声優・三瓶由布子&名塚佳織が語る『エウレカセブン』“再起動”への思い
2005年よりTV放送されたアニメ「交響詩篇エウレカセブン」が新たに劇場版三部作としてスタート。その第1作『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』が現在公開されている。『ハイエボリューション』三部作は、新たな設定のもと、主人公レントンとヒロイン・エウレカの物語を、ゼロから描く新ストーリー。12年ぶりに同じ役を演じることになったレントン役・三瓶由布子とエウレカ役・名塚佳織に話を聞いた。
14歳のレントンは“ポエマー”なお年頃
12年後に作られる新たな劇場版ということで、三瓶も名塚もまずは驚いたという。
三瓶「まず驚きましたし、求められているからこその企画なわけで、『エウレカ』を愛してくださっている方への感謝の気持ちがわきました。そして、また大変なんじゃないかな(笑)…ということも思い、役者としてすごく楽しみにしていました」
名塚「私もうれしさと同時に、今、ゆうゆう(三瓶さん)が言った通りの不安もありました(笑)。これだけ時間が経ったところで、同じキャラクターで新たな作品を作るというあまりない体験だったのですが、新しい『エウレカセブン』として出来上がったのかなと思っています。アフレコスタジオが12年前と同じ場所だったので、懐かしさと新しさが入り交じった気持ちでアフレコに臨みました」
三瓶はレントンを演じるにあたって、「大変なんじゃないかと思った理由」を次のように説明する。
三瓶「レントンは、知らない世界に飛び込んでいっては、自分ではどうにもできない世界に打ちのめされる役なんです。そこがまず演じていて心が痛いんです(笑)。12年前はそれを体当たりで演じていたんですが、12年経った今は、私自身もまわりのことが見えるようになったんですね。だから今度は『ぶつかっちゃうぞ。ほらね……』と思いながら(笑)、一方でちゃんとぶつかるお芝居をすることになるんです。痛いとわかっていて、ぶつかっていかなくちゃいけない大変さがありましたね」
本作はレントンのモノローグが作品の中でも大きな役割を果たしている。
三瓶「モノローグが多いのはまず物理的にも大変でした。しかも映画はレントンが家出をしている時期をピックアップしているので、レントンはくさっているんですよね。それは自分としても演じながらしんどい気持ちになりました。あと、アフレコで最初にテストをした時は“暗い”といわれましたね。レントンのいろんな出来事をわたしが受け止めすぎちゃっていたのかもしれません」
名塚「TVシリーズ最終回の大人になったイメージからすると、今回のレントンの最初のモノローグはとてもやさぐれているので、ちょっとびっくりするかもしれませんね(笑)。私にとっては、あのモノローグはインパクトがあったシーンのひとつです!」
三瓶「(笑)。ちょっと懐かしく感じるかもしれませんよね。『悩みを言いたくないけど、実は知ってほしい』みたいな、多感な14歳の“面倒くさい”感じを出せるように心がけたんですけど、14歳って“ポエマー”ですよね(笑)。思っていることがみんなポエムみたいになっちゃう年頃なんですよね(笑)」
12年越しの“サマー・オブ・ラブ”
一方、名塚が演じるエウレカは、本作の冒頭で描かれる“サマー・オブ・ラブ”のシーンに主に登場する。サマー・オブ・ラブとは、地表を覆う珊瑚状の情報生命体スカブコーラルと人類の決戦。この戦いが『エウレカセブン』のすべての発端であり、本作で初めてその様子が描かれることになった。
名塚「サマー・オブ・ラブの時のエウレカはまだレントンに会う前で、感情の出し方をまだ知らない時期なんです。だから『声質は幼めでいてほしいんだけれど、とにかく感情は抑えめに』というディレクションがありました。ただ、場面としてはすごく激しい戦闘シーンなので、声は張ってほしいという注文もあって(笑)。そのあたりは実際に録りながら調整していきました」
このサマー・オブ・ラブのシーンには、レントンの父アドロック・サーストンが登場する。TVシリーズの時は、姿は描かれたが、ひと言もセリフを発しなかったアドロック。今回は数々のヒーローを演じてきた古谷徹がアドロックを演じている。
名塚「アドロックとのやりとりは、アドロックに対して信頼はあるけれど、自分ではまだその感情を理解できていないので、表面には出さないように。ただ最後の最後にアドロックから引き離されるところだけは、ちょっと感情を出すように、と細かくディレクション受けながら演じていきました」
三瓶「アフレコの日程の関係で私は、古谷さんとはご一緒できなかったんですが、完成した作品を見て、古谷さん演じるアドロックとようやく会えたことがとてもうれしかったです。古谷さんのアドロックに説得力がすごくあって。自分としての感情なのか、レントンとしての気持ちなのか、自分でも区別がつかないのですが」
名塚「古谷さんが演じられたアドロックはかっこよかったですよね。アドロックが『この風景をレントンに見せてやりたかった』というセリフがあるんですが、あれがすごく胸に迫りました」
三瓶「映画の後半で、レントンの養父であるチャールズが、すごくきれいな自然の風景を見せて、アドロックが何を成し遂げたかを語るシーンがあるんです。そこで、アドロックが見せたかった風景と、それを知らずに残された子供のレントンを、チャールズが繋いでくれたような感覚があって、とても印象的なシーンになりました」
レントンと同年代、いまの中高生に見てほしい
TVシリーズのファン、本作から新たに『エウレカセブン』に触れるファン。それぞれどのように、この映画を楽しめばいいのかを最後に聞いた。
三瓶「構成がちょっと凝っているので、ちょっと背伸びして、レントンと同じ世代の、難しそうなものが見たい年代の人には楽しんで見てもらえるんじゃないかと思います」
名塚「そこはこの映画のおもしろさの1つですよね。『エウレカセブン』はもともと音楽が印象的でなんですが、今回も同じで、音楽に映像がついているっていうふうに考えたほうが、むしろ見やすいかもしれないです。映像と音楽のコントラストに注目しても楽しんでいただけると思います!」
三瓶「あと、12年前のTVがベースということで、古臭いんじゃないかと思っている人もいるかもしれません。でも、それはまったくないです。メカもキャラクターもいまの中高生にも受け入れてもらえるかっこよさがあります。メカはものすごく動いていますしね」
『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』は、すべての発端サマー・オブ・ラブと、それにより天涯孤独になったレントンの青春の迷い路を描いている。ここからスタートする三部作は、どのように物語を紡いでいくのか。『ハイエボリューション』のこれからにも注目だ。【取材・文/藤津亮太】