芸術の秋、6万2千枚の絵画でゴッホの油絵の世界が動きだす!?
「この作品は、100名以上の画家の手描きの絵による映像です」冒頭で流れるこの文言に戸惑い、映画が始まると衝撃と感動を覚える。これは、全編が油絵で動くアニメーション映画なのだ!
「ひまわり」、「夜のカフェテラス」などの名画で世界中を魅了したオランダの印象派フィンセント・ファン・ゴッホ。彼を扱った映画は数あれど、『ゴッホ 最期の手紙』(11月3日公開)は、そのどれとも違う革新的なゴッホ映画である。
物語の舞台はゴッホの自殺から1年後、1891年のヨーロッパ。ゴッホが弟テオに出せずに残っていた手紙を、郵便配達人の息子が届けようとゴッホの知人を尋ね歩き、その死の真相を探るアート・サスペンスだ。スリリングな展開で魅せる謎解き劇は、最後まで飽きさせない。
名画が動く、いままでにないスタイルは気の遠くなるような製作過程を踏んでいる。まず俳優たちがゴッホの絵画を再現したセットやグリーンバッグを背景に演技し、その映像をコマ単位で6万2千450枚のゴッホ風油彩画で上描き、映像を作り直している。この作業のために世界中からオーディションで選ばれた125名の画家が、ゴッホのタッチを習得する特訓を受けたという。その中には日本人画家・古賀陽子氏も選ばれ参加している。
絵の具の質感を力強く見せる情熱的な画風はゴッホそのもので、その世界観を“体感”する新鮮な感覚を与えてくれる。絵画タッチでありながら、登場人物たちの表情や動きが豊かでリアルなのも、製作陣の苦労の賜物だ。
次々に登場するゴッホの名画の数々が、彼の晩年の謎を再構築する試みはまさに圧巻。芸術の秋に、全く新しい珠玉のアート体験を映画館で楽しもう!【トライワークス】
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