「ロマンポルノ・RETURNS」に見た、即物的ではない“エロス”

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「ロマンポルノ・RETURNS」に見た、即物的ではない“エロス”

70年代から80年代にかけて1100本以上もの作品が作られ、停滞期の日本映画界を支えるとともに、成人映画の一時代を築いた「日活ロマンポルノ」。アダルトビデオの普及などによって80年代末に終焉を迎えてしまったが、今年2月、「ロマンポルノ・RETURNS」として、22年ぶりに復活する。

ロマンポルノに触れたことがない人の中には、その響きにいかがわしい印象を抱き、敬遠してしまっている人もいるかもしれない。だが、予算や表現上の制限がある中、苦心して作り上げられた作品には傑作も多く、近年では若い世代や女性を中心にファンが増加しているのをご存じだろうか?

確かに“成人映画”であるため、劇中に裸や性交シーンは盛り込まれている。しかし、情念に彩られた男女の濃密な恋愛劇を描く上で避けて通ることはできない“性愛”を真正面から取り扱っているからこそ、キスだけで終わってしまう一般映画よりも自由で力強い表現が生まれるのだ。だからこそ、新たにファンが増え続けているのだろう。

また、ロマンポルノの存在が日本映画界に与えた影響も計り知れない。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』(08)の滝田洋二郎監督をはじめ、現在、第一線で活躍している数多くの監督たちを輩出しているのだ。例として2009年に公開された作品の監督を挙げてみても、『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』(09)の根岸吉太郎監督、『カムイ外伝』(09)崔洋一監督、『わたし出すわ』(09)の森田芳光監督など、そうそうたる面々が、若手時代にロマンポルノでの作品製作を経験していることが分かる。

ちなみに、今回公開される、往年の作品『団地妻 昼下りの情事』の新バージョンを手掛けるのは、『櫻の園』(90)(08)、『12人の優しい日本人』(91)で知られる中原俊監督。繊細な人間描写を得意とする中原監督も、ロマンポルノの洗礼を受けた一人だ。

現在は、アダルトビデオやインターネットの普及によって、より身近で手軽に“エロ”に触れることができる。しかし、即物的な“エロ”のような、軽く、直接的で表面的な描写があふれている時代だからこそ、想像力を喚起する“エロス”の重要性が高まっているのではないだろうか。ぜひこの機会に、大人な映画の世界に触れてみてはいかがだろう。

ちなみに今回の「ロマンポルノ・RETURNS」は、成人映画館ではなく一般のミニシアターでレイトショー上映される。それでも“恥ずかしい”という人は、劇場公開と同時にスカパー!HDによるPPV(ペイ・パー・ビュー)放映も行われるので、家でじっくりと楽しんでみてほしい。【トライワークス】

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