北欧ノルウェー発のメランコリック・ホラー『アンデッド/愛しき者の不在』が2025年1月17日(金)より公開されることが決定した
物語の舞台は現代のオスロ。息子を亡くしたばかりのアナ(レナーテ・レインスヴェ)とその父マーラー(ビヨーン・スンクェスト)は悲しみに暮れていた。墓地で微かな音を聞いたマーラーは墓を掘り起こし、埋められていた孫の身体を家に連れて帰る。鬱状態だったアナは生気を取り戻し、人目につかない山荘に親子で隠れ住む。しかし還ってきた最愛の息子は、瞬きや呼吸はするものの、全く言葉を発しない。そんな時、招かれざる訪問者が山荘に現れる。そして同じ頃、別の家族のもとでも、悲劇と歓喜が訪れていた…。
本作は2024年の第40回サンダンス映画祭でサウンドデザイナーが特別審査員賞を受賞、監督のテア・ヴィスタンダルが審査員特別賞にノミネートされたほか、ノルウェーのアカデミー賞と呼ばれるノルウェー国際映画祭のアマンダ賞で4冠6ノミネートに輝いた話題作。これまでMVや短編映画を手がけてきた1989年生まれの新星、ヴィスタンダルの長編デビュー作でもあり、ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭、ヨーテボリ映画祭、リビエラ国際映画祭などで監督賞を受賞している。『マルホランド・ドライブ』(01)に衝撃を受けて映画業界に入ったという彼女は、本作のインスパイア作品として『惑星ソラリス』(72)や『ミツバチのささやき』(73)、黒沢清監督の『CURE』(97)、『エコール』(04)、『SHAME シェイム』(11)などを挙げている。
また、2005年に発表した原作小説の作者であり、脚本をヴィスタンダル監督との共同で手掛けたのがスウェーデンの鬼才と称されるヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。フィクショナルな存在をマイノリティのメタファーとして描いてきた気鋭の作家が、本作ではアンデッド(生ける屍)を登場させ、愛の所在を問いかける。主演を務めるのは、『わたしは最悪。』(21)のレナーテ・レインスヴェ。またレインスヴェと『わたしは最悪。』で共演し、『パーソナル・ショッパー』(16)、『ベルイマン島にて』(21)などでも知られる実力派俳優アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ノルウェー国際映画祭アマンダ賞名誉賞受賞のレジェンド俳優、ビヨーン・スンクェストとベンテ・ボシュンのほか、『幸せなひとりぼっち』(15)のイラン系スウェーデン人俳優バハール・パルスらベテラン勢が脇を固め、生と死の境目を濃密に感じさせる重厚な雰囲気を作りだす。
『アンデッド/愛しき者の不在』は、3つの家族に焦点を当てた日本の怪談的要素のあるストーリーだが、同時にメランコリックかつポエティックで、悲しみと喪失と希望についての物語。抑えられた登場人物の感情や台詞、慎重な計算のもと35mmフィルムで撮影された構図、ゆったりとしたカメラの動き、それらによって内包された美しさと不気味さが滲み出た本作は、やるせなくエモーショナルなラストまで絶え間なく命への問いをたたみかける。
北欧の鬼才と新星監督、期待の若手実力派女優によるアンサンブルをぜひ劇場で!
文/平尾嘉浩