奥平大兼が映画『Cloud クラウド』で気づいた、謎の存在を演じる面白さ「映画的な役割、目の前の目的にフォーカスすると見えるものがある」 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
奥平大兼が映画『Cloud クラウド』で気づいた、謎の存在を演じる面白さ「映画的な役割、目の前の目的にフォーカスすると見えるものがある」

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奥平大兼が映画『Cloud クラウド』で気づいた、謎の存在を演じる面白さ「映画的な役割、目の前の目的にフォーカスすると見えるものがある」

佐野のイメージは「過去になにかしらあった人」

なぜか銃の扱いに慣れている佐野を演じるにあたり、銃の練習はたくさんしたと明かした
なぜか銃の扱いに慣れている佐野を演じるにあたり、銃の練習はたくさんしたと明かした

映画の公式Xには本作での奥平が「黒沢監督作品の世界観のメフィスト的なキャラクターを完璧に演じている」という書き込みもあり、黒沢監督自身、海外メディアでのインタビューで「佐野の存在は悪魔と思ってくれていい」と話しているという。佐野を演じるにあたり、悪魔という意識はあったのかとの質問に「黒沢監督から『佐野は悪魔です』と言われたかどうかは覚えていないけれど、物語の進行上、悪魔的な立ち位置。吉井を渦の中に連れ込もうとしているようなふしがあるかなと。でも、悪魔という意識はしていないです」と答えた奥平は「正直、それどころじゃなかった。佐野という役がなにをしたいのか。吉井をどう導くのかという“佐野としての目的”のことしか考えていなかった。それが結果的に、黒沢監督の演出もあって、悪魔の象徴のような役になったのかなとは思います」と見解を述べた。

「怖かった」「笑った」という感想があるのが面白いとも話していた
「怖かった」「笑った」という感想があるのが面白いとも話していた

佐野については漠然と「過去になにかしらあった人」というイメージもあったそう。背後になにか大きな組織が見え隠れするようなシーンもいくつか登場している。職業も佐野との関係性も劇中では言及されていない千葉哲也役の松重豊とのシーンにも触れた奥平。「黒沢監督から同じ土俵に立ってと言われました。僕がどうやったらあの貫禄に抗えるのか…と思ったけれど、気持ちとしてはもう3日に1回こういうことがある、みたいな感覚でやっていました」と、黒沢監督からの“むちゃ振り”レベルのリクエストはこの映画にはつきものと捉えていたとし、堂々とリラックスしてやることがポイントだったとも明かし、大きな拍手を浴びる場面もあった。


黒沢監督曰く、佐野は悪魔的な存在
黒沢監督曰く、佐野は悪魔的な存在

謎めいた存在の佐野の銃さばきも話題に。佐野としての銃の扱い方について黒沢監督から「カッコつけないでください」とのリクエストがあったそう。「スマートに見えないようにと言われました。でも、(ターゲットを)ノールックで撃つシーンもあるから、家のなかでずっと練習していました。ライフルも慣れるまでめちゃくちゃ練習して。『うまくできていましたよ』って黒沢監督から言われました」と笑顔で報告。黒沢監督は銃を照らすライトにこだわっているそうで、「照明の方たちは、黒沢監督の好みを分かっていらっしゃる。銃が映るシーンでは『ちょっと斜めにすると黒沢監督が喜ぶよ!』みたいに教えてくれて」とスタッフからのアドバイスがあったと明かし感謝。完成した映画を観た時は「『よく映ってる!』って思ってうれしかったです」と誇らしげに語っていた。佐野を演じる際のポイントとしては「佐野はスマートというか、堂々としている。結果的にそれがカッコよく見えるというのを意識して、『カッコつけた』ところはあるかもしれない」とも説明した。

トークイベントを終えてホッとした表情を見せる場面も
トークイベントを終えてホッとした表情を見せる場面も

結局、佐野役については詳細を明かされないまま演じたという奥平だったが、その演出での気づきもあったようだ。「映画的な役割、目の前の目的、そういうものにフォーカスすると(映画のなかで演じることが)面白くなるというのを佐野という役以外にも教えてもらいました」と充実感を滲ませた奥平は「よく見ると、面白さを見出せるものがたくさんある映画です。黒沢監督もおっしゃっていたように、何回か観ていただけるとうれしい作品だと思っています」と呼びかけ、拍手と歓声に包まれながらトークイベントを締めくくった。

取材・文/タナカシノブ

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