「エイリアン」最新作を託されたフェデ・アルバレスが明かす、「同じことは全然言わなかった」歴代監督たちのアドバイスとは?

インタビュー

「エイリアン」最新作を託されたフェデ・アルバレスが明かす、「同じことは全然言わなかった」歴代監督たちのアドバイスとは?

「『エイリアン』は『スター・ウォーズ』のダークな双子の片割れのような感じ」

――フッテージなどを観ると『エイリアン』のみならず『ブレードランナー』(82)の雰囲気や影響もあるように感じました。いかがでしょう?

「そうです。なぜなら、避けては通れませんよね?どちらの作品も“リドリー・スコット・ユニバース”に属しているわけで、僕たち多くのファンにとっては2本のユニバースの境界線は曖昧だと思います。例え僕が監督としてオマージュを入れなくても、アートディレクターやセットディレクターが『ブレードランナー』絡みのイースターエッグをたくさん仕込んじゃっているんですよ(笑)」

酸性の血液を持つエイリアンには攻撃も不可能…どう立ち向かうのか?
酸性の血液を持つエイリアンには攻撃も不可能…どう立ち向かうのか?[c]2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――ぜひ、ひとつだけでも教えてくれませんか?

「じゃあ、ひとつだけね(笑)。ほら、『ブレードランナー』にとって重要なアイテムのひとつは“オリガミ”(本編の要所に登場)じゃないですか?これが(宇宙船の)コックピットをはじめ、いろんなところに置かれているんです。探してみてください!」

――なるほど!もうひとつ教えてください。その後を描く物語ということで、『エイリアン』や『エイリアン2』との関連性はあるのでしょうか?

「うーん…それはネタバレになるから言えませんね(笑)。ヒントをひとついうと、最初の『エイリアン』とのつながりはあるかもしれない。それは観てのお楽しみで、公開までネタバレしないようにみんなでがんばって秘密厳守しているところなんですから(笑)。実のところ、観客には最高の映画体験をしてほしいから、情報量は少ないほうが絶対にいい。劇場で本編を観て、オリジナルとつながっている部分に気づいたなら『おお!そう来るか!』と思ってもらえると確信しています。その一方で、オリジナルを観ていない世代がシラけるようなこともないように作っている。そういうバランスはきっちり取ったつもりです」

――1979年から現在まで人気の衰えることのない「エイリアン」シリーズです。その魅力をあなたなりに分析すると?

第1作『エイリアン』(79)のその後を描く『エイリアン:ロムルス』
第1作『エイリアン』(79)のその後を描く『エイリアン:ロムルス』[c]2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「やっぱり世界観の大きさだと思います。“エイリアン・ユニバース”のなかでたくさんの物語を語ることができる。『スター・ウォーズ』のように観客に響くなにかがあるんだと思います。キャラクターだけではなく、誰もが『エイリアン』の世界観に心惹かれ、またあの世界に戻りたいと願ってしまう。僕は、『スター・ウォーズ』が元気な間は『エイリアン』も元気に生き続けると思ってますからね(笑)。というか、そもそも僕は、『エイリアン』は『スター・ウォーズ』のダークなほうの双子の片割れみたいな感じがしているんです。公開時期も、『スター・ウォーズ』(エピソード4)のあと、1年後に『エイリアン』1作目は公開されました。似た美的センスがあるけれど、『スター・ウォーズ』より大人向けでダークな怖いトーン。そして『スター・ウォーズ』にはなかったスリルとホラーがあった。僕に言わせればこの2本はよく似ていて、僕は時々『エイリアン』のことを『スター・ウォーズ』の“ダークサイド”って呼んでるくらいなんですよ(笑)」

――だから、同じように語り継がれているわけですね。

「そう。物語というのは、語るのをやめれば、やがて消えてしまうもの。老いて、死んで、消えて行く。よい物語が、火を囲んで何世代にもわたって語り継がれるように、『エイリアン』や『スター・ウォーズ』もそうしないといけないと思っています。『エイリアン』は、それに値するすばらしい物語であり、クリーチャーも驚くほど秀逸なんですから!でも、クリエイターとして、新しい観客が観たいと思うような新しい技術と新しい物語で語り直さなければいけない時もあると思います。それこそが今回、僕が重要視していたモチベーション。僕を含めたオリジナルが大好きなファンのために、新しい物語として語りたかったんです」

――最後に、完成した映画を観たスコットに「Fuckin’ Great(クソすばらしい)」と言われてどう思いました?

「ほっとしました(笑)。リドリーはとても正直な人で、思ったとおりのことを言う。もうなにかを気遣うような年齢じゃないし、そもそもとても正直な人です。これまで自分が(プロデューサーとして)関わってきた過去の作品に対しても、かなり批判的だとリドリー自身が言っていたので最初の試写ではむちゃくちゃ緊張したんです。でも、『Fuckin’ Great!』と言ってくれた(笑)。作品そのものも、作品がもつエネルギーも気に入ってくれたのが伝わってくるようなリアクションを見せてくれたんです。製作のプロセスにおいてもリドリーは大いに助けてくれて、僕を信じてくれた。こんな幸せなことはないし、監督冥利につきます。


だってほら、誰にだって仕事において敬愛する巨匠がいるでしょう?いつか5分だけでも話したり、質問できたらいいなと夢見るような存在。リドリーは僕にとってまさにそれだった。彼の言葉は(ギリシャ神話に登場する)デルフォイの神託のオラクル(神の言葉)のようなものだったんです(笑)。僕は、映画について、脚本について、編集について、彼の言葉にはすべて耳を傾けました。時々判らないこともありましたが、それは僕がまだ若造で経験不足だから。いつかきっとわかる日が来るだろうと信じて、彼の言葉のすべてを常に携帯してたメモ帳に書き留めました。いまでも何度も読み返しています。本当にスペシャルですばらしい体験。本当に『Fuckin’ Great!』です(笑)」

取材・文/渡辺麻紀

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