【追悼】「釣りバカ日誌」から「ドクターX」、大河ドラマに「ドラえもん」の主題歌も。西田敏行さんの功績を振り返る

コラム

【追悼】「釣りバカ日誌」から「ドクターX」、大河ドラマに「ドラえもん」の主題歌も。西田敏行さんの功績を振り返る

俳優として映画やテレビドラマ、舞台などで幅広く活躍し、日本俳優連合の理事長も務めた西田敏行さんが10月17日、虚血性心疾患によって76歳で死去した。

1994年に初演の「屋根の上のヴァイオリン弾き」など、舞台俳優としての活躍も
1994年に初演の「屋根の上のヴァイオリン弾き」など、舞台俳優としての活躍も東宝演劇部

1968年に青年座俳優養成所に入所し、俳優としての道を歩み始めた西田さん。1970年代後半から1980年代にかけて「特捜最前線」や「西遊記」、「池中玄太80キロ」などのテレビドラマに出演し、またたく間にお茶の間の人気を獲得。テレビでの活躍を語る上で欠かせないのは、やはりNHKの大河ドラマ。

1972年放送の「新・平家物語」を皮切りに14作品に出演し、4作品で主演を務めた。1981年の「おんな太閤記」では豊臣秀吉を、1990年放送の「翔ぶが如く」では西郷隆盛を好演。大河ドラマ以外でも1978年のTBS系ドラマ「雲を翔びこせ」で渋沢栄一を演じるなど、誰もが知る歴史上の偉人たちを任されてきたことは、西田さんが国民的俳優として愛された証左のひとつといえるだろう。

「釣りバカ日誌」や「学校」など、西田さんの演技は多くの名作と共に永遠に残り続けるだろう
「釣りバカ日誌」や「学校」など、西田さんの演技は多くの名作と共に永遠に残り続けるだろう撮影:山崎伸子

映画デビューを飾ったのは、吉村公三郎監督の『襤褸の旗』(74)であり、今年はちょうど映画デビュー50周年の節目の年でもあった。その後『悪魔が来りて笛を吹く』(79)で金田一耕助役を演じ、『敦煌』(88)では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。そして1988年から、代表作となる「釣りバカ日誌」シリーズがスタートする。

山田洋次が脚本を務めた同作で西田さんが演じたのは、建設会社の営業部で働く無類の釣り好きサラリーマンの“ハマちゃん”こと浜崎伝助役。日本各地を舞台に、三國連太郎演じる社長の“スーさん”やゲスト出演者らと繰り広げる人情喜劇が老若男女から支持を集め、「男はつらいよ」シリーズと並ぶ松竹の人気シリーズへと成長。2009年にフィナーレを迎えるまで、22作品が製作された。

【写真を見る】10月8日に『劇場版ドクターX』の会見に出席した西田さん。同作が遺作となった
【写真を見る】10月8日に『劇場版ドクターX』の会見に出席した西田さん。同作が遺作となった撮影:成田おり枝

また、山田監督とタッグを組んだ「学校」シリーズや「虹をつかむ男」シリーズで主演を務めた他、2000年代に入ると『THE 有頂天ホテル』(06)や『ステキな金縛り』(11)など、三谷幸喜監督の映画の常連としても活躍。人情味あふれるコミカルなキャラクターのイメージで親しまれる一方、北野武監督の「アウトレイジ」シリーズではヤクザの若頭として迫力満点の演技を披露。その演技の裾野の広さは言わずもがな。多くの作品に風格とユーモラスな彩りを与えてくれた功績は計り知れない。


俳優としての活動以外にも、「探偵ナイトスクープ」をはじめバラエティ番組で司会を務めたり、いまなお歌い継がれる名曲「もしもピアノが弾けたなら」など歌手としても精力的に活動。なかでも武田鉄矢が作詞を務め、堀内孝雄が作曲を務めた『映画ドラえもん のび太の日本誕生』(88)の主題歌「時の旅人」は、「映画ドラえもん」の主題歌のなかでも屈指の名曲として多くのファンの心に刻まれている。

遺作となった『劇場版ドクターX』は12月6日に公開される
遺作となった『劇場版ドクターX』は12月6日に公開される撮影:成田おり枝

晩年の代表作として忘れてはならないのは、2012年にスタートしたテレビドラマ「ドクターX ~外科医・大門未知子~」。ここでは米倉涼子演じる主人公の大門未知子と対立する重鎮・蛭間重勝役を演じていた。10月8日には、そのシリーズ完結作となる『劇場版ドクターX FINAL』(12月6日公開)の完成報告会見に出席し、「蛭間重勝は好きな役のベスト5に入る」と語りながらシリーズの完結を名残り惜しんでいた西田さん。同作が遺作となった。

日本の映画・ドラマ・演劇界で約半世紀にわたり走り続けてきた西田さん。ここにあらためて感謝を申し上げると共に、謹んで冥福をお祈りいたします。


文/久保田 和馬

関連作品