「エイリアン」最新作を託されたフェデ・アルバレスが明かす、「同じことは全然言わなかった」歴代監督たちのアドバイスとは?

インタビュー

「エイリアン」最新作を託されたフェデ・アルバレスが明かす、「同じことは全然言わなかった」歴代監督たちのアドバイスとは?

異常な速さで進化する恐ろしき生命体、“エイリアン”との壮絶な死闘を描いた名作映画『エイリアン』(79)。公開から45年、シリーズの最新作にして原点である第1作目の“その後”を描く『エイリアン:ロムルス』が、いよいよ9月6日(金)に公開となる。最新作の監督に抜擢されたのは、超人的な聴覚を持つ盲目の老人が、自身の家に強盗に入った若者たちを恐怖のどん底に突き落とす「ドント・ブリーズ」シリーズをヒットさせた鬼才、フェデ・アルバレス。宇宙という究極の密室のなかで繰り広げられるサバイバル・スリラーを描くにあたり、遺憾なくその手腕を発揮しているアルバレス監督は、「エイリアン」シリーズの大ファンだと公言している。本作を手掛けるにあたってのこだわりや、製作として参加している“エイリアンの創造主”、リドリー・スコットからもらったアドバイス、ファン要チェックのイースターエッグのヒントまで語るインタビューをお届けする。

行き場を失った若者たちが宇宙ステーション“ロムルス”に足を踏み入れたことから始まる、極限のサバイバル・スリラー『エイリアン:ロムルス』
行き場を失った若者たちが宇宙ステーション“ロムルス”に足を踏み入れたことから始まる、極限のサバイバル・スリラー『エイリアン:ロムルス』[c]2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

人生の行き場を失った6人の若者たちは、生きる希望を求めて宇宙ステーション“ロムルス”に足を踏み入れた。しかしそこで彼らを待ち受けていたのは、寄生した人間の胸を突き破り、異常な速さで進化する“エイリアン”。彼らは極限状態のなかで逃げ切ることができるのか。

「リドリーからは『絶対に観客を見くびってはいけない、過小評価は厳禁だ』と言われていました」

――“ロムルス”はローマの建国神話に登場する双子の兄弟の兄の名前です。それをサブタイトルに選んだ理由は?

「ロムルスとレムスは神話に登場する双子の兄弟。最終的にはロムレスはレムスを殺してしまうんだけど、本作の登場人物の多くは、文字どおり兄弟姉妹だったり、あるいはそう言ってもいいような関係性を築いている。キャラクターに関して言えば、そういう彼らの兄弟愛について語っているので、この名前を選んだわけです」

『エイリアン:ロムルス』は9月6日(金)公開
『エイリアン:ロムルス』は9月6日(金)公開[c]2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――プロデューサーのリドリー・スコットだけではなく、『エイリアン2』のジェームズ・キャメロンからもアドバイスをもらったそうですね。それぞれのアドバイスでもっとも有効だったのは?

「おもしろかったのは、彼らが異なるアングルでそれぞれの作品にアプローチしていたことでした。2人とも同じ『エイリアン』を手掛けているにもかかわらず、同じことは全然言わなかった。共に映画を極めた巨匠だけれど、映画作りに関する考え方はかなり違うんです。まずリドリー。プロジェクトが始まった当初から言われて心に留めていたのは、脚本に関することが多く『絶対に観客を見くびってはいけない、過小評価は厳禁だ』と言われていました。これは、特にジャンル映画を作っている時に重要なこと。わかりやすくするために物事をシンプルにしたり、観客が理解できないだろうと決めつけて説明過多にしたり、何度も繰り返したりする傾向があるからです。でも、リドリーは『決してわかりやすくするのではなく、常により高みを目指すべきだ』と言い続けて、僕の背中を押してくれたんです。

【写真を見る】シリーズ生みの親、リドリー・スコット。『エイリアン:ロムルス』鑑賞後に「Fuckin’ Great!」と絶賛!
【写真を見る】シリーズ生みの親、リドリー・スコット。『エイリアン:ロムルス』鑑賞後に「Fuckin’ Great!」と絶賛![c]Everett Collection/AFLO

一方、ジム(ジェームズ・キャメロン)のほうは、こういう映画がいかにハンドメイドであるべきかという話をしてくれました。僕はずっと『エイリアン2』のバジェットは大きかったんだろうと思っていましたが、今回、ジムをはじめいろんな関係者と話して、とても低予算(1986年製作当時、1850万ドルだったと言われている)で作られたことを知りました。製作費がクリエイターの野心に追いついていけない場合、監督は作品のあらゆるレベルで関わらなければいけないということを理解させてくれたんです。ジム曰く、常に現場にいることはもちろん、パペットを操り、時には必要なものも作る。監督として持っているものすべてをつぎ込み、その姿勢と背中でみんなを引っ張っていく。僕は今回、そんなジムの言葉どおり映画作りの細部にまで深くかかわった。そして、自分の手で作っていった。本作も実際の製作費以上に大きく見えるとうれしいですね」

「『エイリアン2』のエフェクト担当が『当時、この技術があれば!』って悔しがっていましたよ(笑)」

――デジタルだけに頼ることなく旧来のSFXやVFXを使っているそうですね。しかも、それを担当しているのは『エイリアン2』のスタン・ウィンストン・スタジオを継いだレガシー・エフェクツであり、『エイリアン3』などを手掛けたアマルガメイテッド・ダイナミクスの後継者であるスタジオ・ギリスです。プラクティカルな技術や、これらの工房にこだわった理由を教えてください。

最終形態、ゼノモーフが襲い掛かる!
最終形態、ゼノモーフが襲い掛かる![c]2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「このフランチャイズきっての傑作である『エイリアン』と『エイリアン2』のようなルックやフィーリングを持たせるためには、その2本の哲学を貫きつつ、同じような技術を使うべきだと考えた結果です。2本ともデジタル以前の作品だから当然、エフェクトはプラクティカルでデジタルはナシ。でも、それを徹頭徹尾守ったわけじゃない。アニマトロニクスひとつをとっても2024年版の技術が使われているんです。つまり、実際に作れるもの、建てられるものは物理的に作り、テクノロジー自体は現在の最新のものを使っている。『エイリアン2』のエフェクト担当がレガシー・エフェクツ社のクルーとしてシリーズに帰ってきてくれたのですが、『当時、この技術があれば!』って悔しがっていましたよ(笑)」

――2作には絡んでいない、「スター・ウォーズ」や「ロボコップ」シリーズ、『ジュラシック・パーク』(93)なども手掛けたフィル・ティペットの工房、ティペット・スタジオを選んだのは?


過去シリーズも踏襲しつつ、最新技術で描きだされるエイリアンの造形に注目
過去シリーズも踏襲しつつ、最新技術で描きだされるエイリアンの造形に注目[c]2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「いうまでもなく、フィルが大好きだからです(笑)。彼のワークショップが本作のストップモーションの一部を手掛けています。プラクティカルなエフェクト好きならみんなフィルの大ファンって決まってるでしょ!(笑)」

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