先週末(9月27日から9月29日)の北米興収ランキングは、3週連続でNo. 1の座に君臨していた『ビートルジュース ビートルジュース』(日本公開中)がついに首位から後退。新たにトップに立ったのは、ドリームワークス・アニメーション(DWA)の最新作『野生の島のロズ』(2025年2月7日日本公開)だ。
『ヒックとドラゴン』(10)や『クルードさんちのはじめての冒険』(13)などDWAの人気作を手掛けてきたクリス・サンダース監督がメガホンをとった同作。無人島に漂着した最新型アシストロボットのロズが、大自然のなかで動物たちと出会い、プログラムされていない変化を経験しながら島の危機を乗り越えていく物語で、ロズの声を務めたのは『クワイエット・プレイス:DAY1』(24)のヒットが記憶に新しいルピタ・ニョンゴだ。
初日から3日間の興収は3579万ドルと、まずまずのスタート。DWAの前作にあたる『カンフー・パンダ4 伝説のマスター降臨』のオープニング興収5789万ドルには及ばなかったが、そちらは15年以上続くスタジオの看板シリーズ。続編やスピンオフではない作品に限れば、全世界興収5億ドルを突破しアカデミー賞長編アニメーション賞候補にもなった『ボス・ベイビー』(17)以来の成功が見込めそうだ。
興行的な面もさることながら、なんといっても批評面では“超”が付くほどの大成功を収めている。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は97%。これは歴代のDWA作品では『ヒックとドラゴン』に次ぐ第2位の高スコアであり、観客からの好意的評価の割合も98%と熱狂的な賛辞に包まれている。
トロント国際映画祭でお披露目された時から大絶賛を集め、こうして興行面でも好発進を遂げたとなれば、自ずと第97回アカデミー賞の長編アニメーション賞に向けた一連の賞レースへの期待も高まることだろう。もちろんこの部門をリードしているのはアニメ映画史上歴代No. 1のヒットを樹立しているディズニー&ピクサーの『インサイド・ヘッド2』(日本公開中)。アニメ映画界をリードするディズニーとDWAの一騎打ちになるのか、他に伏兵が現れるのか、大いに楽しみなところだ。
他にも新作タイトルが多数ランクインしているのだが、なにを置いても取り上げなければならないのは6位にランクインした『Megalopolis』であろう。フランシス・フォード・コッポラ監督の13年ぶりの最新作で、監督が40年以上あたためてきたアイデアをついに実現させた壮大なSF叙事詩でもある同作。1億2000万ドルを超える破格の製作費を工面するためにコッポラ監督が所有していたワイナリーの一部を売り払ったことでも話題を集めていたが、お披露目の場となった今年のカンヌ国際映画祭ではまさに賛否両論まっぷたつ。
一部では劇場公開すら難しいとの声もあがっていたが、ライオンズゲート配給のもとでようやく公開。しかし週末3日間の興収は、北米の複数のIMAXでも上映されていながら、わずかに400万ドル。当然製作費の回収はほぼ絶望的。批評面でも壊滅的となっているのだが、おそらくコッポラ監督にとっては興行よりも批評よりも、この作品が完成して公開にこぎつけたことだけで大勝利なのだろう。
文/久保田 和馬