世界興行収入1,500億円を記録し、第92回アカデミー賞では作品賞や監督賞を含む11部門にノミネートされ、ホアキン・フェニックスが主演男優賞を獲得するなど社会現象を巻き起こした大ヒット作『ジョーカー』(19)。その続編となる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』、通称『ジョーカー2』(10月11日公開)の公開前夜祭ジャパンプレミアが10月10日に丸の内ピカデリーで行われ、日本語吹替版で声優を務めた平田広明(ジョーカー役)、村中知(リー役)、山田裕貴(ハービー検事役)が出席した。
本作の舞台は、コメディアンを夢見る孤独だが純粋で心優しい男が“ジョーカー”へと変貌を遂げるまでが描かれた前作から2年後。理不尽な世の中の代弁者として時代の寵児となったジョーカーが、突然現れた謎の女性リーとの出会いをきっかけに、さらに暴走を加速させていく姿を描く。この日は会場から「ジョーカー!」というジョーカーコールが沸き起こるなか、客席の間を通って登壇者がお目見え。大きな拍手を浴びた。
ホアキン・フェニックス演じるジョーカー/アーサー役の平田は「山田裕貴くんのファンの方はいますか?」と呼びかけつつ、「その山田の大好きな声優、平田広明です」と挨拶。会場の笑いを誘った。すると「そうです」と認めた山田は、「初めて声優さんにサインをもらったのは、13年前。この人です」とにっこり。「大好きな声優さんの隣でご挨拶ができることをうれしく思いますし、緊張しています。普段の自分とは違うフィールドなんですが、誠心誠意、魂を込めてやらせていただきました」と真摯な想いを口にしていた。
山田はアフレコに挑む前日に、平田から「音響監督に伝言を伝えてある」という連絡をもらったという。当日アフレコ現場に行ってみたところ、音響監督が平田から山田に向けたメッセージとして受け取っていたのは「責任重大だぞ」という言葉だったそう。「そんなこと言っていないよ。証拠がある」と話した平田は、スマホを取りだして「音響監督に、裕貴くんへの伝言をお願いしておきました。収録、頑張ってねー」と実際に山田に送ったメッセージを読み上げた。「全然プレッシャーなんてかけてない」と抗議しながらも「僕より収録があとだったので、『裕貴は何日にやるの?伝言をお願いします。この吹替えは、君にかかっているから』と言っただけです」と笑うと、山田も「もっとちゃんとプレッシャーをかけている」と先輩からの叱咤激励に苦笑いを見せていた。
すでに公開されている各国からは、賛否両論の感想が上がっている本作。平田は「だろうなと思いました」と切りだし、「これは僕の解釈ですが」と前置きしながら「前作は『もしもジョーカーにクソリアルな生い立ちがあったとしたら』という感じで作り上げたものが、ああいう作品になったという解釈があった。今回は『その先の闇の深さが、思ったより深かったらどうなるんだ』というところな気がする。とにかく観れば観るほど深みにハマっていく」としみじみ。スタッフともいろいろな感想で盛り上がったそうで、「皆さん解釈が違う。1回観ただけではわからない。深い分、持っていかれる」と興奮気味に熱弁をふるった。
いろいろな人の感想が集まって完成するような映画になっている様子だが、ステージではそれぞれが演じたキャラクターの「ヤバさ」についてフリップに書いて発表するひと幕もあった。「睨む目つき」と書いた平田は、「前作でもあった。母親の病室で、憧れのテレビで紹介されたところ。すごい目つきだった。あれと同じ目が『2』でもある。ほんの一瞬なんですが、あそこがジョーカーに変身する目つきなのかなと思わせるような、すごい目つきをする。見逃さないでいただきたい」とアピール。
レディー・ガガ演じる謎の女性リー役の村中は、「純粋に純粋でヤバい!」と笑顔を見せ、「本人が本当にいいと思っているなかで選ぶものの、“ヤバさ”に注目していただきたい」と熱を込めた。ジョーカーを追い詰めるハービー検事役を担当した山田は、「冷静すぎる」とつづったフリップを掲げ「冷静すぎてヤバい。皆さんが法廷でジョーカーを見た時に、冷静でいられるかと。『この人は犯罪者だ』と熱を上げるところを、僕より若い役者さんであるハリー・ローティーさんが演じている。終始、余裕が垣間見える」とローティーの演技に惚れ惚れとし、「その冷静さにも意味がある」と気になるコメントを残した。
また山田は「皆さん、生きているなかで嘘をついたり、愛想笑いをしたりする。メイクを重ねていくと、本当の自分ってどこにいるんだろうとわからなくなったことがありませんか?それが結果、ジョーカーなのかなと思う」と会場に語りかけ、「これは僕の感想なので、多分皆さんが観たあとに思うことは違うはず。そうやって感想を言い合って賛否が生まれていくのが、この作品のねらいだったらどうします?という感じもします。世界でずっと賛否を言い合っていたら、ずっとジョーカーは生きたまま」と賛否があるのは、本作ならではの盛り上がり方なのではないかと思いを巡らせていた。
取材・文/成田おり枝