ヨルゴス・ランティモス最新作『憐れみの3章』監督と再タッグを組む実力派キャストに迫る
ヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンのタッグが贈る『憐れみの3章』(9月27日公開)。今回、ランティモスワールドを彩るハリウッドの実力者たちをピックアップし、その魅力を紐解いていく。
第80回ヴェネチア国際映画祭“金獅子賞“を受賞し、第96回アカデミー賞ではストーンが2度目の主演女優賞を受賞のほか合計4部門受賞をはたした『哀れなるものたち』(23)に続き、再びランティモス監督とストーンがタッグを組む本作。本作では、ストーンのみならず『哀れなるものたち』からウィレム・デフォー、マーガレット・クアリーが、そして『女王陛下のお気に入り』(18)からジョー・アルウィンが再びランティモス監督のもとへと集結した。さらに、ジェシー・プレモンス、ホン・チャウ、ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファーといった、実力者キャストが出演する。共同脚本には『籠の中の乙女』(09)、『ロブスター』(15)、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(17)のエフティミス・フィリップが名を連ね、ランティモス監督とともに、ユーモラスでありながらも時に不穏で予想不可能な独創的世界を描きだす。
名優から注目の新星まで、ランティモス監督の唯一無二の才能に魅了された折り紙つきの表現者たちが集まる本作で、彼らはこれまでにない、3つの物語で別々のキャラクターを演じるという最高難度のチャレンジに挑み、そして新たな新境地を切り拓いた。そんな彼らが口をそろえて語るのは、ランティモス監督への絶大な信頼だ。
『哀れなるものたち』から続投するデフォーが演じるのは、レイモンド、ジョージ、オミの3役だ。2つとない個性と確かな実力を兼ね揃え、4度のアカデミー賞ノミネートを経験し、名だたるタイトルをはじめ150本以上の映画に出演する、現代映画史において伝説的なキャリアを持つデフォー。いまなお芸術的探究心を熱く燃やすデフォーは、本作でも存分に発揮されるランティモス監督のみが持つ唯一無二の才能を賞賛。「この物語はヨルゴスの独特な世界であり、彼には私たちが普段見ることのできないものを見ているように思わせる才能があります。そしてそこには魔法が存在します」と、愛と支配をめぐる大胆不敵な3つの物語を生みだしたランティモス監督の魅力を明かしている。
デフォーは、第1章でロバート(プレモンス)をあらゆる意味で支配し、コントロールしようとする上司のレイモンドを、第2章で海難事故から奇跡の生還をはたしたリズ(ストーン)の父を、そして第3章では、エミリー(ストーン)、アンドリュー(プレモンス)が帰依するカルト集団のリーダーであるオミを演じている。
同じく『哀れなるものたち』から続投するクアリーは、ヴィヴィアン、マーサ、双子のルースとレベッカを演じる。まさかの4役を演じ分けた彼女に対し、ランティモス監督は、「私たちは何年も友人であり、次になにをやりたいか話し合っていて、この映画がその機会を与えてくれました。彼女は素晴らしい女優で、とても具体的なアプローチができます」とその実力を絶賛。クアリー自身も、「この現場の雰囲気で珍しいことのひとつは、他の作品では自分の役が終わるとみな帰ってしまうものなのですが、この現場では全員が残っているのです。作品へのリスペクトがあり、みんなその場に残りたいのです。それがこの映画を他の映画とは違うものにしているのです」とランティモス監督が描く独創的世界に続けて出演できた喜びを明かしている。
『女王陛下のお気に入り』以来のランティモス監督とのタッグとなるアルウィンは、収集品鑑定人1、ジェリー、ジョセフを演じる。『女王陛下のお気に入り』で「彼の作る世界は突拍子もないけどすばらしい」とランティモス監督を讃えたアルウィンは、再び監督ならではの世界観へ身を投じるにあたり、「脚本を読んで、彼の初期の作品に戻ったような感じがしました。より現代的な世界で、彼は現実と戯れているのです。それは現実であり、かつ現実でないのです」と監督の感性に触れる喜びを口にしている。
豪華キャストを魅了し続けるランティモス監督。お馴染みのキャストと再びタッグを組んで作りだす独創的世界観で贈る3つのストーリーに期待が高まる。
文/鈴木レイヤ