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長澤まさみ&三谷幸喜監督が語る!長年培った2人の“すてきで不思議な関係性”と『スオミの話をしよう』の裏側

インタビュー

長澤まさみ&三谷幸喜監督が語る!長年培った2人の“すてきで不思議な関係性”と『スオミの話をしよう』の裏側

「“演じる”を超えた領域に達する感覚をイメージして集中しました」(長澤)

――「舞台のような映画を作りたい」ということで1シーン1カットの長回しの撮影を行ったとのこと。長回しの威力を発揮したシーンを教えてください。

スオミを知る男たちが大集合
スオミを知る男たちが大集合[c]2024「スオミの話をしよう」製作委員会

三谷「1つは序盤で彌十郎さんが部屋の中をウロウロするシーン。スイカを食べたり、マッサージチェアで横になったり。寒川という人物を紹介すると同時に、あの部屋を紹介するイメージでした。彌十郎さんは撮影初日で、めちゃくちゃ緊張されていて。スイカを食べても口が渇いてタネが張りついちゃって…」

長澤「水分とってるのに(笑)」

三谷「そうなの(笑)。大変そうだったし、長かったけれど、僕はすごく楽しかったです。あともう1つはやっぱりラスト。長澤さんと5人の夫が対峙するシーンです。カットを割りながらやろうかなとも思ったけれど、リハーサルでの長澤さんの芝居を見て、これは割らずにいったほうが絶対おもしろいと思って。すぐにカメラマンに相談して方針を変えました。一番集中しなきゃいけない大変なシーンで、撮影が終わった瞬間、自然とみんなが立ち上がって『よかったよ!』って長澤さんに拍手していて。緊迫感のあるシーンになりました」

長澤「プレッシャーを感じながらもとにかくやるしかない!という思いでした。三谷さんから『舞台が終わるころの熟成されたような芝居を』と言われていたので、舞台の千秋楽近くで言葉が自動的に出てくる感じ、“演じる”を超えた領域に達する感覚をイメージして集中しました。みんなで集中していたので終わった瞬間には、もうクランクアップみたいな空気が流れていました。まだ現場は続くよーって感じでしたが(笑)」

スオミはいったいどこに…
スオミはいったいどこに…[c]2024「スオミの話をしよう」製作委員会

――グッと見入ってしまうシーンでした。

三谷・長澤「ありがとうございます!」

「おもしろいし、明るいし、楽しいけれど、可哀想なのってすごくいい」(三谷)

「一生質問できる!」三谷幸喜演技学校の生徒の気分と語る長澤まさみ
「一生質問できる!」三谷幸喜演技学校の生徒の気分と語る長澤まさみ撮影/河内彩

――今回ガッツリ映画でタッグを組み、新たに発見したお互いの魅力、今後一緒にやってみたいことの構想などはありますか?

三谷「1回仕事をしたら、その仕事のなかで新しい発見があって、それを基にまた一つの物語を作りたくなる。そんなインスパイアさせてくれる俳優さんが僕にとっての理想だとすると、やっぱり長澤さんはそういう方。今回もいろいろと吸収させていただきました。新しい発見については、前々からちょっとその雰囲気はあったんですけど、長澤さんには“ペーソス(もの悲しい情緒)”がある。なんか可哀想なんですよ、こう見えて(笑)。たまにものすごく可哀想な瞬間がある、なんか恵まれてない感じがするんですよね」

長澤「アハハハ!」

三谷「おもしろいし、明るいし、楽しいけれど、可哀想なのってすごくいい。100パーセントの光じゃなくて、ちょっと暗さがある。その暗さがあるから明るさが余計に際立つ。そんなペーソスを最大限に活かした役はなにかなって映画を撮っている最中も考えていました。『家なき子』とかそういう感じ?この歳で『家なき子』って、ちょっと可哀想すぎるかな?」

――リアルに可哀想ってなっちゃうかもです。

三谷「ですよね。でも、ちょっと考えたいと思います!」

――楽しみです!長澤さんの発見は?

長澤「三谷さんはいつも課題を見つけてくれます。自分のなかで悩んでいることを言い当てられることも多いので、俳優として磨いていかなければいけないと自分なりに考えている部分を共有できる方。実際に共有させてもらえているので、終わりはないなって思っています」

――すてきな関係ですね。

長澤「ありがたいです。ありがとうございます(ペコリ)」

三谷「こちらこそ、ありがとうございます。(長澤さんとは芝居について話したりもするので)『先生』って言われたりしもするけれど、時には『同級生』って言う時もありますよね」

長澤「ありますね(笑)」


――貴重ですてきな関係です。では最後に、映画をこれから観る方、そしてもう一度観よう!というリピーターに向けてのおすすめポイントをお願いします。

注目のミュージカルシーン!
注目のミュージカルシーン![c]2024「スオミの話をしよう」製作委員会

長澤「スオミという女性がいろいろな顔を持っていることがおもしろいポイントの一つですが、この映画はスオミという一人の女性を巡る元夫たちの物語でもあります。もうちょっとしっかりしろ!なんて思いながら、かわいい夫たちを楽しんで観てもらいたいです。最後の最後まで目が離せない映画です。頑張ったミュージカルシーンもぜひ観ていただきたいです!」

三谷「コメディではあるけれど、爆発的なギャグがあるというものではない。すごく愛おしい男たちの大騒ぎと、すごく魅力的な長澤さんを観てほしいです。かつ最後の最後まで真相が見えない作りのミステリーになっています。観返していただくことで、それぞれの伏線、セリフの意味などがより楽しめます。いろいろな要素をちりばめているので、何度も観て楽しんでください。日本の映画であまり観ないミュージカルシーンも楽しいものに仕上がっています」

長澤「(ミュージカルシーンは)唐突に始まって(笑)」

三谷「必然性もなく始まりますけれど(笑)、歌えて踊れる長澤さんのすばらしさを存分に味わっていただけます。振り付けの再現ではなく、その場で湧き上がってきたなにかで踊っているみたいな感じという発注にも、ちゃんと応えていただいて。本当にすごい女優さんです」

長澤「ミュージカルの大変さを再度実感しました(笑)。撮影中、松坂さんに『すごい汗かいてますね』って言われたけれど、歌って踊ってセリフを言うと汗が吹きでるんです。これはやった人にしかわからない!」

三谷「すごく軽やかにやっていて、汗をかいている感じがしないから、松坂さんもびっくりしたんでしょうね(笑)。ぜひ、この映画で長澤さんのすばらしさを最初から最後までたっぷりと味わってください!」

取材・文/タナカシノブ

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