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ホアキン・フェニックス&トッド・フィリップス監督が『ジョーカー2』を振り返る「僕たちがやり遂げたと感じてもらえたらうれしい」

インタビュー

ホアキン・フェニックス&トッド・フィリップス監督が『ジョーカー2』を振り返る「僕たちがやり遂げたと感じてもらえたらうれしい」

「彼の人生に愛が芽生えるなら、彼のなかにある音楽が外に出るのではないか」(フィリップス監督)

ホアキン・フェニックスとレディー・ガガによる生歌唱も見どころの一つ
ホアキン・フェニックスとレディー・ガガによる生歌唱も見どころの一つ[c] & TM DC [c] 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.IMAX[r] is a registered trademark of IMAX Corporation.Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

前作の大成功により、その動向に世界中が注目した本作。トッド・フィリップス監督にとって、すべてのプロセスの核になったのが「どうすればまたホアキン・フェニックスと仕事ができるか?」だった。「前作で彼と話したことですが、アーサーは足が左利きで世間とずれているが、彼のなかには音楽があるということです。前作で彼がトイレで踊ったり、階段を降りてくる姿にそれを目にしたでしょう。2作目は、彼の人生に愛が芽生えるなら、彼のなかにある音楽が外に出るのではないか。そこからすべてが始まりました」と振り返り、音楽ありきの作品だったと明かす。

パンクロッカー、GGアリンのドキュメンタリー『全身ハードコア GGアリン』(94)で長編デビューを飾ったフィリップス監督。本作はそれ以来の音楽映画となるが、監督は音楽を最高のツールと呼ぶ。「衣装、セットデザイン、撮影などさまざまなパートが必要ですが、僕にとって最高のツールが音楽なんです。今回また音楽に傾倒したことは、本当にエキサイティングな体験だった」と満足そうに語った。そして注目を浴びた「これはミュージカル映画ではない」という発言にも言及。「僕はミュージカルを、ハッピーな気分で家路に着く映画と考えています。この映画は気分のいい映画ではないので、僕にとってこれはミュージカル映画ではないという意味なんです」と本音を語った。

ジョーカーメイクを施す謎の女性、リー
ジョーカーメイクを施す謎の女性、リー[c] & TM DC [c] 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.IMAX[r] is a registered trademark of IMAX Corporation.Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

ヒロインとしてジョーカーの前に登場するリー。彼女を演じたレディー・ガガとは撮影にあたってどんな話を交わしたのだろうか?「僕たちはアーサーについてたくさん話し合いました。精神疾患について、不健全な人間関係についてです。彼女はテレビで目にしたアーサーに恋をするんです。まるでロックバンドに恋するような感覚で。リーは、アーサーはジョーカーだと思い込んでしまいます。そんなことをたくさん話し合いました」と役作りについて語ってくれた。

「人間の二面性を語った本作では、横顔が役に立ってくれました」(フィリップス)

2019年公開の前作から5年、その間にパンデミックや米連邦議会議事堂への襲撃事件、戦争や侵攻もはじまった。それらの出来事は本作にも影響を与えたという。「物事がクレイジーになりすぎて、最初の予告編で伝えた“いま世界に必要なのは愛なのかもしれない”と本当に感じられたんです」とフィリップス監督。そして、あらゆる映画がなんらかの形で世相を映しだしていると前置きし、本作ではそれが腐敗だと明かす。「刑務所や看守、司法制度、そしてエンタテインメントの世界も同じ。プロレスの試合のように商売になった大統領選の討論会に意味があるのでしょうか?」と疑問を投げかける。映画の中で、法廷にやってきたリーの『エンターテイメントよ』というセリフはこのことを表しています」。

【写真を見る】『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックスとトッド・フィリップス監督が語る「いま世界に必要なのは愛」
【写真を見る】『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックスとトッド・フィリップス監督が語る「いま世界に必要なのは愛」[c] & TM DC [c] 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.IMAX[r] is a registered trademark of IMAX Corporation.Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

ハードな暴力描写が物議を醸した『ジョーカー』。精神病院や裁判所がおもな舞台となる本作にもバイオレンスの見せ場が盛り込まれている。映画における暴力描写についてフィリップス監督は責任を持って描いたという。「美化することなく、暴力とはこういうものだと責任を持って描いたからです。裁判のシーンで、アーサーが前作における殺人を目撃した男性を証人席で尋問した時、彼は恐ろしくて夜も眠れないと語ります。フィルムメーカーは、暴力がそれを目にした人に対する責任を理解する必要があり、僕たちはそれを理解して制作しています」とセンシティブな問題に答えてくれた。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は公開中
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は公開中[c] & TM DC [c] 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.IMAX[r] is a registered trademark of IMAX Corporation.Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

ヘビーな描写を満載した本作だが、同時にアーサーやリーたちキャラクターの顔立ちを美しく捉えた映像も強烈な印象を残す。特に横顔のカットへの執着が感じられたが、フィリップス監督のこだわりだった。「ストレートに平坦な顔を見せるより、横顔のほうが表情が豊かに感じられ好きなんです。僕の好みなんですね。ホアキンやステファニーはどの角度から見ても美しいのですが、特に横顔にはなにかがあると感じるんです」と明かすが、そこには別の意図も隠されていた。「この映画はアーサーとジョーカー、人間の二面性について語っています。素の自分と影の自分の物語には、印象的に使う横顔が役に立ってくれるのですよ」。


取材・文/神武団四郎

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