1977年のハロウィンが地獄に…最恐ホラー『悪魔と夜ふかし』ケアンズ兄弟が明かす制作の舞台裏

インタビュー

1977年のハロウィンが地獄に…最恐ホラー『悪魔と夜ふかし』ケアンズ兄弟が明かす制作の舞台裏


――日本でもファウンド・フッテージ・ホラーは人気ですが、主題となるのは幽霊、呪い、恨みなどで、カルトや悪魔、洗脳を描く欧米とは明らかな違いがあるように感じられます。

ファウンド・フッテージ・ホラーの世界的な流行と呼応する本作
ファウンド・フッテージ・ホラーの世界的な流行と呼応する本作[c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

キャメロン「作家としては、文化的になにが怖いかみたいなことにはあまりこだわっていません。なによりまず、楽しく説得力のある物語を描きたいと思っています。本作の場合、最初から超常現象を扱うのは決めていたんですが、スラッシャー映画では成立しないなと。こういう作品になるのは自然な成り行きで、だから幽霊や超常現象が出てくることになったんです」

コリン「この10〜20年ほどアメリカのホラーはすごく順調で、最近は『Longlegs』や『Cuckoo』のような変わった作品が登場してきています。オーストラリアもアメリカと似てはいるけれど、予算などの関係で同じことはできないわけです。だから、僕らは自分たちの感性で、自分たちの歴史や文化を背景に、自分たちなりのやり方でつくっているんですが…ただ、ハリウッドのトレンドとはあえて違うことをして、そういうやり方もあるんだってことを示せたら、とは思いますね」

「映画は物語の“魔法”を生かし続けなければいけないと思っています」(コリン)

コリン・ケアンズ監督
コリン・ケアンズ監督[c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

――お2人はもともとミュージシャン志望で、ジャズが好きとのこと。お2人にとって映画における音楽の重要性とは?

コリン「音楽は我々にとってとても重要で、本物だと感じられることがなにより大事です。今回は劇中のバンドをどう見せるかを長い時間をかけて考え抜きました。そして、最高のジャズ・アレンジャーであるロスコー・アーウィンに参加してもらい、サウンド・デザインを映像に同調させ、命を吹き込んでいきました」

キャメロン「バンド演奏は撮影前に録音して、それをカメラマンや各部門の人たちに聴いてもらい、方向性を理解してもらいました。そうやって、より本物らしくすることができたと思っています」

コリン「僕らはミュージシャン志望だった、みたいなことをよくふざけて言うんですけど…」

キャメロン「50人ぐらいの前でプレイしたこともあるからね」

『悪魔と夜ふかし』より
『悪魔と夜ふかし』より[c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

コリン「完全にミュージシャンとして失敗したわけではないというのも、ちょっとした自慢ですね(笑)。それはさておき、映画にとって音楽のもつテンポやリズム、構造は、キャラクターやプロットと同じくらい大事です。僕らのそういった音楽に対する愛が、作品を通して皆さんにも伝わるんじゃないかなと思います」

キャメロン「そして劇伴を担当した作曲家のグレン・リチャーズは、すごくスマートで、良いコラボレーションになったと思っています。オープンで、色んなアイデアをくれるので、編集の時に色々試すことができたんです。彼とはこの作品を含めて3本目。目立つわけではないけど効果的なスコアを見事に作ってくれました」

――動画配信の流行もあり、ながら見、倍速視聴などで映像が手軽に消費できる時代です。このようなカジュアルな視聴方法について、どう思われますか?

『悪魔と夜ふかし』より
『悪魔と夜ふかし』より[c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

コリン「いまはコンテンツが多すぎるがゆえに、簡単に消費されてしまいがち。そのせいで物語のマジックが少し失われてきていますが、映画では特にその魔法を生かし続けなければいけないと思っています。だけど、大量のイメージに我々は圧倒されてしまっている。本来は、人間を掘り下げながら世界観を生みだし、 それを視覚的に反映するようなものをつくっていかなければいけない。“作品”をつくるのが難しい時代なのかもしれませんね。つくれたとしても、短期間だけ配信されてあっという間に観られなくなってしまうこともありますから」

キャメロン「自分で探して、なにかを見つけるのも映画の楽しみですよね。先日、メルボルン映画祭に参加してきたのですが…」

コリン「映画祭のような場も、すごく重要だと改めて思いました。大胆なテーマ、フレッシュな才能や作品を見つけると興奮しますよね。そういった機会やコミュニティがなくなってきているようにも感じますが…。5、6年前に比べたら、コロナ禍を経て映画館に行くことも減っているかもしれないけれど、同時に若い方たちの映画を観たい欲求、つくる欲求も日々すごく感じていて、そういったものにはとても励まされます」

『悪魔と夜ふかし』は公開中!
『悪魔と夜ふかし』は公開中![c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED


取材・文/西川亮

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