『ジョーカー2』が北米No. 1スタートも、“賛否両論”がさらに加速…。NY&LA限定公開の『ルックバック』は大健闘
先週末(10月4日から10月6日)の北米興収ランキングにおける最大のトピックは、やはり『ジョーカー2』こと『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(日本公開中)。全世界興収10億ドル超のメガヒットを記録し、アカデミー賞で最多11部門ノミネートで2部門を受賞した『ジョーカー』(19)の続編となれば、賞レースに向けた動きが活発化する秋シーズンで、興行的な成功も同時にねらえる目玉タイトルとして注目を集めるのは当然の流れだ。
ところが、4102館で公開された『ジョーカー2』の初日から3日間の興収は3767万ドル。これは前作『ジョーカー』が初日1日だけで稼いだ3935万ドルの興収をも下回る数字であり、約2億ドルという巨額の製作費がかけられたことを考えれば、かなり厳しいスタートといわざるを得ない。
ちなみに2024年公開作で、オープニング興収4000万ドル以下で累計興収1億ドルに達しているのは現時点で『ブルー きみは大丈夫』(24)のみ。よほどのロングヒットとならない限り、大台到達は難しく、そうなるためにはどうしたって作品評価の後押しが必要となる。
『ジョーカー2』の場合、すでに日本公開前にSNSで大騒ぎとなっていたように、先のヴェネチア国際映画祭で前作以上の賛否両論を巻き起こし、北米公開を迎えるやその傾向はさらに加速。むしろ“否”のほうが強まりつつあるのだ。
批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は33%、観客からのそれは32%と低調。ちなみに前作は、賛否両論をあらわすように批評家からの好意的評価は68%にとどまった一方、観客からは89%と高く、それが興行的成功に直結したものと考えることができる。少なくとも、今作の現時点での評価では賞レース参戦の望みはかなり低い。配給のワーナーは『デューン 砂の惑星PART2』(24)に本腰を入れて賞レースを駆け抜けることになるだろう。
トップテン圏外ではあるが、12位にかなり興味深いタイトルが。「チェンソーマン」の藤本タツキの読み切り漫画をアニメーション映画化し、すでに日本国内では興収20億円を超えるヒットを記録している『ルックバック』(日本公開中)が北米公開を迎え、初日から3日間で興収69万ドルを記録。そのうちの2日間がロサンゼルスとニューヨーク各1館という超限定的な公開であったことを考えると、かなりの大健闘といえよう。
3日目の日曜日に上映館を531まで増やしたことで、デイリー興収では一気に6位に上昇。翌月曜日も同4位にランクインしており、火曜日以降は再び上映館を減らしているものの、安定した館アベレージを維持。配給のGKidsといえば昨年『君たちはどう生きるか』(23)の北米配給も務めるなど、アカデミー賞の長編アニメーション賞に日本アニメを送りだすスペシャリスト。今年は『ルックバック』以外に『化け猫あんずちゃん』(24)が同社配給で来月の北米公開を控えており、2年連続で日本アニメが賞レースを賑わせることにも期待がもてそうだ。
文/久保田 和馬