映画『室井慎次 敗れざる者』(公開中)の初日舞台挨拶が10月11日、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて開催され、柳葉敏郎、福本莉子、齋藤潤、前山くうが、前山こうが、筧利夫、矢本悠馬、小沢仁志、飯島直子、本広克行監督が登壇。「踊るプロジェクト」の再始動を盛大にお祝いした。
本作は、映画版も大ヒットしたテレビドラマ「踊る大捜査線」シリーズで柳葉が演じる人気キャラクター、室井慎次を主人公に描く映画二部作の前編。本作では、27年前に青島と交わした約束を果たせなかったことを悔やむ室井が、警察を辞めて故郷の秋田へ帰り、「事件の被害者家族、加害者家族を支援したい」との思いから、少年たちと穏やかに暮らす様子が描かれている。だがある日、室井の前に謎の少女、日向杏が現れたことで物語が動き出す。彼女はかつて湾岸署が逮捕した殺人犯、日向真奈美の娘だった——。
室井役の柳葉、新城賢太郎役の筧らおなじみのキャストに加え、日向杏を演じる福本をはじめ、齋藤、矢本、飯島、小沢らが本作より参戦。スタッフ陣もプロデュースの亀山千広、脚本の君塚良一、そして本広監督と「踊る大捜査線」シリーズを支えてきたメンバーが再結集している。
再始動と聞いた時は「断ろうと思いました」と即答した柳葉は「もう室井が嫌だったからです(笑)」とニヤリ。出演を決めた理由は「監督、プロデューサーの亀山さん、脚本の君塚さんの室井に対するアツい思いが感じられまして。覚悟を決めてやらせていただきました」と思いを明かす。「断ろうと思った」や「室井が嫌だった」とは言ったものの、「いまは感謝の気持ちでいっぱいです」と会場を見渡しながら深々とお辞儀。感謝を伝える柳葉に割れんばかりの大きな拍手が送られた。
秋田での撮影について「こんなうれしいことはないと思いました」と笑顔を見せた柳葉は「家から目と鼻と口の先でやったロケ(笑)。お世話になった母校で撮影したり、うれしい反面、現場に行くのが恥ずかしかったりもしました」と俯く場面も。作品というよりも柳葉敏郎自身として、これまでの感謝の言葉を心のなかで呟きなら毎日を過ごしていたと語っていた。
『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(12)から12年の時を経ての柳葉との再タッグについて、本広監督は「なかなか大変なこと。室井というキャラクターは相当静かな男。青島にしても新城にしても、湾岸署はとてもポップなキャラクターがいるところ。真逆のキャラクターがだったので、どうしようか…という感じでスタートしました」と再始動を振り返る。意識したのは「静かな笑い」だそうで、子どもたちと絡ませることで室井の面白さを引き出したとも語っていた。
シリーズ初参戦の福本は「これまで演じたことない二面生のある役。(自分自身は)怖くないのに、怖い怖いと言われながら撮影していました」と苦笑い。柳葉との共演シーンでは、本広監督から動物を見るような目でという演出があったとし、「何テイクか撮りました。完成した映像を観たら、なに考えているんだ、この子、みたいに映っていて」と出来上がった映像で、自身が想像していなかった姿が映っていたことに驚いたとし、役作りとしては小泉今日子が演じた日向真奈美の映像を何度も観て、「話し方を研究しました」と明かしていた。
同じく柳葉との共演シーンが多かったという齋藤は「柳葉さんは何回も段取りに付き合ってくださって、とても大きな存在です」と感謝し、一緒に芝居ができたこと、いま、舞台挨拶で隣に立てていることに幸せを感じているとニッコリ。「今日、映画を観たのですが、長い歴史のある作品に関われていることがどれだけすごいことなのか、大きなことなのか。なにかが込み上げてくる感覚がありました」と人気シリーズへの参加を喜んでいた。
「メガヒット作であることは重々分かっていました」と切り出した矢本は「現場でのプレッシャーもすごくて。撮影初日に柳葉さんから『頼むぞ。乃木がすべったらこの映画はやばいぞ』って言われて。台本では真面目な青年だったのですが、僕がキャスティングされたことによりコメディ(担当)になって(笑)」と役のイメージが変更されたことを告白。続けて「期待が重すぎて、最初のほうはめっちゃ調子が悪かったです。どの現場に行っても『出るんでしょ?』とか多方面からプレッシャーがあって…」と人気シリーズならではの反応があったことに触れ、相当なプレッシャーがあったと強調。「ごめんね!」とニヤニヤしながらお詫びした柳葉は「思っている以上のものを出してくれたので、矢本くんでよかったです!」と感謝。重圧から解放された矢本が、「僕、大丈夫でしたでしょうか?」と会場に呼びかけると、この日一番の拍手が場内を包み込んでいた。
これまで柳葉とは恋人、婚約者の役で共演経験があるという飯島は「今回は他人(笑)。しかも旦那さんは小沢さんで…」と控えめに役紹介をし、小沢にトークをバトンタッチ。小沢は「これで終わりじゃない。後編もあるので、2、3回は観てください。後編はすごいよ。もしかするとレインボーブリッジ封鎖しているかもしれないから。お楽しみに!」と二部作をしっかりとアピールしていた。
取材・文/タナカシノブ