アジア最大級の映画の祭典、第37回東京国際映画祭(TIFF)が10月28日に開幕した。映画祭の開幕を祝福をするレッドカーペットイベントが行われ、東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場と日比谷仲通りに豪華な顔ぶれが集結。華やかな装いで、長さ162メートルに及ぶカーペットを闊歩した。
世界中から優れた映画が集まる東京国際映画祭。今年の「コンペティション」部門には110の国と地域から2023本がエントリー。厳正な審査を経た15本が期間中に上映され、クロージングセレモニーで各賞が決定する。映画祭の顔となるコンペティション部門の審査委員長は、カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した『花様年華』(00)、ウォン・カーウァイ監督の『2046』(04)などで知られる俳優のトニー・レオンが務める。
レッドカーペットに、国内外から総勢211名のゲストが集まったこの日。イベントのトップを飾ったのは、オープニング作品『十一人の賊軍』(11月1日公開)のメンバーだ。白石和彌監督をはじめ、山田孝之、仲野太賀、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、一ノ瀬颯、野村周平、小柳亮太、本山力ら豪華な面々がズラリと並び、華やかに開幕を告げた。「仁義なき戦い」シリーズなどを手掛けた脚本家の笠原和夫が残した幻のプロットを、60年の時を経て『孤狼の血』の白石監督が映画化した本作。戊辰戦争の最中に「決死隊」として戦いに招集された罪人たちの死闘を描く。
「皆さん、こんにちは『十一人の賊軍』でございます!」と声を上げて会場から拍手を浴びた白石監督は、「東京国際映画祭のオープニング作品に選んでいただいた。ありがとうございます!絶対に観てください」と挨拶。「映画祭が盛り上がってほしいということもありますし、いま時代劇が世界的に大ブームが訪れる直前だと思います。この作品を世界の人たちに届けたいですし、日本の映画界も盛り上がってほしい」と願っていた。
国際映画祭の華ともいえる「コンペティション」部門は、日本から3作品が選出された。妻に先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に暮らしている77歳の元大学教授の主人公を長塚京三が演じた『敵』(2025年1月17日公開)からは、吉田大八監督、長塚、瀧内公美がレッドカーペットに到着した。つげ義春の短編漫画を片山慎三監督が映画化した『雨の中の慾情』(11月29日公開)の成田凌、中村映里子、森田剛、李杏も出席。
そして『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(2025年4月公開)からは、大九明子監督、萩原利久、河合優実、伊東蒼、黒崎煌代がお目見え。お笑いコンビ「ジャルジャル」の福徳秀介による恋愛小説を映画化した人間ドラマで、主人公の冴えない大学生の小西徹を萩原、小西が恋に落ちるヒロインの桜田花を河合が演じる。
日本公開前の国内外の話題作をプレミア上映する「ガラ・セレクション」部門で上映される『ルート29』(11月8日公開)に主演する綾瀬はるかは、森井勇佑監督、共演者の大沢一菜と笑顔を見せた。他者と交わろうとしないひとりぼっちの“トンボ”ことのり子(綾瀬)が、風変わりな女の子ハル(大沢一菜)を連れて旅に出る姿を描く本作。
美デコルテ&美背中の輝くブラックドレスで会場を魅了した綾瀬は、「東京国際映画祭の開催、おめでとうございます。『ルート29』が参加できることをとてもうれしく思います」と喜びのコメント。「今回は物語で一緒に旅をした一菜ちゃんと監督と一緒に歩けることを、お祭り気分で楽しみたいと思います」と目尻を下げていた。
『雪の花 ―ともに在りて―』(2025年1月24日公開)の松坂桃李、芳根京子、小泉堯史監督もステージに上がった。本作は、日本映画を代表する豪華キャストとスタッフが集まり、多くの人命を奪う疫病と闘った町医者の愛と感動の実話を描く本格時代劇。実在した町医者である主人公の笠原良策役を演じる松坂は、優雅で美しい着物姿に身を包んだ芳根の手をとってしっかりとエスコート。劇中で夫婦を演じた2人が、息ぴったりの様子を見せていた。
楡周平による同名小説を岸善幸による監督で実写化した映画『サンセット・サンライズ』(2025年1月17日公開)からは、岸監督、菅田将暉、井上真央、三宅健が集結。都会から移住した釣り好きサラリーマンの西尾晋作(菅田)と、宮城県南三陸で生きる住民との交流を描く。井上は、真っ赤なミニドレスで観客を釘付けにした。壇上を降りる際には三宅が井上をエスコートする場面もあり、大いに会場を盛り上げていた。
今年新たに加わった部門で、東京都と連携し女性監督の作品、あるいは女性の活躍をテーマとする作品に焦点をあてた「ウィメンズ・エンパワーメント」部門の特別上映作品に選ばれたのが、長年にわたって愛されて続ける医療ドラマの金字塔を映画化する『劇場版ドクターX』(12月6日公開)だ。“絶対に失敗しない”外科医の大門未知子をドラマ放送開始から12年にわたって演じてきた米倉涼子は、東京国際映画祭に初参加。黒のドレスにゴージャスなネックレスをプラスしたスタイルで圧巻のオーラを放ち、未知子が“師匠”と慕う神原晶役の岸部一徳と大きな笑顔を弾けさせていた。2人は腕を組んでステージを後にするなど、最高のコンビネーションを見せていた。
テレビ放映やインターネット配信等を目的に製作されたシリーズものの秀作をスクリーンで上映する部門「TIFFシリーズ」からは、人気コミック「善悪の屑」と続編「外道の歌」を実写ドラマ化するDMM TVオリジナルドラマ『外道の歌』 の白石晃士監督、窪塚洋介、亀梨和也、南沙良が参戦。初共演で“復讐屋”コンビを演じる窪塚と亀梨は、ブラックを基調としたクールなスーツ姿で観客からの声援に応えていた。
今回のフェスティバル・ナビゲーターを担うのは、俳優の菊地凛子。シースルーの白&グリーンの個性的なドレスは風が吹くたびにふわりと大きく広がり、会場からはうっとりした声がこぼれた。フォトコールを受けるとカッコよくポーズを決めたり、お茶目な笑顔を見せたりと、短い時間のなかにも人柄の伝わる姿で観客を喜ばせていた。
最後にレッドカーペットに現れたのは、コンペティション審査委員のトニー・レオン、審査員のエニェディ・イルディコー、橋本愛、キアラ・マストロヤンニ、ジョニー・トーだ。「トニー!」と掛け声がかかると、穏やかな笑顔で手を振ったレオン。橋本は、首から胸元にレースモチーフのアクセサリーを大胆に飾ったブラックドレスで注目を集めていた。イベント会場は終始、あちこちから黄色い歓声が上がる盛況ぶり。いよいよスタートする映画の祭典への期待と熱気にあふれていた。
第37回東京国際映画祭は、10月28日~11月6日(水)まで、日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区にて開催。合計208本の映画が上映される。
取材・文/成田おり枝