リアルな恐怖を突きつけられる究極の黒沢清ワールド『Cloud クラウド』など週末観るならこの3本!

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リアルな恐怖を突きつけられる究極の黒沢清ワールド『Cloud クラウド』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、黒沢清監督と菅田将暉がタッグを組んだサスペンス・スリラー、『ビートルジュース』(88)の35年後を描くホラーコメディ、ヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンが贈る最新作の、監督のセンスが光る3本。

こんな黒沢清映画を待っていた!…『Cloud クラウド』(公開中)

【写真を見る】転売で稼ぐ主人公、吉井は次第に匿名の集団に追い詰められていく(『Cloud クラウド』)
【写真を見る】転売で稼ぐ主人公、吉井は次第に匿名の集団に追い詰められていく(『Cloud クラウド』)[c]2024 「Cloud」 製作委員会

「現在進行形であることが娯楽映画の最低原理」ときっぱり言い切り、「過去の説明は基本的に面白くないから」と回想シーンを忌み嫌う黒沢清監督。最新作『Cloud クラウド』はまさにその言葉通りの構成と語り口を実践しながら、現実社会と地続きの悪夢を描いた、進化し続ける黒沢清ワールドの究極の形と言えるだろう。その世界観は、インターネットの恐怖をいち早く描いた2000年の『回路』と、閉塞した現代を生きる若者たちの行き場のない破壊的な感情に迫った2003年の『アカルイミライ』の延長線上にあるもの。悪びれることなく“転売ヤー”としてコツコツ稼ぐ菅田将暉が演じる主人公の吉井も、明るい未来など夢物語であることを知っている、どこにでもいる現代の青年のひとりに過ぎない。

そこが怖い。本人は効率よく稼ぎたい、無駄のない生き方をしたいと考えているだけで、悪いことをしているという意識は薄いし、他人を陥れようと思っているわけではないのに、その言動の先に思いがけない落とし穴が待ち受けていたりするからだ。このご時世、なにが人の怒りを買うか分からない。ちょっとしたひと言で簡単にキレる輩や成功者への妬みを憎悪へと転換させたり、自分の正義を暴走させる常軌を逸した人たちが現実の社会にも潜んでいるから、吉井が自分にとっての損得だけで無意識にやったことが人の恨みを生み、それが“集団狂気”へとエスカレートしていく展開はとても他人ごととは思えない。その矛先がいつ自分に向けられるか分からないリアルな恐怖を突きつけられて、心臓がずっとバクバクし続けることになる。

なのに、一部の映画ファンだけが喜ぶようなマニアックな犯罪映画に終わっていないのが本作の注目すべきところだ。菅田とともにそれを成立させたのは、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝といった若手の実力派俳優たち。彼らが各々の魅力やオーラを消すことなく、生々しい息遣いと令和の体温で黒沢清ワールドの住人になりきり、狂気を自由に炸裂させているからなのは言うまでもない。最高のフィルムメイカーと俳優としての高いスキルを備えた若きプレイヤーたちの夢の共演が、忍び寄る恐怖をエンタテインメントのフィールドでも耐えうる強度のものにまで押し上げているのだ。いや~、こんな黒沢清映画を待っていた!(映画ライター・イソガイマサト)

キートンのエネルギッシュな演技にも圧倒…『ビートルジュース ビートルジュース』(公開中)

マイケル・キートンがビートルジュースを再び演じる『ビートルジュース ビートルジュース』
マイケル・キートンがビートルジュースを再び演じる『ビートルジュース ビートルジュース』[c] 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

異才ティム・バートン初期代表作の、その後を描いた痛快ホラーコメディ。死者と交信できる力を活かし霊能力者になったリディア(ウィノナ・ライダー)の前に、ふたたび死後の世界お騒がせ者ビートルジュース(マイケル・キートン)が現れる。ビートルジュースは死者の家から人間を追い払うバイオ・エクソシスト、いわば霊界の害虫駆除屋。ただしやることなすことハチャメチャで、行く先々で大騒動を巻き起こす。本作はそんなビートルジュースと元妻のトラブルに、リディアと家族が巻き込まれる物語。

グロくてかわいい霊界キャラやポップな死後の世界など全編バートン・テイスト炸裂だが、目玉はやっぱりビートルジュース。神出鬼没で破壊的、なにをしだすか予測不能なそのキャラは36年の時を経てなお健在。マシンガントークから振付、顔芸まで、オーバー70とは思えないキートンのエネルギッシュな演技にも圧倒された。近年は“いいお話”が多かったバートンが久しぶりに見せたやんちゃさを含め、長編監督作20本目の区切りにふさわしい作品だ。(映画ライター・神武団四郎)


他の映画では絶対に味わえない感覚…『憐れみの3章』(公開中)

“愛と支配”に満ちた人間模様を描きだす『憐れみの3章』
“愛と支配”に満ちた人間模様を描きだす『憐れみの3章』[c]2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『女王陛下のお気に入り』(19)、『哀れなるものたち』(24)と、直近2作がアカデミー賞作品賞にノミネートされ、世界的“巨匠”になった感もあるヨルゴス・ランティモスだが、この新作は彼の原点である、挑発的で奇妙なテイストが近作以上に炸裂。迷宮ワールドに誘われながら、要所ではセンセーショナルな描写に全身が震え、心がざわめきまくる。ある意味、ぶっとんだ怪作に仕上がった。

3つの独立したドラマで構成されるが、メインキャストがそれぞれで別の役を演じているため、「もしかして、これは同一人物?」と錯覚する瞬間も…。これは他の映画では絶対に味わえない感覚だろう。中でも本作で第77回カンヌ国際映画祭男優賞受賞のジェシー・プレモンスは、3つの役でかなり違う外見で登場し、演技のアプローチも変えつつ、芯の部分で共通点を表現するという高難度の芸を披露。俳優に殻を破るチャレンジを与えるのが、ランティモスの才能だと実感できる。上映時間は2時間44分だが、3パートに分かれているので長さを感じさせないのも本作の特色。(映画ライター・斉藤博昭)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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