まるで絵画を見てるよう!?『ノルウェイの森』の監督が魅せる圧倒的な映像美
『青いパパイヤの香り』(93)、『夏至』(00)などのベトナムを舞台にした名作で知られるトラン・アン・ユン監督。2010年には村上春樹の「ノルウェイの森」を日本人キャストで映画化し話題を呼んだ彼が、6年ぶりの新作『エタニティ 永遠の花たちへ』(9月30日公開)で、これまでとは異なるアプローチを試みている。
ベトナム出身のユン監督は、ベトナム戦争から逃れるため12歳で家族とフランスに移住した経歴を持つ。そんな彼が育ったフランスが今作の舞台。結婚や誕生、死や別れ、人生のすべての瞬間を散りばめ、命を受け継ぐ3世代の女性たちの輝きが描かれている。
彼女たちを演じるのは『アメリ』(01)のオドレイ・トトゥ、『イングロリアス・バスターズ』(09)のメラニー・ロラン、『アーティスト』(11)のベレニス・ベジョ。ヒロイン役のオドレイは10代から晩年までを見事に演じ分けている。
そんな本作での革新的な試みは、極めて台詞を少なくし、第三者のナレーションと音楽で物語を語るスタイル。演者の存在感と人間性で“エタニティ(永遠)”の本質を表すというチャレンジである。
目を奪われるのは、全編どこを切り取っても絵画になるほどの圧倒的な映像美。花が咲き誇る庭と調度品が並ぶ邸宅で営まれる丁寧な暮らしぶりは、色鮮やかで、幸福感に溢れる美しさ。撮影時、俳優たちが完全にセットの一部になるよう、隅々までコントロールされたという。美学を追求することで知られる監督の耽美な世界観は健在だ。
大家族のゆるぎない愛を描く一大抒情詩は、すべての人の人生とも繋がり、静かな感動を与えてくれる。美麗な映像で語られる世代の移り変りの中に、ユン監督の美学とこだわりを感じてみては?【トライワークス】
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