動きだす…『このろくでもない世界で』手作りチゲで契りを交わした夜を映す本編映像
第76回カンヌ国際映画祭&第28回釜山国際映画祭に公式出品され、百想芸術大賞で4部門ノミネート、キム・ヒョンソが“新人演技賞“に輝いた『このろくでもない世界で』(公開中)。このたび、盃の代わりに手作りチゲを貪る少年と裏社会の男の姿を捉えた本編映像が解禁となった。
暴力がはびこる地方の町で、継父のDVと貧困にあえぐ18歳の少年ヨンギュ(ホン・サビン)と、彼の絶望漂う瞳にかつての自分を重ねた裏社会の男チゴン(ソン・ジュンギ)。傷だらけの2人が交錯した時、彼らの運命は思わぬ方向へ猛スピードで走りだしていく。ヨンギュ役に扮したのは映画初主演のホン・サビン、ヨンギュの義妹、ハヤン役に同じく新人のヒョンソ。そして監督を長編デビュー作のキム・チャンフンが務め、ソン・ジュンギが犯罪組織のリーダー、チゴンを演じる。
今回解禁されたのは、チゴンがヨンギュに手料理を振る舞い、裏社会での生き方を教えていく、彼らにとっての盃を交わしたような一夜の本編映像。映像は、普段は人を傷つけているであろうナイフを用い、手慣れた手つきで魚を捌くチゴンのシーンから始まる。手持ち無沙汰なヨンギュは、飲み物を用意しようと冷蔵庫から水を取り出すも思いとどまり、酒の瓶を手にする。チゴンから、「俺は飲まない。奴らの酒だ。飲んでもいいぞ」と言われると、そっと酒を元に戻すヨンギュ。チゴンが作ってくれたのはメウンタンという韓国ではポピュラーな魚のチゲだった。向かい合った2人は、同じ鍋を突き始める。
無言で食べ進めていた2人だったが、ふとチゴンがヨンギュのキャップを取り「顔の傷は使い物になる、教えてやるよ」と呟く。これまで自分を顧みてくれる大人がいなかったヨンギュは、初めて自分を気にかけてくれるチゴンの言葉に感動し、目を潤ませる。育ちの悪いチゴンは、手掴みで魚を食べ始めると、それを見たヨンギュは、意を決したように彼を真似て魚を手で掴む。2人は見つめ合いながら、無言で魚を食べて進めていく。初めて2人の心が触れ合ったこの夜に、ヨンギュは裏社会でチゴンに着いて生きていく覚悟を固めるという非常に重要なシーンとなっている。
このシーンについて、チャンフン監督は「メウンタンはもちろん手づかみで食べる料理ではなく、ヨンギュがこれからチゴンの住む世界へ入って真似をしていく、という覚悟を表すシーンにしたかった」と明かし、ジュンギも「ヨンギュとチゴンが共感という感情を構築する重要な瞬間だ。夜中の2時ごろから一晩中チゲを食べたが、終わるころには魚の生臭い匂いがした(笑)苦労した分、いいシーンが撮れたようでやり甲斐があった」と満足げに語っている。
裏社会で生きるチゴンに憧れ、裏社会で生きる決心を固めたヨンギュの行き着く先とは?ぜひ劇場で見届けてほしい。
文/サンクレイオ翼